【書評】北大路公子『ハッピーライフ』あらすじと感想!新刊おすすめ

 

今回ご紹介する一冊は、

北大路公子(きたおおじ きみこ)

『ハッピーライフ』

です。

 

北大路公子さんと言えば

『生きていてもいいかしら日記』

『頭の中身が漏れ出る日々』

『私のことはほっといてください』

などのエッセイが印象的です。

 

この『ハッピーライフ』は

エッセイからも読み取れる

北大路公子さんの想像力が

光る作品となっています。

 

入れ替わりによる世界が

本当にあったら

私はどう対応して

いくのだろうか?

とつい考えてしまいます。

 

もしかしたら私は

入れ替わりをしないで

わずらわしさも人生の醍醐味

として生きていく道を

選んでいくかもしれません。

 

それはきっと世の中でいう

変わり者かもしれないけれど

私らしく生きているように

感じたからなのです。

 

そう、回収日に記されている

「穏やかな生活か平和な心だかは知らないが、一生をともにするであろう誰かに自分の感情を肩代わりする世界は、やはりどこか不自然で歪んでいる…」

という内容に共感し

自分らしさを大切にしていきたい

そう感じたのです。

 

なにかしら不思議な世界観を

感じる小説を一緒に

読んでみませんか。

 

 

 

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北大路公子『ハッピーライフ』 均された世界

北大路公子 (著)

 

日記をつけることで〈幸福〉を楔で心に打ち付ける女。17年間、帽子とマスクで顔を覆い商店街の中だけで暮らす女。夫の浮気相手である図書館司書を日々監視する女。理想の家庭を夢見ながら妻に家出された男……。穏やかで静かな街に暮らす人々の〈不安〉はやがて、「ある人々の存」在に向けられてゆく。彼ら/彼女らはいったい何者なのか――。

 

 

人々は入れ替わる習慣ができる前は

むき出しの感情を抱えて

みんな生きていたのです。

 

むき出しの感情とは

どんなものかも忘れてしまうくらい

に人々は何度も

入れ替わって生活しています。

 

その入れ替わりを理解したいと

考えた彼女はそれを

受け入れながらもどういう感情なのか

と思い日記を書き始めてから

なにかしら眠りの浅い日々が続いています。

 

入れ替わる前までは日記を

書き留める習慣の人も多くいたようです。

 

入れ替わりの激しい人などは

それに対応できずというか、

対応する必要がなくなり

日記の存在は薄くなっているようです。

 

彼女の父は

「入れ替わりにより我々は穏やかな均された世界と手に入れたからね。ごつごつとがった感情をわざわざ禊で心を打ちつけるような作業はもう必要ないんだ」

 

と話すと

日記を焼いてしまったそうです。

 

その父は頻繁に変わることはなく

半年に一度くらい入れ替わっていて、

そのたびに見かけも考え方も

変わっていたので

子供のころは戸惑っていたのです。

 

その子供の頃を思い出そうとしても

過去もいろいろと混ざり合っていて

区別することが不可能で

ただ父が存在しているというだけで

認識しいていました。

 

そんな彼女が日記を書き始めて

前回の夫はこんな人で

今の夫はもう8か月も

入れ替わっていないなど

が大学ノートに記された日記で

知ることができます。

 

入れ替わりでなくして

しまった禊のことや

その鋭い先端で深々と

打ち付けられた悲しみのことに

思いをはせながらも

日々は流れていきます。

 

 

 

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北大路公子『ハッピーライフ』 入れ替わらない人

 

入れ替わらない人には

それなりに楽しさ・苦しみ・悲しみ

などの感情がついてきます。

 

小学生の時に人の顔が同じに見えて

母に「みんなが同じお面をつけているみたい」

と言った彼女に

母親は“入れ替わり”に

慣れていないだけだ

と思っていたようです。

 

子供の脳の機能は未発達なので

まれにそう見えることがあると

知っている母は

「どんなに入れ替わってもお母さんはお母さん、

お父さんはお父さんだよ」

と教えてくれていました。

 

それだけでなくどこにいても

みつけられるとも

言ってくれていました。

 

以前までは自分以外に

“入れ替わり”が行われているなら

彼と自分は同じではないかと

考えたこともあったのです。

 

顔が同一にみえる私も頻繁に

入れ替わる彼らも曖昧さの中で

生きているというところでは

本質的な違いはないのではと

微かな希望を持ったのも

幸福な勘違いであったことは

今では理解しています。

 

入れ替わることで人々は親切になり

それが穏やかな時間に

繋がっているかのようです。

 

けれどもいまだに他人の

入れ替わりを実感できずに、

彼女自身の入れ替わりも

信じていないようです。

 

入れ替わらない彼女は

穏やかな生活から離れて

排除し続けることで

絶望があるのだろうかと

思いながらも鏡をみない彼女は

もう入れ替わっているのかも

しれません。

 

 

 

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北大路公子『ハッピーライフ』 本当の家族

 

ある日、妻が変わった。

 

入れ替わったのではなく

変わったのは子供ができたこと

から変わったのです。

 

もちろん、入れ替わりは

今までのように続いているなかで

彼女がいう“本当に家族になるのよ”

という言葉に驚かされた

というのが本当の気持ちです。

 

彼は妻と結婚してから

彼女は頻繁に入れ替わるようになり

気持ちが不安定になっているようで

イライラしているようで

ついには「心がないのね」と

までいわれてたことに

悩んでしまいます。

 

自分たちが入れ替わるのは

「平らで穏やかで滑らかな世界」を

手に入れるためのことなのでないか

と自問自答します。

 

入れ替わり以前の世界では

彼女の一言による話し合いも

必要だったのかもしれないけれど

それでは入れ替わりの意味が

なくなってしまうのです。

 

それでも彼女は

「あなたにはかけがえのないものなんて何もないのね。それって幸せなの?」

とまるで“入れ替わらない人”が

するような質問でした。

 

そんな彼女が家出をして

帰ってくるまでに彼が学んだのは

“入れ替わり”とは人をその場に

止めておくことを恐れる世界

ということです。

 

彼女が帰ってきてからはもう

「心がない」などと

責めることもなくなり

「心がある」子供を生むはずだと

考えるようになり

本当の家族になれたと

実感できたのです。

 

 

北大路公子 (著)

 

 

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