今回ご紹介する一冊は、
川村元気 著
『億男』です。
「億男」の作家川村元気は小説家でもあり、
「君の名」はなどのアニメ映画の
プロデューサーでもあります。
その川村元気がはじめて2005年に
プロデュースした映画は「電車男」です。
それ以降数多くヒットを飛ばしていきます。
そんな川村元気の小説には「億男」のほかに
「世界で猫が消えたなら」
「四月になれば彼女は」
「百花」があります。
「億男」の初版は2014年ですが
私が手にしたのは「君の名は」公開後のことです。
川村元気の描く主人公の多くは
主観と客観の2つを行き来しながら
物事を考えるようにしているところから
見た目はどうしても優柔不断な人という
印象を受けます。
そもそも人とは、
優柔不断の中から答えを見出している
のかもしれません。
「億男」での主人公も少し優柔不断でありながらも
いろいろなことを訴えかけています。
実際に人生に必要なものはお金なのでしょうか。
目次
お金とは?
本屋大賞にもノミネートされた新感覚マネーエンタテインメント小説がついに文庫化
「お金と幸せの答えを教えてあげよう」。宝くじで三億円を当てた図書館司書の一男は、大富豪となった親友・九十九のもとを訪ねる。だがその直後、九十九が三億円と共に失踪。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男のお金をめぐる三十日間の冒険が始まる。川村元気さんはこの相容れない、お金と幸せをこの本で混ぜ合わせ、答えを導き出していく。それはさながら錬金術だ(
中略)知っていたはずの事の違う側面を知り、知らなかった事を深く掘り下げ知っていくその体験を通して、自分だけの答えにえり着く方法が「億男」には散りばめられている。 -解説・高橋一生
主人公の図書館司書の大倉一男は
弟の連帯保証人となり三千万円の借金を
返済するために昼間は図書館司書、
夜間はパン工場で働いていました。
借金のこともあり価値観の違いから
妻の万佐子は娘のまどかを連れて出て行って
しまったのです。
一男にとって娘が望んだ時だけでも
まどかに会えることがとても楽しみでした。
といっても、お金がないのでどことなくぎこちない感じ
になってしまうのは仕方ないようです。
そんなある日、商店街の福引券で4等の宝くじ10枚
が当たります。
娘の望みの自転車ではなく落胆していましたが、
その宝くじで3億円当選します。
突然、大金を手にすると不幸になってしまうなどの
普通の感覚ではいられないと聞いて、
どうしたものかと悩んでいた時に
親友の九十九のことを思い出します。
九十九は一男にチャップリンの言葉
「人生に必要なもの。それは勇気と想像力とほんの少しのお金さ」
と教えてくれました。
その九十九に十五年前のモロッコ旅行の時に
「お金と幸せの答えをみつけてくるよ」と言っていたこと
も思い出し、
その答えとともに3億円のことを相談しに行きます。
九十九の裏切り、消えた3億円
久しぶりに会った九十九に一男はぶしつけにも
「お金と幸せの答えを教えてよ」と尋ねた。
一男の置かれている状況を話すと
九十九は「お金は好きかい?」と尋ねます。
「お金持ちになりたいかい?
一万円札の大きさ重さを知っているかい?」
等お金のことをどんどん話す九十九に
一男は圧倒されていきます。
そこで「君はお金のことが好きじゃない。」
「むしろお金は悪者であり不幸になるとまで思っている。」
といわれる始末。
福沢諭吉の
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
は人間みな平等というのではなく
その後の文章からお金についても同じで
しっかりと学んでいないと
振り回されてしまい悲惨な末路となること
を話してくれたのです。
その後一男は、
九十九の指示通りに3億円をおろして
お金を湯水のように使うことで
一男は改めて大金を手にすることを実感しようとします。
さすがに3億円は30kgなので
持ち歩くにはかなり重かっただろうと思います。
その夜、かなり酔ってしまった一男に九十九は
「人間には自分の意思でコントロールできないものが3つある。
それは死ぬこと、恋すること、お金だ。」
と言っていました。
「お金だけはとにかく違う、今度話すよ」
と言い残して九十九は一男の三億円とともに
姿を消してしまったのです。
元仲間が教えてくれた幸せの答え
九十九が姿を消してから一男は
その行方を捜すために
元会社の同僚3人に会いに行きます。
安田十和子はお金とは無縁の
平凡な生活をしていました。
会社を売却した際に分け合ったお金には
手を付けずにそのお金に見守られながら
生活することで日常を幸せに過ごすこと
が分かり幸せだと言っていたのです。
百瀬はギャンブルが好きで、
一男と会う場所も競馬場だったのには驚きです。
百瀬は何かに賭けるということは
信用することであり、
それは素敵なことでギャンブルは
計算ではなく勘でしかないけど
それにかけてみたいというのが
幸せの答えというのは
本当に彼らしいように感じます。
貧しい人は落ちている1円玉を拾うことはない、
なぜならばお金に興味なく過ごしている
からの意見には賛成です。
九十九の友人でも会った千住は
「お金の奴隷ではなくそれを支配する側に
回ることでお金はついてくる」
そのことからも分かるように
お金と幸せの答えを千住自信も
探し続けているかのようです。
千住は一男が知っている九十九と
きっと何も変わっていないので
必ずそばにいるのでそれを信じるように
話してくれていました。
結局のところ「お金と幸せの答え」とは
一男の妻(万佐子)は借金があることで
距離を置いたのではなくお金によって
欲を失ってしまっていて、
欲は人を狂わせてしまうけど
毎日生きていくためには必要なものであること
を教えてくれたことに人間は欲なしに
生きていけないものだと思いました。
娘の発表会の帰りの電車で九十九に
「お金と幸せの答えは見つかったのか」
と問いかけられて
一男は「まだわからない」
と答えていました。
結局のところ「お金と幸せの答え」
はすぐに形を変えていき、
その答えを決めるのは自分たちだと
物語が締めくくられています。
「お金と幸せの答え」は考えないで過ごしていけば
得ることはないもので
どの世代も考え続けることが必要なのだと
教えてくれているようです。
川村元気『億男』映画版は?
川村元気『億男』は
映画化もされています。
映画プロデューサー・川村元気の同名ベストセラー小説を佐藤健&高橋一生共演、「るろうに剣心」シリーズ、「3月のライオン」の大友啓史監督のメガホンで映画化。一男役を佐藤が、九十九役を高橋が演じるほか、藤原竜也、北村一輝、沢尻エリカ、池田エライザらが顔をそろえる。脚本は「ドラゴンクエスト」シリーズの開発などで知られる渡部辰城。
佐藤健さんと高橋一生さんという、
黄金コンビが演じていて、
2018年10月19日に公開されています。
小説版とはまた違った面白さがあります。
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