今回ご紹介する一冊は、
桜木 紫乃(さくらぎ しの) 著
『ホテルローヤル』です。
この作品は
第149回直木賞を受賞
した桜木さんの代表作。
2020年11月13日から
朝ドラ女優の波瑠さんを
主演に迎え、
実写映画が公開される
ということで、
今また注目を集めています。
実は桜木さん自身が15歳のとき、
父親が「ホテルローヤル」
というラブホテルを開業し、
部屋の掃除などで家業を
手伝っていたそうです。
また桜木さんは
ゴールデンボンバーのファン
としても知られていて、
直木賞受賞の記者会見で、
鬼龍院翔が愛用している
タミヤロゴ入りTシャツを
着用したことで
話題にもなりました。
作品だけでなく、
著者ご本人もとても
おちゃめで面白い方です。
他にも2013年
『ラブレス』で
第19回島清恋愛文学賞しました。
その他、
『星々たち』
『蛇行する月』など、
多数の著書があります。
目次
桜木紫乃『ホテルローヤル』 愛の営みを冷めた視線で見つめる
【第149回直木賞受賞作】北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。
このお話はホテルローヤル
という北海道の湿原に佇む
ラブホテルを舞台に
描かれており、
7つの短編集で構成
されています。
このホテルローヤルで、
もしかしてすれ違ったかも
しれない人々の愛の営みが
生々しくも、
切なく描かれています。
それぞれ短編の主人公となる
人々が交わることはないですが
他の短編にも少しずつ
登場する点が、
著者のいたずらのようで
面白いです。
この作品は自伝的小説かと
思いきや、
視線は思った以上に
傍観者です。
ラブホテルというひとときの
“非日常”を楽しみ、
安らぎと虚しさを抱え、
帰っていく客たち。
それを観察するような、
冷めた視線で描く世界観が
桜木紫乃さんの魅力です。
桜木さん自身も過去に
このような場所で
働いたからこそ
性愛への冷めた視点を
形成したのでは、
と話しているそうです。
そんなふうに自分を
切り離さなければ、ラ
ブホテルという場所では
働けないのかもしれません。
私たちもその視線で
観察者となって他人の性愛を
覗き見できる一冊です。
桜木紫乃『ホテルローヤル』 絶望の中にある希望
私にとって
桜木紫乃さんの作品は
「絶望に寄り添ってくれる存在」
です。
本当に本当に
どうしようもなく
絶望した時に読みたくなるんです。
それは桜木さんの作品に、
どうしようもない絶望が
あるからだろうと
考えています。
その絶望を傍観者の視線で、
冷静に見つめて
くれているからだろうと
思います。
それがなぜか絶望に
打ちひしがれた私を
安心させ、
奮い立たせてくれるのです。
北海道と言う極寒の土地で、
食べて、寝て、愛する。
そんなシンプルな生き方を
思い出させてくれます。
「なにがあっても働け。一生懸命体動かしてる人間には誰もなにも言わねぇもんだ。聞きたくねぇことには耳ふさげ。働いていればよく眠れるし、朝になりゃみんな忘れてる。」
(ホテルローヤル「星を見ていた」より引用)
生きていたら嫌なことも
たくさんあって
動けなくなることもあるけれど
生きていくために
動かなければ、
という気持ちになります。
そういう絶望に
決して負けない力が、
桜木さんの作品には
あると思います。
桜木紫乃『ホテルローヤル』 映画「ホテルローヤル」にも期待!
主演の波瑠さんが演じるのは
「えっち屋」に登場する
ホテルローヤルの経営者兼
ひとり娘雅代です。
波瑠さんの他にも
豪華キャストが勢ぞろい。
アダルトグッズ会社の
営業・宮川役に松⼭ケンイチさん。
ホテルローヤルの経営者で
雅代の⽗親・⽥中⼤吉役に
安⽥顕さん。
家庭を顧みなくなった⼤吉に
愛想を尽かせる
⺟親・るり⼦役に夏川結⾐さん。
ホテルローヤルの
パートタイム従業員役に
余貴美子さんと原扶貴⼦さん
といった、
実力派キャストばかりです!
また監督は『百円の恋』で
日本アカデミー賞を受賞
した武正晴監督。
脚本はNHK連続テレビ小説
「エール」を手掛ける
清水友佳子さんが担当します。
原作に忠実に、というよりは
この原作をもとに
ホテルローヤルを取り巻く
人々を一本の映画にまとめた
と言うのだから
この世界観をどう表現するのか
楽しみです。
また舞台が舞台なので、
原作のちょっと過激な
大人のシーンがどう映像化
されるのか、
にも期待したいと思います。
ぜひ原作を読んでから
映画を楽しんで下さいね。
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