五十嵐律人『法廷遊戯』感想とあらすじ!著者は弁護士を目指す若き現役司法修習生

 

今回ご紹介する一冊は、

五十嵐 律人(いがらし りつと)

『法廷遊戯』です。

 

著者は本作で

第62回メフィスト賞を受賞し、

小説家デビューを果たしました。

 

タイトルからも想像できる

と思いますが、

法律に関する内容が

物語の中心となっています。

 

刑事裁判の特徴や、

裁判における無罪や冤罪の定義など、

法について深く考えさせられる

部分がたくさんあります。

 

ただ事件が起こり、

裁判が繰り広げられるだけで

終わらないのが、

本作のすごいところです!

 

法律家を目指す学生たちが、

事件に巻き込まれ、

その謎に迫っていく

ミステリーの要素もあります。

 

著者自身が法学部で

法律を学んだ経験があり、

司法試験に合格しているという点も、

物語の緻密さを強めています。

 

法をテーマにした

新感覚ミステリーの魅力を

お伝えさせていただきます。

 

 

 

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五十嵐律人『法廷遊戯』 主人公は罪人だった?

 

第62回メフィスト賞、満場一致で受賞
森博嗣に憧れた天才司法修習生が描く、感動と衝撃の大傑作ミステリー!

<あらすじ>
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義(くがきよよし)と織本美鈴(おりもとみれい)。
二人の“過去”を告発する差出人不明の手紙をきっかけに、
彼らの周辺で不可解な事件が続く。
清義が相談を持ち掛けたのは、
異端の天才ロースクール生・結城馨(ゆうきかおる)。
真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して――?
2020年7月、エンタメ界に激震をもたらす長編法廷ミステリー!

<担当編集者より>
著者の五十嵐律人さんは若き現役司法修習生です。応募作を手にしたとき、多忙であろうそんな人が、どうして小説を?と不思議でしたが、読後、あまりの面白さと新人離れした書きっぷりに、絶対にこの小説を刊行したい!と興奮しました。小説と法律、どちらに対しても確かな知識と情熱を持ち合わせた稀有な作家に、ぜひご注目ください!

 

 

主人公の久我清義(くがきよよし)は、

法都大ロースクールに通い、

司法試験合格を目指しています。

 

発音しづらい名前のため、

親しい人は彼を〝セイギ〟と呼びます。

 

ロースクールには、

清義と長い付き合いの美鈴(みれい)や、

すでに司法試験に合格し、

ずば抜けて優秀な男・馨(かおる)

も在籍しています。

 

 

ある日、自習室で何者かによって

配られた1枚のビラ。

 

そのビラは、清義が過去に犯した罪

を告発するものでした。

 

法律家を目指す主人公に、

罪を犯した過去があるという設定から、

なにやら不穏な空気が漂います。

 

そして、清義の罪は、

1つでは終わっていませんでした。

 

次第に、美鈴や薫を含む、

清義の周囲の人間にも危険が迫り、

清義を追い詰めていきます。

 

狙われているのは、

ロースクールの学生たち。

 

しかも、犯人は清義の過去を知っている。

 

犯人は身近にいる誰かな

のではないか?

その目的とは?

 

裁判にみたてたゲームを交えながら、

清義の周囲で起きる事件の真相

へと迫っていきます。

 

 

 

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五十嵐律人『法廷遊戯』 無辜(むこ)ゲーム

 

ロースクールの学生たちの間で

行われる無辜(むこ)ゲーム。

 

告訴者のほか、裁判官役、

証人役が設定され、

本物の裁判に近い状態で、

無辜ゲームが行われます。

 

無辜とは、「罪のない人」のことを

意味しています。

 

 

清義は、ビラをまかれて名誉を

傷つけられたことを告訴します。

 

裁判官役は、いつも馨です。

 

日本の刑事事件では、

99.9%の被告人が有罪になりますが、

無辜ゲームでは違います。

 

裁判官役が「犯人」と

認めなければ、

告訴者の負けです。

 

「無辜の救済」が適用され、

告訴人が、無実の人に罪を

なすりつけた罰を

受けることになります。

 

無辜ゲームとは、

犯人の罪を暴くというよりも、

罪のない人を出さないようにする

ゲームとも言えるのです。

 

この無辜ゲームや、

実際の裁判のシーンでは、

難しい専門用語が

たくさん飛びだします。

 

難しく感じますが、

きちんと解説があり、

とても勉強になります。

 

法律の複雑な仕組みや、

裁判官、検察官、弁護士の、

それぞれの立場の違いも

知ることができます。

 

それぞれの視点からの事件との

向き合い方を知ることで、

「本当の罪とはなにか」を

考えるきっかけを与えてもらえます。

 

 

 

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五十嵐律人『法廷遊戯』 無罪と冤罪のちがい

 

無罪と冤罪。

 

私は、本作を読むまで、

どちらも罪を犯していないこと

だという認識でした。

 

けれど、それは思い違いでした。

 

無罪は、検察官が罪を

認められなかったということ。

 

つまり、罪を犯しているにもかかわらず、

証拠がそろわず無罪になった

可能性もある。

 

冤罪は、やってもいない罪を

きせられること。

 

なにもしていないのに、

有罪にされ、

獄中で生涯を終えることもある。

 

この無罪と冤罪に関する考えは、

物語のさまざまな場面で、

重要なポイントとなります。

 

清義の過去を暴こうとした犯人には、

どのような目的があったのか?

 

ロースクールを修了したあとに

起きる衝撃の事件から、

犯人の想いが解き明かされていきます。

 

罪を犯しているからこそ、

素直に主人公に寄り添う気持ち

になれないのが、

この物語のちょっと

切ないところです。

 

犯人の描いた結末は、

本当の罪を裁くものなのか?

法律家を志す清義が持つ正義は、

本当の正義なのか?

 

法律に対しての疑問や問題点と

向き合いながら、

ミステリー作品が持つ緊張感も

一緒に味わうことができます。

 

とても著者のデビュー作とは

思えない完成度の高いミステリーに、

衝撃を受けることでしょう。

 

 

 

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