馳星周『雨降る森の犬(集英社文庫)』あらすじと感想!直木賞受賞後の初文庫

 

今回ご紹介する一冊は、

馳星周

『雨降る森の犬』です。

 

この小説は同じく馳星周の

『ソウルメイト』のように、

犬と人との絆を描いた小説で、

変わり者の犬ワルテルと

一人の女子中学生の交わり

を描いています。

 

馳星周は『少年と犬』で

2020年に第163回直木賞を受賞するなど、

犬と人間の絆を書くことに定評のある、

今大人気の作家です。

 

また、ノワール小説も得意としており、

過去には『不夜城』や

『アンタッチャブル』など

複数の作品で何度か直木賞候補

になるなど、

長い間多くの人に

愛されてきました。

 

また、ゲーム評論やプロレス評論

などでも活躍しており、

その活動の幅は多岐に渡ります。

 

そんな馳星周の人気作である

『雨降る森の犬』が、

直木賞の受賞も影響して

この度文庫化されました。

 

ぜひとも書店で手に取り、

感動を味わってほしいと思います。

 

 

 

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馳星周『雨降る森の犬』 のあらすじ

 

 

直木賞受賞後初文庫!!
山の癒し、犬の恵み──。

9歳で父を亡くした中学生の雨音は、新たに恋人を作った母親が嫌いだった。学校にも行かなくなり、バーニーズ・マウンテン・ドッグと立科で暮らす伯父・道夫のもとに身を寄せることに。隣に住む高校生・正樹とも仲が深まり、二人は登山の楽しみに目覚める。わだかまりを少しずつ癒やしていく二人のそばには常に溢れる自然や愛犬ワルテルの姿があった。犬の愛らしい姿が心に響く長編小説。

 

 

中学生の広末雨音は、

写真家の伯父、

道夫が暮らす長野の

ペンションを訪れます。

 

そこで彼女は、

男尊女卑の一風変わった

バーニーズ・マウンテン・ドック、

ワルテルと出会うのです。

 

雨音は9歳の時に父親を亡くし、

未亡人となった母親は

新しい恋人に夢中でした。

 

そんな複雑な

家庭環境を相まって、

雨音は学校にも行かなくなり、

また母親が恋人を追って

海外へと行ってしまったのを機に、

伯父の下へ身を寄せるのです。

 

しかし、雨音はワルテルには

心を開き、

ワルテルも彼女に懐いて

二人の関係は日に日に

深くなっていきます。

 

さらに隣に住む

高校生正樹とも仲良くなり、

二人は一緒に長野の雄大な山々で

登山を楽しむようになりました。

 

初めこそ心に負った傷に

苦しむ雨音でしたが、

正樹やワルテルらと過ごすうちに、

少しずつその傷を癒していくのです。

 

人間、犬、そして自然。

 

それら三つの美しい関わりに

感動させられる一作です。

 

社会に対して問いかけるような

作品であると同時に、

私たちに明日からも生きていく

勇気を与えてくれます。

 

 

 

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馳星周『雨降る森の犬』 の魅力

 

この作品の魅力は何と言っても、

まるで実際に触れあっているかの

ように感じさせるほど、

生き生きと描かれた犬の姿です。

 

アニマルセラピーという

言葉がありますが、

この小説を読むだけで、

その効果を実感させられる

ような気がします。

 

さすがは自らも犬好きであり、

犬と人との絆を描いた小説を

多く執筆している馳星周のなせる技

といったところでしょうか。

 

そしてその犬ワルテルと雨音、

さらには正樹が関わりあっていく中で、

互いに絆を深め成長していく様子には、

私たちも胸を打たれるものがあります。

 

人と人とのつながりが

希薄になっていると言われることも

多い今日ですが、

だからこそ周囲の人を大切に

しなければならないのだと

強く感じさせられました。

 

また、自然の中で彼らが

過ごすことも、

私たちに向けられた

重要な示唆でしょう。

 

雄大な自然はその中にいるだけで

私たちの心を癒してくれる

不思議な存在です。

 

ですが、もしそんな暇がないと

いう方がいたら、

この本を読んでみてはいかがでしょう?

 

本は読むだけで私たちを

様々なところに連れて行ってくれます。

 

特にこの物語は、

ページをめくるたびに心が

洗われるような感じがするほど、

とても美しい物語でした。

 

 

 

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馳星周『雨降る森の犬』 の秘話

 

実はこの小説は、

作者の馳星周が実際に経験した

事実をもとにして書かれているのです。

 

その経験とは、

自らの飼っていた犬ワルテルが

衰弱していたものの何とか

持ちこたえていて、

ワルテルが懐いていた

作者の姪が訪れた翌日に、

それを待っていたかのように

亡くなった、というものです。

 

馳星周はそんな犬と人間の

不思議な絆を感じさせられるような

経験を小説にしたいがために、

本作を書いたとすら言っています。

 

そのため、本作に登場する

犬の名前であるワルテルは、

作者の飼っていた犬から

名付けられたのです。

 

まさに事実は小説よりも奇なり、

とても不思議な話ですが、

美しい体験談ですよね。

 

犬と人間は、

文明が生まれる以前から

関わりがあったといいますから、

動物の中でも特に私たちが

親近感を抱く存在でもあります。

 

ぜひ文庫化されたこの機を逃さず、

美しく、そして勇気づけられるような

物語を味わってみてください。

 

 

 

 

 

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