今村昌弘『魔眼の匣の殺人』あらすじと感想【このミス2020第3位】クローズドサークルの恐怖!

 

今回ご紹介する一冊は、

今村昌弘(いまむらまさひろ)

『魔眼の匣の殺人(まがんのはこのさつじん)』

です。

こちらは、

「このミステリーがすごい!2020年版」(宝島社)

で堂々の第3位を獲得しています。

今村昌弘さんのデビュー作

『屍人荘の殺人』の続編にあたります。

著者は2017年に鮎川哲也賞を受賞してデビューし、

翌2018年に本格ミステリ大賞を受賞しました。

読み手をひきつけるクローズドサークルの緊迫感と、

綿密なトリックが素晴らしく、

すぐれたミステリー作品に与えられる

いくつもの栄冠に輝き話題となりました。

『魔眼の匣の殺人』も閉鎖空間で巻き起こる事件

が描かれており、

極限状態に置かれた登場人物たちの

鬼気迫る心情が表現されています。

読者はその状況を自分自身に置きかえ、

終始ドキドキが止まらない物語となっています。

文章自体はわかりやすい表現で書かれているので、

小説をふだん読まない方でも

気軽に読むことができる

エンターテインメント作品だと思います。

 

 

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事件に巻き込まれる探偵たち

 

「あと二日で四人死ぬ」
閉ざされた“匣”の中で告げられた死の予言は成就するのか。
『屍人荘の殺人』待望のシリーズ第2弾!

その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は、予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人に死が訪れ、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに、客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。残り四十八時間。二人の予言に支配された匣のなかで、生き残り謎を解き明かせるか?! 二十一世紀最高の大型新人による、待望のシリーズ第2弾。

 

物語は主人公の大学生・葉村譲と、

譲が会長をつとめるミステリ愛好会に

所属する女子大生探偵・剣崎比留子が

主要な登場人物となります。

2人は『屍人荘の殺人』にて悲惨な事件に巻き込まれ、

その事件を起こした組織・班目機関の

正体をつきとめようと捜査を始めます。

2人が捜査で行きついたのが

山奥の僻地に存在する「魔眼の匣」なる

班目機関の研究施設です。

施設には村人から恐れられるサキミ

という超能力者がおり、

彼女はこれまでに数々の事件を

予言してきたといわれています。

2人以外にも、魔眼の匣に向かう道中で

出会った高校生2人組や、

この地に住んでいたという女性、

近くをとおりかかった親子と青年など、

計9名が、魔眼の匣に閉じ込められる事態におちいります。

そしてサキミによる“あと2日間でこの地で4人が命を落とす”

いう予言を耳にし、

自分たちの中から死者が出るかもしれない恐怖

と闘うことになるのです。

 

 

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クローズドサークルと超能力者の予言がもたらす二重の極限状態

魔眼の匣から村へと続く橋を

何者かに燃やされてしまい、

抜け出すことができなくなった登場人物たちですが、

はやくもその中から犠牲者が出てしまいます。

それをきっかけに、サキミによる予言の犠牲にならないために、

残された人物のだれかが殺人事件をひきおこします。

著者の作品は、単にクローズドサークルという

逃げようのない状況の恐怖だけでなく、

サキミの予言による恐怖という二重の恐怖を

つくりあげているところが、

とても手がこんでいます。

自身もいつ狙われるかわからない極限状態の中、

譲と比留子が事件解決のために思考を巡らせ、

さらに班目機関の実態を探る目的も果たそう

とする姿はとても頼もしいです。

緊張感のあるストーリーですが、

ときおり飛び出す譲と比留子の

コミカルなやりとりが

箸休めとなりますのでご安心ください。

たった2日間の出来事とは思えないほど、

事件の当事者として懸命に闘う

2人の姿が盛りこまれています。

 

 

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闘う探偵の想いと事件の巧妙なトリック

比留子は「事件をひきよせてしまう」

自分自身の得意な体質に怯えながらも、

数々の事件を解決してきました。

心に暗い影を落とした事件の真相を

放っておけない比留子の正義感は

読んでいてとても切なくなります。

サキミの予言による呪いに怯え、

パニックになる登場人物に

比留子が言った言葉があります。

「呪いなんてものがこの世に実在するのなら、きっと私の呪いの方が強い。これまで私の周りでは両手で足りないくらいの人が死んでいる」

 

自分の体質を心から呪う比留子の気持ち

が伝わってくるセリフです。

そんな比留子に協力したい譲と、

譲を事件に巻き込みたくない比留子。

二人のお互いを思いながらも

ときに本音を隠したりする微妙な関係性

物語に深みを与えています。

クローズドサークルという犯人さえも

逃げ出せない状態で起こる事件のトリックは、

読み手の想像を超える巧妙なものです。

作中にある伏線から読み取ることはできるでしょうか?

私はいくら考えてもトリックも犯人も

見破ることができませんでした。

事件が解決したかと思いきや、

最後の最後に思いもよらない真実

用意してくれている作者のサービス精神

には脱帽します。

1ページも無駄にさせない作者の熱意が

伝わってくる読みごたえのあるミステリー作品です。

 

 

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