ロアルドダール『あなたに似た人』本のあらすじと感想!「シューイチ」カズレーザーのおすすめ本

 

今回ご紹介するのは、

ロアルド・ダール氏の

『あなたに似た人』なんですが、

まずは不明を恥じねばなりません。

 

この項を書くために

〝ロアルド・ダール〟で

検索してみたのですが、

「児童文学の巨匠」

と返ってくるんですね、

驚いてしまいました。

 

筆者の感覚ではダール氏と言えば、

元戦闘機乗りの経歴を

持つ短編作家で、

 

ことに所謂異色短編の名手として

スタンリィ・エリン氏らと

並ぶ評価を得る、です。

 

映画『チャーリーとチョコレート工場』(2005)

の原作者であることくらいは

知っていましたが、

 

それでもダール氏と

児童文学は結びつかなかった。

 

とはいえこれは児童文学と

言うだけである種「ゆるい」お話を

連想するのが

間違っているだけのようで、

 

お話の内容を聞いてみると、

ダール氏は子供を相手にしても

ダール氏のようです。

 

なんか逆にいいのか?

って気もしますが。

 

 

 

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ロアルド・ダール『あなたに似た人』「南から来た男」

 

ワインの銘柄を当てる大博打の結末は? 夫殺しの凶器の行方は? ラスト一行に襲いかかるショックとは? 常軌を逸した賭けの行方や常識人に突然忍び寄る非常識な出来事など、短篇の名手が残酷かつ繊細に描く11篇を、すべて新訳で収録!

 

 

ホテルのプールで語り手は

南米から来たらしい、

奇妙な男と出会う。

 

男はプールで遊んでいた、

アメリカ人の若者が、

自分のライターは必ず点くと

自慢するのを聞いて、

異様な賭を提案する。

 

もしライターが十回続けて、

ライターが問題なく点火したら、

自分はキャデラックを差し上げる、

 

けれど一回でも失敗したなら、

左手の小指を寄こせと――。

 

「南から来た男」は

ダール氏の作品としてだけでなく、

異色短編としても

オールタイムベスト級の名作

とされています。

 

けれども意外なことに、

オチの切れ味はそれほど

ではありません。

 

ラストの一文は衝撃的ですが、

読者にあっと言わせる

タイプではない。

 

これはやはりダールの名作とされる

「女主人」(本短編集未収録。

『キス・キス』ハヤカワ・ミステリ文庫 2014に収録)

も同様で、

 

わりとオチは見え透いて

いるんですよね。

 

だから、オチを評価するなら

「切れ味」ではなく、

「重さ」、ズシンとくる感じでしょう。

 

このお話で言うなら、

冒頭のプールサイドの情景のような、

当たり前の日常が不意に裂けて、

 

得体の知れないもの、

それも悪魔だ怪物だのに

押しつけられない、

 

どこにでもいる「あなたに似た人」

の中に潜んでいるものが現れる。

 

そのあたりの不気味さが

名作の所以でしょうか。

 

 

 

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ロアルド・ダール『あなたに似た人』「味」

 

成功した株式仲買人が

催す晩餐会。

 

その席では著名な美食家の

プラットが、

ワインのテイスティングで、

主と賭をすることが

恒例になっていた。

 

ところがその日、

プラットは賭の対価として、

主に娘を賭けろと言い出す。

 

主が絶対に当てられないと称する、

その日のワインの品種を

自分が当てられたなら、

娘と結婚させろと言うのだ。

 

さんざん挑発された主は

ワインの希少さに自信が

あったこともあって、

賭けに応じてしまうのだが。

 

あるアメリカ製のミステリで、

ワイン愛好家である

登場人物の本棚に

『あなたに似た人』

が置かれているという描写を

見つけたことがあります。

 

そうした描写に使えるくらい、

この短編はワインをネタにした名作

として名が通っていると

言うことなのでしょう。

 

読みどころはやはり

テイスティングの描写、プラットが

ねちねちと産地を絞り込んでいく、

その真綿で首を絞めるような

サスペンスが傑作の所以でしょう。

 

とはいえ娘を賭の対象にしてしまう

というはどうなんでしょうね。

 

旧版の訳者解説にもありましたが、

ダール氏はどうも女性に辛辣という

印象があります。

 

そこでも挙げられていた

『告別』なんて短編を読んで、

女性はどう思うかというのは

気になるところです。

 

 

 

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ロアルド・ダール『あなたに似た人』 その他の短編

 

上記の二編でお分かりのように、

この短編集の半ばは賭け事を

主題にした作品で

占められています。

 

たとえばブリッジでのイカサマを扱う

「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」。

 

客船が遅れることに

大金を賭けた男が、

船足が上がったために

自ら海に落ちて、

船を遅らせること企む「海の中へ」。

 

「クロウドの犬」は

ドックレースでの

八百長を企む男たちの話です。

 

それ以外では特異な発明にまつわる

騒動を描いたSFと呼ぶべき

「音響捕獲機」

「偉大なる自動文章製造機」

や、

 

ミステリ史で意外な凶器の

隠し場所をネタにするとき、

必ず引用される

名作「おとなしい兇器」

があります。

 

正直、奇妙な味の短編集

として見た場合、

玉石混淆の感は否めないのですが、

 

そうした色眼鏡を外して、

普通の(強いて言うなら文学寄りの)

短編集としてみたら、

その良さが見えてくる

ような気がします。

 

 

 

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ロアルド・ダール『あなたに似た人』 あなたに似た人

 

短編集『あなたに似た人』には

『あなたに似た人』という

短編は含まれていません。

 

けれどダール氏は『あなたに似た人』

という短編を書いているのです。

 

それがどこで読めるかというと

『飛行士たちの話』

(ハヤカワ・ミステリ文庫 1981)です。

 

『飛行士たちの話』は

ダール氏の最初の短編集で、

戦闘機乗りだった頃の経験を

描いた連作集です。

 

『あなたに似た人』

連作の末尾を飾っていて、

爆撃機乗りとして、

あまりに多くの人を殺したために、

年齢よりも遥に老け込んで

しまった男の話です。

 

単にこのタイトルが

気に入っていただけ

なんでしょうかね?

 

 

 

 

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