アンソロジー『1日10分のごほうび NHK国際放送が選んだ日本の名作』感想!作家の個性が光る

 

今回ご紹介する一冊は、

アンソロジー

『1日10分のごほうび NHK国際放送が選んだ日本の名作』

です。

赤川次郎、江國香織、角田光代、

田丸雅智、中島京子、原田マハ、

森浩美、吉本ばななといった

贅沢な豪華メンバー8人の短編集です。

NHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、

世界17言語に訳して朗読された作品を

集めたものとあって、

活字で読んでもとてもわかりやすいお話ばかり。

しかも、どこにでもありそうな、

だれもが経験していそうな、

どれもがそんな身近なストーリーです。

その中に、じんわり心が温まったり、

すっと気持ちが晴れたり・・・

といったテイストが詰め込まれ、

それぞれの作風によって、

短いお話の中に個性が散りばめられ、

その人らしい世界観を見せてくれています。

どの作品も優しさに溢れています。

読めば、お気に入りの1作が

きっとみつかることでしょう。

 

 

 

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『1日10分のごほうび NHK国際放送が選んだ日本の名作』あらすじ

赤川 次郎 (著), 江國 香織 (著), 角田 光代 (著), 田丸 雅智 (著), 中島 京子 (著), 原田 マハ (著), 森 浩美 (著), 吉本 ばなな (著)

 

NHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、世界17言語に翻訳して朗読された小説のなかから、人気作家8名の作品を収録。好評シリーズ第二弾。亡き妻のレシピ帳から在りし日の姿を想う老夫。対照的な生き方をしている女友達からの贈り物。大御所・赤川次郎×新鋭・田丸雅智のショートショート読み比べも愉しい一冊。きっとお気に入りの作品が見つかるはず!

 

最初の舞台は

1970~80年代ぐらいでしょうか。

正月明けの仕事始めには、

女子社員は振袖を着て記念撮影をして帰るだけ。

そんな古き良き時代のOLやサラリーマンの心情を、

茶目っ気たっぷりに描きながら

心和ませてくれる赤川次郎作品

次に、普通の人の普通の日常をテーマに、

優しい気持ちを呼び起こさせてくれる江國香織小説

さらに、旅好きの角田光代さんは

旅と本が絡みあう不思議な物語を。

そして田丸雅智さんの、

自然をテーマにしたほっこりするファンタジー。

妻を亡くした60男と料理にまつわる、

じんわりくる作品は中島京子さん。

一方、原田マハさんは女友達との微妙な関係が

変化する様を女性特有の感性から描き、

全国ネットの放送局でアナウンサーを務める男

のラジオ番組最後の放送を綴ったのは森浩美さんです。

最後は、植物好きの祖母との交流を通して、

つながることを発見した孫娘の気持ちの変化

を描写した吉本ばななさんの作品へと続き、

本書は締めくくられます。

 

 

 

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ありふれた日常の一コマが優しい物語に

 

特に江國香織さんの2作品「晴れた空の下で」

「南ヶ原団地A号棟」は、

本当にどこにでも転がっているような、

ごくごくありふれた人たちの何の変哲もない日常の場面です。

それがこうして切り取られて一つの物語になると、

人間のはかなさや本音の可笑しさに、

思わず頬が緩んでしまいます。

そんなもんだよね、と気持ちがふわりと軽くもなります。

その感覚は、原田マハさんの「誕生日の夜」

からも感じることができました。

女同士って、ややこしいし面倒だし、いろいろ考えちゃうし・・・。

でも、そのどこにでも存在する複雑さは、

もしかしたらその関係をより深め、

そこに彩を添えてくれるものなのかもしれません。

ほとんどのサラリーマンやOLが抱いている本音から、

突拍子もない展開を見せる赤川次郎さんの「便利な結婚」、

嫌みのないオチで可笑しさを誘う「代筆」。

もうこのあたりは、難しいことを考えずにさくっと読めて、

共感できて、くすっと笑える・・・

まさに安定の読み心地でした。

 

 

 

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亡き人への思いは果てしなく

 

角田光代さんならではの旅の物語「旅する本」と、

田丸雅智さんの「海酒」「綿雲堂」は、

ちょっと不思議な世界へ連れて行ってくれました。

それはエキサイトする不思議さではなく、

じんわりと感性がくすぐられるような世界です。

一方で、中島京子さんと森浩美さんと吉本ばななさんの3人が、

亡くなった家族への思いをテーマにしている

のは興味深かったです。

それは妻だったり母だったり祖母だったり。

いずれも生前には伝えられなかった思いがあり、

それを亡くなった後で自己確認しています。

中島京子さんの「妻が椎茸だったころ」では料理を通して、

森浩美さんの「最後のお便り」と

吉本ばななさんの「みどりのゆび」では仕事を通して。

どの主人公も、

大事な人を自分の生活の中で生かせ続け

ことができています。

そしてさらに、亡くなった家族への思いのみならず、

そこに関わるすべての人や生物、

物たちとのつながりは果てしなく広がる、

ということを知った「みどりのゆび」の主人公。

それを慈しみながら生きていこうとする様子からは、

私自身とても大切なことを教えられたような気がします。

 

赤川 次郎 (著), 江國 香織 (著), 角田 光代 (著), 田丸 雅智 (著), 中島 京子 (著), 原田 マハ (著), 森 浩美 (著), 吉本 ばなな (著)

 

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