今回ご紹介する一冊は、
又吉直樹 著
『東京百景』です。
又吉直樹さん、
と聞いたら、
もうご存知のお笑い芸人
兼作家の又吉直樹さん
しか思いつきませんね。
その彼が書いたこの本は
100篇の「東京」に
まつわるエッセイです。
いろんな土地の名前が
載っているので、
東京在住のあなたは
「知ってる!」
と驚くかもしれませんし、
東京に住んでないあなたでも
「こんなところがあるんだ」
と考えさせられてしまう本
かもしれません。
すでに『火花』や『劇場』
で知っているあなたも
いるかもしれませんが、
その作品たちの元ネタと
なったような、
エピソードが書かれています。
明るいだけではない、
かと言って暗すぎるわけでもない、
又吉直樹さんから見る「東京」。
東京といえど、
場所によって雰囲気が違う
ところはたくさんあります。
渋谷や六本木、新宿といえば、
もっとギラギラした印象
を持っている人もいるかも
しれません。
太宰治にあこがれ続け、
人間失格を読み続ける
又吉直樹さんの
『東京百景』とは、
どんな東京だったのでしょうか。
目次
又吉直樹『東京百景』 東京とその街の人々
死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までの
フリなのだと信じるようにしている。のどが渇いてる時の方が、水は美味い。
忙しい時の方が、休日が嬉しい。苦しい人生の方が、たとえ一瞬だとしても、
誰よりも重みのある幸福を感受できると信じている。
その瞬間が来るのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。
その瞬間を逃さないために生きようと思う(九十九「昔のノート」より)芥川賞受賞作『火花』、話題の映画の原作小説『劇場』の
元となるエピソードを含む100篇のエッセイからなる又吉文学の原点的作品
『東京百景』が7年の時を超えて、待望の文庫化。
18歳で芸人になることを夢見て東京に上京し、自分の拙さを思い知らされ、
傷つき、苦しみ、後悔し、ささやかな幸福に微笑んだ青春の軌跡。
東京で夢を抱える人たちに、そして東京で夢破れ去っていく全ての人たちに
装丁を一新し、百一景と言うべき加筆を行い、新しい生命を吹き込んで届けます。
この本のタイトルから
おわかりだと思いますが、
すこし陰のある視点から
東京が書かれています。
あなたは、東京に対して
どんなイメージを持っていますか。
明るく毎日過ごしたり、
ビジネス街を想像したり、
流行の最先端を
想像するでしょうか。
この本は、そういうクールで
スタイリッシュな東京ではなく、
もっと自分たちの生活に近い、
明るいだけではない
東京の人々が書かれています。
ぼんやりとしているようだけれども、
又吉直樹さんはいろいろなこと
を感じて、
東京での生活を
送っていたことでしょう。
ほかの又吉直樹さんの作品の
元ネタになった人々も
いるかもしれません。
本を読んでいて感じたのは、
もしかしたら、
どことなくほの暗い雰囲気が、
もしかしたら東京の本当の風景
なのかもしれません……。
又吉直樹『東京百景』 すこし陰鬱な雰囲気のある関西弁
時折、セリフで又吉直樹さん自身
の関西弁が書かれていること
があるのですが、
あまり明るくしゃべっている
印象はありません。
ですが、
そこがいいと思えるのです。
東京の明るいところばかりを
取り上げたわけではないと思うと、
その関西弁がとても心地よく
感じるのです。
これがきっと標準語の
はきはきしたようなセリフだったら、
この陰のある東京にまつわる
エッセイの作品は
生まれなかったことでしょう。
また、いい意味でお笑い芸人
らしくない文学的な表現があったり、
思わず言葉の面白さに
読み進めてしまうかもしれません。
いつの間にか引き込まれて
しまうようなセリフたちが
魅力的な作品であるとも
言えますね。
ほかの本を読んでいて、
明るすぎる作品では
面白くなかったという人にも
おすすめできる1冊です。
又吉直樹『東京百景』 又吉直樹から見える東京
よくこの本で取り上げられる街は、
下北沢、高円寺、吉祥寺が
よく出てくると思います。
この3つの街は、
若者に人気のある街ですよね。
その街を、又吉直樹さんが
行っていたと思うと、
どんなお店に行って、
どんなところを歩いたんだろう
と気になりますよね。
又吉直樹さんはお笑い芸人として
デビューした当初、
おしゃれであることで有名でした。
その又吉直樹さんが、
どんなまなざしで
東京を見ていたのか。
決して明るいだけではない
東京かもしれないし、
陰鬱としていたけれども、
何もない東京ではなかったのでは
ないかと思います。
もちろん太宰治にゆかりのある、
三鷹も出てきます。
三鷹では、
太宰治が好きな又吉直樹さんには
驚きのエピソードがあり、
あなたもびっくりするかもしれません。
「死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までなどのフリなのだと信じるようにしている。」
もしかしたら、
この文章は、
東京はどこか生きづらい
雰囲気もある、
というように書いて
いるのかもしれません。
高層ビルや、
ギラギラした繁華街だけでない、
『東京百景』
ふしぎな魅力ですよね。
あなたも、
この『東京百景』を
読んだ後には、
すこし東京の見方が
変わっているかもしれません。
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