今回ご紹介する一冊は、
池井戸潤 著
『ロスジェネの逆襲』
です。
著者の池井戸潤は、
1998年『果つる底なき』で
第44回江戸川乱歩賞を受賞。
2011年には『下町ロケット』で
第145回直木賞を受賞。
他にも代表作が多数あり、
多くの作品が映像化されています。
本作は半沢直樹シリーズの第三弾です。
今回初めて読むという方も
問題なく楽しめます。
前作を読んでいる方は、
より深く世界観に浸れます。
社会現象にまでなった
2013年のTBSドラマ『半沢直樹』は
最終回視聴率が40%を超え、
主人公のセリフである「倍返し」が
この年の流行語大賞に選ばれました。
今回の作品は、
バブルがはじけた後に入社した
ロスジェネ(ロストジェネレーション)と
呼ばれる世代の社員が、
半沢直樹とともに
熱い戦いを繰り広げます。
目次
池井戸潤『ロスジェネの逆襲』ぶれない精神
平成の民放連続ドラマ視聴率1位を記録、日本中を熱狂させ、社会現象を巻き起こしたドラマ「半沢直樹」。
その原作であり池井戸潤氏によるシリーズ第3弾『ロスジェネの逆襲』半沢、無念の出向!
団塊、バブル、ロスジェネ――世代を超えた男たちの熾烈な戦いがはじまる。
主人公・半沢直樹の出向先は銀行の系列子会社東京セントラル証券。業績は鳴かず飛ばず。そこにIT企業の雄、電脳雑伎集団社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだ。ところが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、親会社のエリートたちへ戦いを挑む。
子会社である東京セントラル証券に
出向した営業企画部長の半沢直樹は、
IT企業の電脳雑技集団から
同じ業界の東京スパイラルを買収したい
という案件を請けます。
しかし、その案件を親会社である
東京中央銀行に横取りされてしまいます。
そう、今回の敵は半沢がいた
銀行の人間たちです。
東京中央銀行は、様々な手を使って
東京スパイラルを買収しようとします。
けれど、半沢は立ちはだかる敵に対し
立ち向かいます。
親会社の銀行だろうと
東京セントラル証券の
利益になるのであれば、
ぶれずに突き進みます。
そんな銀行からの
出向社員である半沢の姿に、
プロパーで働くロスジェネ世代の部下、
森山雅弘も次第に心が動きます。
初めは半沢のことも、
どうせ出向社員でバブル世代だと
疎ましく思っていました。
しかし、
「結局、世代論なんて根拠がないってことさ。上が悪いと腹を立てたところで、惨めになるのは自分だけだ」
と言われ少しずつ考えを
変えていきます。
池井戸潤『ロスジェネの逆襲』ロスジェネ世代の活躍
東京スパイラルの社長、
瀬名洋介もまた
ロスジェネ世代の一人です。
瀬名と、半沢の部下である森山は
かつて中学と高校で親友でした。
瀬名が転校したあと
疎遠になっていましたが、
電話をかけ話をすることで
関係がもどります。
買収をしかけられた瀬名は
アドバイザーである太陽証券の提案で、
新株を発行し安全な第三者フォックス
という企業に引き受けてもらうという
計画で買収を阻止しようとします。
この話を聞いた半沢と森山は
情報を調べます。
結果、裏があると知り東京スパイラルの
瀬名社長とともに東京中央銀行と
戦うことを決意します。
東京中央銀行で
電脳のアドバイザリーを
務める伊佐山泰二は、
あらゆる手を尽くし徹底的に
半沢を追い詰めます。
それでも半沢は、
「そんなことは関係ない。いまオレたちがやるべきことは、東京中央銀行がいくら資金を積み上げようと、人事権を振りかざそうと、買収を阻止することじゃないのか。人事が怖くてサラリーマンが務まるか」
と一蹴します。
そして森山の奮闘もあり、
最後に決定的な情報を掴み
取締役会に乗り込みます。
今作は、半沢の「倍返し」に至るまでに
成長するロスジェネ森山の
活躍が光ります。
池井戸潤『ロスジェネの逆襲』極上のエンターテイメント
この作品は、登場人物が豊かで
一人一人の人物造形が
しっかりしています。
主人公はもちろん、
周りにも半沢直樹に負けない
個性的な面々がいます。
そしてリアルで骨太なストーリー。
展開のスリリングさが見事に合わさった
一級のエンターテイメントです。
まず企業買収という本筋が
しっかりとあります。
かつ、個々のエピソードが豊富で
本筋をさらに盛り上げます。
最後までページを繰る手が止まらず
一気読み必死です。
池井戸さんの作品は、
企業社会を舞台とした設定がリアルです。
そんな中、読者は物語を読みながら半沢や、
周りの仲間と共に戦っているような
気持ちになります。
それは、「半沢直樹」が
世間の人々にとってごく身近に
感じることができるヒーローだからです。
そのまっすぐ前に進む姿を
思わず応援したくなります。
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