群ようこ『散歩するネコ れんげ荘物語(ハルキ文庫) 』シリーズ第4弾あらすじと感想!

 

今回ご紹介する一冊は、

群ようこ(むれ ようこ) 著

『散歩するネコ れんげ荘物語』

です。

 

群ようこさん。

今さらご紹介するまでもなく

日本を代表する

大人気女流作家のお一人です。

 

いつまでもお若い印象ですが、

今年66歳になられるのですね。

独身です。

 

バブル期から始まった

『無印〇〇物語』シリーズは、

若い頃、読み漁りました。

 

群さんの作品は、

どれもが等身大。

 

背伸びをせず、飾り気なく、

どこかユーモラスで

ほのぼのとした雰囲気が、

読む者に何とも言えない

心地よさを与えてくれます。

 

そんなところが

きっとファンの心を

掴んで離さないのでしょう。

 

特に女性からの支持が

多いのも頷けます。

 

「散歩するネコ」は、

タイトルから想像すると、

普通にネコのお話かと思いますが、

意外と主役では

なかったりします。

出番も意外と

少なかったりします。

 

しかしそのネコが、

物語の中では重要なキーを握り、

絶大な存在感を放っています。

 

群さんはネコがお好きで、

これまでもネコにまつわる作品

を数々発表されています。

 

「散歩するネコ」は、

れんげ荘という

アパートの日常が描かれた、

れんげ荘物語の

シリーズ4作品目となります。

 

 

 

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群ようこ『散歩するネコ れんげ荘物語』 あらすじ

 

 

無職のキョウコは都内のふるい安アパート「れんげ荘」で、相変わらずのひとり暮らし。
六十歳すぎのおしゃれでしっかり者のクマガイさん、
「旅人」をしていたが三十歳を過ぎて、人生模索中のコナツさんや、
近所のネコ・ぶっちゃんなど、個性豊かな人々&猫に囲まれて、のんびり楽しく過ごしていた。
だが、突然倒れて病院に運ばれていたキョウコの母親の入院は長引きそうで……。
心豊かに生きるとは!? 三十五万部突破の大ロングセラー「れんげ荘物語」シリーズ第四弾。

 

 

老朽化した都内の

アパートれんげ荘に

一人暮らすキョウコは、

早期退職したために

現在は無職です。

 

これまで人一倍働いて

貯めた貯金を切り崩す生活

といっても、

そろそろ老後の心配を

しなければならず、

ひと月10万円で

何とかやりくりを

しているのですが、

 

今回は、兄夫婦と

同居する母が病気で

倒れてしまいます。

 

さらに、

それをきっかけに

母は認知症が始まり、

お見舞いに行っても

キョウコをキョウコ

とわかりません。

 

仕事を辞めてからというもの、

母とはすっかり折り合いが

悪くなっていたキョウコは、

 

自分を他人だと

思われることに

多少の寂しさはあっても、

その方が気が楽な部分

もありました。

 

それぞれの事情で

れんげ荘に暮らす他の住人は、

若い頃は自称あばずれ

だったと笑う60歳を過ぎた

クマガイさんに、

バイトに励むアーティスト系の

まだ若いチユキさん。

 

そして今回は、

働かずに旅ばかりしている

コナツさんが、

ちょっとした騒動を

巻き起こします。

 

また、勝手にキョウコの部屋

へやってきては

昼寝をしてくつろぐ彼=ネコの

ぶっちゃんにも、

生活の変化が

起きていました。

 

 

 

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群ようこ『散歩するネコ れんげ荘物語』 女性が一人で生きる暮らし

 

若い頃は、

体も動くし徹夜も平気だし、

ちょっと疲れても

ちょっと休めば

すぐ疲れも取れたけど、

 

年齢を重ねるごとに、

それはかなわなく

なっていきます。

 

ただでさえそうなのに、

女性が家族もなく

たった一人で暮らすとなれば、

 

