今回ご紹介する一冊は、
いとうせいこう 著
『想像ラジオ』です。
いとうせいこうの
『想像ラジオ』という本を
ご存じでしょうか。
著者のいとうせいこうは、
出版社や音楽、舞台など
幅広いメディアで活躍を
している作家さんです。
本なのに、ラジオ?と
思ったあなたもいるかもしれません。
しかし、この作品タイトルである
誰かに向けられたラジオが
作中のカギとなります。
この本は、人の思い、過去、
悲しみや、生きている喜びなど
たくさんの要素が
重なり合っている作品です。
文庫版は初版の2015年の刊行から
今に至るまで、
多くの人の感動を呼び、
そして読み続けられています。
いとうせいこう自身の
素直な文章が、読んでいるうちに
引き込まれていきます。
読後、きっとあなたは、
決して軽く扱われてはいない、
人の死について考えさせられるはずです。
目次
いとうせいこう『想像ラジオ』「DJアーク」が淡々と語る想像ラジオ
深夜二時四十六分。海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中」だけで聴こえるという、ラジオ番組のオンエアを始めたDJアーク。その理由は―東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描き出しベストセラーとなった著者代表作。 野間文芸新人賞受賞。
まず、登場人物のひとりに
DJアークという人物が、
想像ラジオと名乗り、
メッセージのようなものを
読み上げていきます。
しかし、ラジオがだれに
向けられているのか、
DJアークはなぜひとり過去のこと
を語っているのか、
序盤ではわかりません。
リスナーのひとり、
「箪笥屋のアタシ」という女性から、
アークを知っているかもしれない、
という意味深なメッセージが
送られてきて、
第一章は締めくくられます。
アークの本名も、
どこかで姿を見たかもしれない、
とも言われています。
第二章の初め
「その声が私には聴こえない。」
つまり、
アークの声を聞き取ろうと
している人物がいるのです。
では、この不思議なラジオ番組は
誰に何を投げかけているのでしょうか。
いとうせいこう『想像ラジオ』 東日本大震災と想像ラジオ
あなたは人の死を思ったり、
考えたことはありますか。
この本は、東日本大震災と
戦争に触れています。
つまり人の死について
書かれているのです。
そして、第四章では
「ある一人の亡くなった人の声にこだわってる生活なんか、早く捨てて欲しいから。」
と触れられています。
たくさん亡くなったうちのある一人、
とは言え、一人の命です。
あなたは、
人の死を忘れることはできますか?
過去のことは忘れていいことだらけ
ではないとこの本は
語っているような気がします。
家族、友人、恋人、
その人たちのことを過去に
置いていくことはできるでしょうか。
先の戦争や、東日本大震災など、
たくさんの人の死は風化されては
いけないはずです。
たくさん亡くなったうちの
ひとりを無視できるでしょうか。
この本が訴えかけたいのは、
人の死は忘れなくていい、
ということなのではないかと
解釈できるのではないかと考えます。
大切な人を亡くしたばかりの方には、
心に寄り添ってくれる本に
なるかもしれません。
いとうせいこう『想像ラジオ』 想像ラジオは私たちに語り掛けている
この作品の『想像ラジオ』という番組
および作品は誰に人の死について
考えさせているのでしょうか。
それは、人の死を思うことを、
私たちに考えさせているのだと思います。
記憶の積み重なりの中に
故人は生きている、
ということが伝えたいのではないか、
と読むこともできます。
悲しみや、生きているということ、
愛情や過去の人たちのことを
忘れてはならないということを、
アークおよび、
著者のいとうせいこうは、
この本の中に書いているのです。
よくある泣かせる文章ではありませんが、
じんわりと感動してしまうような本
ではないかと思います。
気軽に読めるけれど、
決して軽く扱われてはいない、
人の死を書いた『想像ラジオ』は、
あなたの気持ちを
揺さぶってくれるはずです。
大事な気持ちですら、
忘れさせられてしまいそうな
世の中ですから、
過去の人を思いたいときに、
読んでみてはいかがでしょうか。
いとうせいこうは、
誰の耳にでも届くはずの
想像ラジオという形で
語り掛けているのかもしれませんね。
日々の忙しさの中で、
大事な感情を忘れたくないという
あなたにぜひ読んでもらいたい1冊です。
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