有川ひろ『アンマーとぼくら (講談社文庫) 』あらすじと感想!沖縄が舞台の作品

 

今回ご紹介する一冊は、

有川 ひろ

『アンマーとぼくら』です。

 

 

「アンマー」とは、

沖縄の言葉で、

お母さんを意味します。

 

「ぼくら」というのは、

主人公のリョウと

その父の二人のことを

指すのでしょう。

 

主人公のリョウには、

母が二人います。

 

小さい頃に病気で

亡くした実の母と、

その後再婚して母になる

新しい母。

 

父は一人なのですが、

まるで子供のような性格のため、

アンマーにとっては、

二人の子供がいるような感覚

であったため、

このタイトルになったのでしょう。

 

この物語の舞台は沖縄です。

 

主人公が成人になり、

沖縄に里帰りをし、

新しい方の母と過ごす

三日間だけを綴った物語です。

 

たったの三日間と初めは

感じるかもしれませんが、

なんと濃厚な三日間なのでしょう。

 

実の母との思い出や

新しい母との思い出、

そして子供のような父

とのわだかまりや和解。

 

三日間という限りある

僅かな時間の中で

思い出される記憶の数々は、

想像以上のものでした。

 

吐き出すことが

できなかった想いや

今だからこそ言える真実、

それがあふれ出した時に、

主人公リョウの気持ちは

どうなってしまうのでしょうか。

 

神様から与えられたような

素敵な三日間に、

親子の絆や家族間の愛が

濃縮されていて、

改めてその素晴らしさに

気づかされます。

 

親子や家族の問題で

悩んでいる方、

ぜひこの本を読んで

「家族」について

考え直してみるのは

いかがでしょうか。

 

 

 

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有川ひろ『アンマーとぼくら』 一日目

 

母と子、そして家族を描く感動の物語、待望の文庫化!

母の予定に付き合う約束で沖縄に里帰りしたリョウ。実の母は子供の頃に亡くなり、再婚してリョウを連れ沖縄に移り住んだ父ももういない。休暇は三日。家族の思い出の場所をめぐるうち、リョウは不思議な感覚にとらわれる。この三日が、恐らくタイムリミット。三日目が終わったら……終わったら、どうなる?

「過去は変えられない。分かるよね?」
「言いたかったことは、今の君が言えばいい」
「頑張れ。君はもう大人なんだから」

一体、ぼくに何が起こっている?

 

 

成人した主人公のリョウが

里帰りをし、

新しい方の母と久しぶりの

再会を果たす場面から

この物語は始まります。

 

ただ、そこには少し異変が

ありました。

 

リョウはなぜ里帰りをしたのか、

どのように沖縄についたのかの

記憶が曖昧なのです。

 

まるで何かの力で二人が

引き寄せられたかのように・・・。

 

そんな違和感を何かしらの

理由をつけて受け止めながら、

母と子の束の間の休息が

スタートしていくのです。

 

まず初めに蘇る思い出は、

「大嫌いだった沖縄と父親と、

そして新しい母」です。

 

もともとは沖縄とは

真逆の札幌で育ちました。

 

母は、美人で優しくて

学校中で人気の教師でした。

 

父はカメラマンで、

母が教師を務めるクラスの

修学旅行の写真撮影で

同行したことが

母と父の出会いだったそうです。

 

順風満帆であった

3人の家族生活は、

母の癌という病気によって

崩れ去っていきました。

 

リョウが小学校四年生の時に

母は亡くなり、

それから状況は

一変してしまいます。

 

それからはというものの、

母を亡くしてからの

父の行動により、

リョウは、父と再婚相手の

新しい母、

そして新しい居住地の沖縄を

嫌うようになっていくのです。

 

全てを読み終わってから

分かることなのですが、

この暗くて重い回想シーン

なくしては

最後の「温かい気持ち」は

生まれなかったことでしょう。

 

 

 

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有川ひろ『アンマーとぼくら』 二日目

 

二日目も引き続き、

新しい母と、

思い出の地をめぐる旅が

続いていきます。

 

思い出の地で語られる

その当時のエピソードや

母の気持ち、

 

そして今は亡き父の

本当の想いなどを知り、

主人公のリョウの気持ちも

揺らいでいきます。

 

特に実の母の三回忌を

振り返るエピソードでは、

「死ねよ、このクソ親父」

という強烈な言葉まで

出てくるほどに父への怒りが

頂点に達するのです。

 

と、その時、誰かが突然現れ、

父をぶん殴るのです。

 

そして、リョウの気持ちを

ストレートに代弁

してくれるのです。

 

リョウが今まで言いたくても

言えなかった父への想い、

そして聞きたかった

父の本当の気持ち。

 

突然現れた男の人が

すべてぶつけ合わせて

くれたのです。

 

果たして、

この謎の男の正体は・・・。

 

この不可解な出来事が

きっかけに、

すっと抱いていた新しい母や父、

そして沖縄への嫌悪感が

初春の雪解けのように

柔らかに溶けていくのです。

 

 

 

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有川ひろ『アンマーとぼくら』 三日目

 

結局、曖昧な記憶のまま、

ただただ母との大切な時間

を過ごすリョウ。

 

途中、

色々と思い出そうとしたり、

なぜこのような状況に

なっているのかを

突き止めようとしたり

するのですが、

ふと気づくのです。

 

それはどうでも良いことであり、

「ぼくは、おかあさんの休暇

に付き合うために、

沖縄に帰ってきた。

今、大切なのは、

そのことだけだ。」と。

 

この三日目に読者は初めて

父が死んでしまった理由を

知ることになります。

 

そして、それと同時に

母の大きな後悔も

知ることになるのです。

 

悲しみに胸が痛くなりながら

読み進めていくと、

最後に父が残したリョウへの

手紙があることが分かり、

 

それをリョウが読むシーンに

移り変わっていきます。

 

そこで明かされる

父の息子・リョウへの本当の想い。

 

先ほど感じていた悲しみが

いつの間にかじんわりと

温かい気持ちに

変わっていました。

 

果たして、

この三日間は何だった

のでしょうか。

 

何にために存在し、

リョウに何を伝えたかった

のでしょうか。

 

読んだ人それぞれに

思うところがあり、

何が自分にとって大切なのか

をきっと気づかせて

くれることでしょう。

 

 

 

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