今回ご紹介する一冊は、
小竹 正人(おだけ まさと) 著
『空に住む』です。
小竹正人さんは
新潟県出身の作詞家で
小説家です。
『空に住む』は
2020年秋に
多部未華子さん主演の
映画化公開される作品で
私も観るのが楽しみです。
作詞家でもある
小竹正人さんは
三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、
E-girls、Flower、
LISAなどに
歌詞を提供していて
常に私たちを
楽しませてくれています。
新潟県出身というのもあり
『空に住む』にも登場する
小豆ではなく金時豆で
炊いた赤飯、
のっぺ汁などの郷土料理、
笹団子、
「幸福あられ」には
読みながら興味がわきます。
前の職場に
新潟出身の人がいて
笹団子はお土産で
もらったことは
あるけれど
他は食べたことがないので
食べてみたいものです。
なかでも雅博おじさんが
サクサク食べていた
「幸福あられ」を
Amazonで購入しようと
クリックしたら
品切れ中だったので
残念度は半端ありません。
そんな郷土愛を
感じることのできる
『空に住む』を
読み解いていきます。
目次
小竹正人『空に住む』 空に住む
事故で両親を亡くした直美は、猫とともに叔父が用意してくれた都心の高層マンションに移り住む。
眼下に絶景が広がるその部屋は、まるで空のような場所だった。ある日、直美はマンションのエレベーター内で人気俳優の時戸森則に出会う。
「ねえ、オムライス作れる?」彼のそのひと言で、直美の運命は一変し――。人気作詞家が描く喪失と再生の物語。
直美の父である
小早川直人のことを
好きすぎる母との
3人の生活は
子供でありながらも
窮屈な生活でした。
父の歳の離れた
弟(雅博)が
直美のことを
かわいがってくれて
いたのもあり
大学進学をきっかけに
アメリカンショートヘア(猫)
のハナとともに
新潟から東京に上京します。
直美は出版社に就職し
仕事に慣れたころに
雅博おじさんが
一回り下の明日子さんと
結婚することになり
結婚式の日に母が
くも膜下出血で亡くなり、
その数か月後に
父も交通事故で
亡くしてしまいます。
叔父夫婦の勧めもあり
東京に戻り
叔父夫婦が41階に住む
高層マンションの39階に
直美が住むことになりました。
そのマンションは
空を感じることが
できるのでまさに
『空に住む』なのです。
出版社の仕事を退職した
直美の39階での生活は
読書、明日子に料理を
教えるくらいの
いわゆる悠々自適な
暮らしをしていました。
39階の部屋で
住み慣れたころに
時戸森則と出会い
「オムライス作れる?」
の一言から恋?かもと
想いながらも
逢瀬に溺れていきます。
もともとまじめな彼女も
時戸の女性関係から
「嫉妬は緑色の目を持っている怪物」
(シェイクスピアの戯曲の一編)
嫉妬を覚えるように
なるけど言い出せずにいます。
時戸はそんな想いを
知ることもなく
ただの逢瀬だけで
直美にはそれ以外の
興味を示すことは
ありませんでした。
なんとも時戸は
悪い男です。
小竹正人『空に住む』 アメリカンショートヘアのハナ
直美が中学生の頃から
飼っているのが
アメリカンショートヘア(猫)
のハナです。
ハナは両親と
うまく話せないときでも
一番仲良くなれた姉妹
のように過ごしてきた
かけがえのない存在です。
神宮外苑での
花火大会の日に
友人の美雨が遊びに来た時
にハナの鼻の脇の毛が
抜けて赤くなっている
のを発見してくれたのです。
その後、
動物病院で検査をすると
「悪性メラノーマ」
という難病に
かかっていることを知ります。
雅博おじさんの紹介で
すこやか動物病院に行き
診てもらうことになり
この病気はストレス
からくる病気で
厄介な病気だと
いうことを知ります。
その日から直美の
献身的な看病が始まり
すこやか病院にも
頻繁に通うようになります。
もうすぐ13歳の
ハナの腫瘍は大きくなり
改善することは
ありませんでした。
12月31日にハナは
穏やかに安らかに
逝ってしまいました。
ハナの存在だけが
直美をまっとうな人間
としてなり立たせてくれていて、
ハナを愛することで
自分自身を支えて
くれていたのです。
直美はまさに生きがいを
失ってしまったのです。
小竹正人『空に住む』 小早川直美
ハナを失った直美は
周りの人からの
差し伸べられた手に
甘えることができずに
抜け殻のような生活
をしていました。
それにしびれを切らした
明日子はそんな状態では
ハナだけでなく
直美の両親も不憫でならない
との言葉に
自分は1人で生きている
ような顔をして
実は常に誰かに
甘えていたのだと気づきます。
時戸とも離れた直美は
自分に纏わりついた
霧を少しずつ追い払うために
気持ちを切り替える努力を
始めようと決めたのです。
美雨の勧めもあり
彼女の経営する
オーガニックレストラン
「ビューティフルレイン」で
アルバイトを始めた直美は
忙しいけど充実感のある
毎日を送るようになりました。
「もうねえ、何はともあれ『人』なのよ。どんなにおいしいものを出してもどんなに素敵な内装にしても働いている人にやる気がなく嫌な空気を出しているとお客さんは絶対にリピーターになってくれない。どれだけいいスタッフを揃えられるかが一番重要だと思う」
と機会あるごとにいう
美雨の熱意に
感心しながらも
前向きになれている
と実感します。
直美はふと
「ハナは天国に行ったんだな」
と39階から窓の外の
果てしなく広い空を
眺めながら
そう思ったのです。
そんな彼女は今日も
空に住んでいます。
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