秋吉理香子『眠れる美女(小学館)』あらすじと感想!「ジゼル続編」バレエミステリー第2弾

 

今回ご紹介する一冊は、

秋吉 理香子

『眠れる美女』です。

 

2017年に発表された

『ジゼル』の続編として

出版された作品です。

 

前作から登場人物や背景は

引き継いていますが、

前作を読んでいなくても

充分楽しめる作品となっています。

 

前作を読まれた方はもちろんのこと、

ミステリーものが好きな方、

バレエ作品が好きな方、

そして誰かを想う愛情に触れたい方

におすすめです。

 

 

 

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秋吉理香子『眠れる美女』 バレエ作品に準えた殺人事件

 

 

バレエ団を襲う悪の精カラボスとは何者か?

『ジゼル』の事件を乗り越え、新設された東京スペリオール・バレエ団。旗揚げ公演『眠れる森の美女』を”バレエ界の至宝”シルヴィア・ミハイロワが演出することになり、団員たちは歓喜する。しかし、客演が決まった世界的プリマのユリカ・アサヒナは我が儘で、人間関係に軋みが生じていく。
そして、悪の精”カラボス”を名乗る人物から不気味な脅迫状が届き、小道具の糸車の針でダンサーが次々に毒殺される――
再び存続の危機に陥ったバレエ団。
カラボスとは何者なのか? その意図は何なのか?

大反響『ジゼル』の衝撃再び!
嫉妬と愛憎渦巻くバレエ・ミステリー第2弾!

【編集担当からのおすすめ情報】
個性的な新キャラクターが多数登場。
若くしてバレエ団の理事になった花音の奮闘と成長にも注目です。

 

 

誰もが知る有名なバレエ作品

「眠れる森の美女」。

 

新しく生まれ変わったバレエ団

の旗揚げ公演として、

この作品をやろうと決まる

ところからストーリーは始まります。

 

お金のことしか考えない

銀行の融資担当が来たり、

団のことをよく知らない

外部のメンバーが来たり、

団員たちを取り囲む状況や環境

が変わっていくことで

雰囲気が悪くなっていくばかり。

 

それでも何とか公演を成功させようと、

支配人や理事をはじめ団員は

みな動いていきます。

 

バレエ団では団員同士は

仲間であると共に、

ライバルでもあります。

 

しかも今回は主役を

客演メンバーが演じること、

さらには世界的に有名な

元バレリーナが演出を

担当することになり、

 

何とか良い役をもらい良い稽古

をつけてもらいたい、

良い役で注目されたいと

考えるメンバーが続出。

 

嫉妬や反感はいつも以上に

ひどい状態になり、

団員の間にギスギスした空気

が流れ始めます。

 

そしてついに、団員のひとりが

殺されるという事件が

起きてしまいます。

 

「眠れる森の美女」のストーリー

に準えた事件が次々と起こり、

旗揚げ公演は中止にせざるを

得ない空気になりますが、

遺された団員や関係者たちで力を合わせ、

なんとか存続する方向に。

 

みんながみんなを想い合い

力を合わせていくうちに、

愛情と憎悪により絡み合った糸もほどけ、

事件の全貌が明らかに

なっていきます。

 

大切な仲間を失うという痛手を

負ったにも関わらず、

旗揚げ公演は関係者みんなが

望む形で成功に終わります。

 

 

 

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秋吉理香子『眠れる美女』 テンポの良いストーリー展開と後味の良さ

 

殺人事件を扱うサスペンスものは

テンポの良いストーリー展開が

大事だと思っていますが、

本作品は読んでいてとても心地よい

テンポ感だったように感じました。

 

単行本で250ページ近い大作ですが、

ストーリーに引き込まれてしまい

約2時間ほどで読み終えて

しまったほどです。

 

登場人物も多すぎず少なすぎず、

また「眠れる森の美女」の

ストーリーに準えて

書かれているので

分かりやすくなっています。

 

普段、本を読むときはストーリー展開

についていけず何度も前を

読み返す私でも、

ほぼストレートに最後まで読めました。

 

事件のタネ明かし部分は、

少し予想外ではあったものの

何となく肩透かし感が否めません。

 

ただし、事件が起きたせいで

とっ散らかった状態から、

誰もが幸せになれるような

エンディングにつながったことで、

読み終わったあとは

清々しい気持ちになれました。

 

久しぶりにここまで後味の良い作品

に出会えたように思います。

 

 

 

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秋吉理香子『眠れる美女』 潔白と疑わしさの描き分けが秀逸

 

ストーリーの中で殺人事件が起きると

登場人物全員を「犯人なのか?」

と疑いたくなります。

 

とくに、犯人と疑いたくなるような

描写が出てくると

「この人が犯人なのか?それとも

犯人と思わせたいのか?」

とつい、考えてしまいます。

 

こういった

「犯人と疑いたくなるような描写」と、

そうでない描写の描き分けが

とても上手だなと、

読んでいて感じました。

 

例えば、主役を務めることになる

客演メンバーのエリカの幼馴染、

達弘と梨乃はふたりとも途中までは

とても良い人として描かれていますが、

ストーリーの途中から

急に疑わしい人物として

描かれるようになります。

 

読んでいて無意識に

「このふたり怪しいな」と

思わされてしまった自分に気付き、

著者の描写にやられたな、

と感じました。

 

またストーリーの最後のほうで、

入院しているメンバーの部屋に

医者が巡回に来るシーンがありますが、

なんとも怪しい感じの描かれ方に

「このあとさらに事件が起きるのか?」

と疑いたくなってしまうほど。

 

ベタな展開をつい

思い浮かべてしまうほど、

殺人事件にありがちな

シチュエーションを描いておいて、

実は予想を裏切る展開だったこと

にとても驚かされました。

 

ミステリー好きな方や、

殺人事件ものを数多く

読まれている方には、

その描写の描き分けが

あからさますぎて逆に注意深く読まれ、

サクッとオチを見抜けて

しまうかもしれません。

 

でも私のように殺人事件を

あまり読まず、

しかも描写をそのまま信じて

しまいがちな方には特に、

この描き分けがうまくハマり

最後まで楽しめる作品に

なっていると思います。

 

 

 

 

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