体力的な面のみならず、

老後の不安は増す

一方でしょう。

 

特にキョウコは今、

働いていません。

 

なんの保障もない、

身ひとつの生活です。

 

若い頃、猛烈に働いて

稼いだ蓄えを、

少しずつ切り崩して

安いアパートで、

実につつましく生活

しているのですが、

 

不思議なことにこれが、

読んでいて少しも

可哀想な感じがしないのです。

 

みじめな感じも、

哀れな感じもなくて、

むしろ、余りある時間と

誰にも文句を言われない

自由というものを、

 

自分の日々のささやかな

喜びのために使って

生きているところに、

素敵な印象さえ抱きます。

 

窓の外から聞こえる

鳥の鳴き声から、

何の鳥かを調べるために

図書館へ本を借りに行ったり、

 

お友達へのお礼の品として、

真っ白な木綿のハンカチの隅に、

 

ていねいに刺しゅうを

ほどこしてアイロンを

かけて郵送したり、

 

トイレやシャワー室と

いったアパートの

共有スペースに小さな花を

飾ってみたり。

 

自分のしたことを

誰かが喜んでくれる、

それが自分の幸せとなって

跳ね返ってくる、

小さな幸せの授受。

 

れんげ荘は

一人暮らしの

女性ばかりの

安アパートですが、

 

ここにはそういった

ささやかな豊かさが

溢れているように

思いました。

 

ネコのぶっちゃんは保護ネコ。

 

キョウコとは逆で、

自由と危険が

背中合わせで生きていた身から、

 

保護されて生活の保障を

得た代わりに

自由が失われました。

 

大事にされるがあまり、

散歩はリードを繋いで

飼い主さんと一緒にするまでに。

 

それでもキョウコは、

たまに会えるぶっちゃんから、

 

ささやかな癒しと幸せを

与えてもらっています。

 

ぶっちゃんも散歩の途中で

キョウコに会うと大喜び。

 

ここにも小さな幸せの

授受がありました。

 

 

 

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群ようこ『散歩するネコ れんげ荘物語』 他人にどこまで干渉する?人との距離のとりかた

 

基本的には、

どんな生き方をしようと、

その人の勝手です。

 

自分の人生は自分で

プロデュースすればいいので、

 

結婚しようとしまいと、

どんな人を結婚相手に

選ぼうと、

どこに住もうと、

何をして働こうと働くまいと、

好きにすればいいのです。

 

だからキョウコの場合は、

兄のようにゆるく長く

仕事をする道ではなく、

 

太く短く仕事をして、

今は働いていません。

 

市役所のタナカイチロウが

たびたび「働かないんですか?」と

アパートを尋ねてくるたびに

 

キョウコは罪悪感を

おぼえてしまうのですが、

それもキョウコが自分で

選んだ生き方。

 

生活は自分できちんと

できているのだから

余計なお世話なのです。

 

しかしそんなキョウコが、

コナツには口うるさく

自立を促します。

 

一つ嫌なことがあると

全部が嫌になって、

そこから逃げてばかりの

コナツは、

逃げては行き詰って、

 

人を頼ってはふわふわと

いつまでも自分の足で

歩こうとしません。

 

人生の先輩でもある

キョウコやクマガイさんは

時として、

そんなコナツに、

自らの経験をふまえて

ビシッと物を言ったりします。

 

今どき、たかが同じ

アパートの隣人というだけで、

他人の生きざまに

意見する人はなかなかいません。

 

でもこのれんげ荘では、

それがほどよく

行われています。

 

お節介でもなく、

説教がましくもなく。

 

無関心と干渉の間の、

実にほどよい距離感で、

他人とのいい関係が

保たれているれんげ荘は

とても魅力的です。

 

しかしその一方で、

認知症になった

「母との距離感」

というものがまた、

 

とてもシビアで

考えさせらてしまいます。

 

 

 

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