辻村深月『かがみの孤城』あらすじと感想!舞台化も【2018年本屋大賞】生きづらい中学生時代

 

今回ご紹介する一冊は、

辻村深月

『かがみの孤城』です。

 

本作は、

2018年の本屋大賞に輝いた作品です。

 

他にも、王様のブランチブック大賞2017や

埼玉イチオシ本2017など、

多数の賞を受賞し、

8冠に輝きました。

 

物語は、なんらかの事情で、

「学校に通えなくなった中学生たち」

の姿が描かれています。

 

学校での人間関係の悩みは、

きっと誰もが通ってきた道

ではないかと思います。

 

読み進めるうちに、

中学生時代にタイムスリップしたかの

ような気持ちになり、

いくつものシーンに

自分の過去を投影していました。

 

学校生活の中で受けた、心の痛みや、

そこに潜む怒り。

 

子供たちの声をすくい取ったような

繊細な物語の中に、

目を背けてはいけない沢山の

メッセージがこめられています。

 

 

 

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鏡の弧城とオオカミ面の少女

 

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

 

中学1年生になったばかりの、

安西こころは、

同級生からの嫌がらせにより、

学校に行くことが

できなくなっていました。

 

外に出ることは怖いけれど、

ずっと家にいることへの

罪悪感に苦しんでいます。

 

自分を責めながらも、

この先どうしたら良いのか、

わからなくなっていたある日、

こころの部屋の大きな鏡が、

突然光を放ちます。

 

目を開けていられないほどの

眩しさで光る鏡。

 

そっと手を伸ばしたそのとき、

心はその鏡の中に、

吸い込まれてしまいます。

 

鏡の向こうに抜けたこころの前には、

オオカミのお面をつけた

小さな女の子の姿がありました。

 

少女の後ろには、

シンデレラ城のような

立派なお城が見えます。

 

わけがわからず、

逃げ出そうとしたこころに、

オオカミ面の少女がつかみかかり、

こう告げます。

「平凡なお前の願いをなんでも一つ叶えてやるっつってるんだ!」

 

非現実的な出来事に、

こころは慌てて鏡の中に引き返しました。

 

そして翌日も、鏡は光を放ちます。

 

願いを叶えてくれると言っていた…。

オオカミ面の少女の言葉が

気になっていたこころは、

自ら鏡の中に、

吸い込まれていくのです。

 

 

 

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〝みんなと同じ〟が正しいのか

 

鏡の向こうには、こころを含めて、

7人の子供たちが集まっていました。

 

願いを叶えられるのは、

たった1人です。

 

城には〝願いの部屋〟があり、

その部屋を開くための鍵を、

探し出さなければなりません。

 

誰かがルール違反をした場合は、

全員オオカミに食べられてしまいます。

 

初めは、恐怖心もあった7人ですが、

おそらくみんな〝学校に行っていない〟のと

〝全員中学生〟という共通点から、

少しずつ打ち解けていきます。

 

〝みんなと同じ〟になれなかった、

はみ出し者の自分。

 

現実世界に戻れば、

不登校の自分という現実

が待っています。

 

中学生の頃は、

学校生活が自分のすべてかのように、

感じてしまいます。

 

私もあまり学校が好きでは

なかったので、

クラスの中での派閥だったり、

自分の本当の声を聞いてくれない

先生に感じる不快な気持ちは、

とても理解できました。

 

 

 

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〝みんなと同じ〟になれないのは、おかしいことじゃない。

 

誰か一人でも、

そう言ってくれる人が

いたらいいのに…。

 

悩んでいる子供たちの中には、

自分の気持ちを上手く

説明できない子もいて、

救いの手が少ないことに、

もどかしい思いを感じました。

 

 

 

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鍵を見つけるためのヒント

 

願いの扉を開くための鍵。

もし手に入ったら、何を願いますか?

 

自分1人の願いを叶えてもらうか、

みんなの希望を1つにまとめて、

叶えてもらうか。

 

様々な選択ができると思います。

その〝鍵の隠し場所〟も、

ぜひ読みながら考えてみてください。

 

ラストに近付くにつれ、

実に沢山のヒントが、

作中に示されていたことがわかります。

 

鍵を見つける手がかりや、

オオカミ面の少女の正体まで。

ファンタジーの要素が強いのに、

 

まるでミステリーのように

敷き詰められた伏線に、

驚きを通り越して感動しました。

 

きっとどこにいても、

誰かの言葉に傷つくこともあるし、

自分を嫌いになることもある。

 

大人になっても、

それは変わらないことだと思います。

 

鏡の中での仲間との関係で、進んだり、

戻ったりしながら、

自分たちの生き方を見つけていく。

 

お互いに思いやることのできる7人は、

優しいがゆえに、

現実世界で傷つくことも

多かったのだと思います。

 

人と関わらなければ

生きていけない世の中で、

どう自分らしく生きていくかを、

深く考えさせてくれる作品でした。

 

 

 

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