青山美智子『木曜日にはココアを (宝島社文庫)』感想とあらすじ!表紙のミニチュアアートも素敵

 

今回ご紹介する一冊は、

青山美智子

『木曜日にはココアを』

です。

 

あの読書メーターで

「読みたい本ランキング文庫部門第1位」

に輝いたこちら

『木曜日にはココアを』。

 

これは納得です。

 

コロナ禍という今を

象徴したような結果では

ないでしょうか。

 

作者の青山美智子さんは、

大学卒業後、

オーストラリアはシドニーの

日系新聞社で記者として

勤務した経験をもつ小説家。

本作品がデビュー作です。

 

ご自身の経験を活かし、

シドニーと東京が舞台と

なっています。

 

また青山さんは、

作品中にも登場する絵画に

たいへん造詣が深く、

アートセラピー講師としての

お顔もお持ちです。

 

そして第2章「きまじめな卵焼き」は、

2018年開成中学校の

国語の入試問題で出題されたこと

でも話題となりました。

 

アナウンサーによる朗読ラジオ

での朗読作品として

取り上げられることも多く、

それらのことから作品の質の高さ

がうかがえます。

 

 

 

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青山美智子『木曜日にはココアを』 あらすじ

 

わたしたちは、知らないうちに誰かを救っている――。川沿いを散歩する、卵焼きを作る、ココアを頼む、ネイルを落とし忘れる……。わたしたちが起こしたなにげない出来事が繋がっていき、最後はひとりの命を救う。小さな喫茶店「マーブル・カフェ」の一杯のココアから始まる12編の連作短編集。読み終わった後、あなたの心も救われるやさしい物語です。※文中に登場するシドニーの情報は、2017年7月時点のものです。

 

 

川沿いの並木の

奥まったところにある

「マーブル・カフェ」には、

木曜日の午後になると

必ず訪れる女性がいました。

 

彼女は決まったテーブルに着き、

決まってココアを注文し、

トリコロール柄の

トレーシングペーパーのような

便せんにエアメールを

したためていました。

 

ある日、いつもの席には

別の女性が先に座っていました。

 

バリバリのキャリアウーマン風の

その女性は、

あわただしく仕事をこなし、

時計を見ると急いで

出ていきました。

 

息子のお迎えの時間だったのです。

幼稚園では先生が

笑顔で出てきてくれました。

 

先生は悩んでいました。

職場の先輩とうまくいかず、

幼稚園をやめようかと。

従姉を真似てオーストラリアに

ワーホリにでも行こうかと。

 

オーストラリアで結婚式を挙げ、

新婚旅行中の若い夫婦は、

そこで結婚50周年の記念旅行中

という日本人老夫婦と出会います。

 

老夫婦は一人娘から旅行を

プレゼントされたのでした。

 

娘は、東京でランジェリーショップ

を営んでいます。

 

その店は「マーブル・カフェ」から

すぐの場所にありました。

 

 

 

 

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青山美智子『木曜日にはココアを』 色のもつ美しさを再発見させられる

 

作者の青山さんが

アートセラピーの講師としても

ご活躍中というだけあって、

12話すべてが「色」に

まつわるお話です。

 

その色がどんな意味をもつのか、

 

たとえばオレンジ色は

赤色ほど自己主張はないが

黄色ほど奇抜でもなく、

ちょうどその中間あたりで、

人をハッピーにさせる色だとか、

 

緑色は心を落ち着かせる作用

があるとか、

青色は冷たい色のように思えるが

実は聖母マリアの慈愛の色だとか、

 

そういうことがいっぱい

散りばめられていて、

女子なら絶対好きな内容

だと思います。

 

それが単に知識や説明として

書かれれているのではなく、

登場人物の人柄やその時に

置かれている状況や

心理状態などを通して

描かれているので、

とてもすんなり入ってくるし、

興味もわくし、

普段なにげなく眺めている色

というものの美しさを、

再発見させられる気がします。

 

物語そのものもやさしくて

美しい情景が浮かびます。

 

登場する人たちもみんないい人。

 

こんな息苦しい時代だからこそ、

この作品のようなほっとする小説が、

癒しとして好まれている

のだと思います。

 

 

 

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青山美智子『木曜日にはココアを』 居心地のよい場所を探して生きている

 

人は誰しも、

多かれ少なかれ悩みを

抱えて生きています。

 

それが12のお話によって

吐露されたり、

救われたりしていきます。

 

誰もが悩みを持ち、

そして誰もが誰かを救っている

というわけです。

 

読んでみると「ここにいる理由」

というものを、

人は見い出したいのではないか

と思いました。

 

ここで自分が必要とされる理由。

 

私たちもそうではないでしょうか。

 

それがないと不安になり、

それがわかれば安心します。

 

そしてそこが、

居心地のよい場所というもの

になっていく・・・。

 

「マーブル・カフェ」のオーナーを

任された青年が言います。

 

「好きなところにいるだけで、元気になることもあると思います。」

 

好きなところ、

すなわちそれは自分がいる

理由のある場所。

 

そしてそれが安心できる場所となり

居心地のよい場所となるのです。

 

そんなに都合よく

現実はいかないかもしれません。

 

でも、ふわりとした

気持ち良い筆致で、

くすぐられるように語られる

この作品を読んでいると、

 

どうしたってやさしさを

拒めない自分がいて、

不思議な感じに包まれます。

 

 

 

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