今回ご紹介する一冊は、
殊能将之(しゅのうまさゆき)著
『ハサミ男』です。
『ハサミ男』は
殊能将之のデビュー作かつ代表作で、
第13回メフィスト賞を受賞した作品です。
殊能将之は作品数こそ少ないですが、
著書のうち二作品が本格ミステリ大賞に
ノミネートされるなど高い評価を受けた作家で、
言葉遊びを好んだことでも知られています。
この作品は連続猟奇殺人犯、
いわゆるシリアルキラーをテーマ
とした作品です。
シリアルキラーをテーマとした作品は
数多ありますが、この作品は一風変わっており、
なんとシリアルキラーその本人を
主人公として物語が展開されるのです。
一人称視点で物語は進行しますが、
視点の主は殺人犯。
普段ミステリー小説を読む方も、
いつもとは違った楽しみ方や印象の感じ方
ができると思います。
ミステリーのおすすめとして
しばしば語られる本書ですが、
そういった評価にも頷ける、
傑作と呼ぶにふさわしい作品です。
目次
殊能将之『ハサミ男』のあらすじ
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作! 【2005年公開映画「ハサミ男」原作】(講談社文庫)
一人称視点で展開されるこの物語の視点、
すなわち主人公こそがシリアルキラーであり、
すでに二人の女子高生を殺害しています。
遺体ののどにハサミを突き立てる
という残虐性から、
世間では「はさみ男」と恐れられるこの主人公ですが、
通信教育も手がけるアルバイト先の出版社で、
とある女子高生の個人情報に目を止めます。
そう、ハサミ男は三人目の被害者として、
樽宮由紀子という優秀な女子に目を付けたのです。
その後住所をもとに実地確認や尾行を何度か重ね、
ついにハサミ男は彼女の住む地域へと、
カバンにハサミを忍ばせて向かいます。
しかし、いくら待っても由紀子は現れません。
諦めて帰ろうとし公園を通りがかると、
誰かがうずくまっているのが目に入り、
近づいてみるとなんとそれは
由紀子の遺体だったのです。
首はビニール紐で絞められ、
ハサミが突き刺してありました。
それはまさしくハサミ男、
自らの犯行の手法です。
つまりハサミ男は、
自らの犯行を真似た他の誰かが殺害を行った場所
に出くわしたことになります。
それ以来、ハサミ男は新たな「真犯人」
を探すため奮闘することになるのです。
殊能将之『ハサミ男』の魅力
この物語の魅力は何と言っても
どんでん返しとも言えるトリックです。
もしかしたら、ミステリ小説が好きな人なら
一つ二つ気付くトリックもあるかもしれませんが、
それを遥かに上回る、
巧妙な罠がいくつもしかけられています。
例えばハサミ男の正体、例えば真犯人の真相などなど、
いたるところに読者をあっと言わせるような
仕掛けがほどこされているのです。
比較的長い作品ですが、
読んでいて飽きるということはありません。
特にラストが近づいてくると、ハラハラしながら、
そして真相に驚きながら、
ページをめくる手が震えてしまうほどです!
講談社と言えば横溝正史などを送りだした出版社ですが、
さすがは講談社主催のメフィスト賞受賞作、
驚かずにはいられない至高のストーリーです。
メフィスト賞の受賞作には他に、
森博嗣の『すべてがFになる』、
西尾維新の『クビキリサイクル』などの
名だたる作品がありますが、
それらの作品にも比肩する、
あるいはそれ以上といってもいい作品でしょう。
シリアルキラー「ハサミ男」
シリアルキラーとは冷却期間を置きつつも
複数の殺人を繰り返す、
猟奇的殺人犯のことです。
実在する人物としては、
ソ連のチカチーロなどが有名ですよね。
半年以上の間をあけ、
ハサミを用いた怪奇的な殺人を行うハサミ男
はまさにシリアルキラーの代表格です。
このハサミ男は、殺人願望だけでなく
自殺願望も持ち合わせていることが特徴で、
冒頭でもクレゾールせっけん液を用いて
自殺未遂をしています。
猟奇的殺人を犯すからには、
もちろん心に闇を抱えているわけですが、
そういった心理描写にも作者の力量
が詰まっています。
ストーリーだけでなく、
様々なところに魅力が詰まっていて、
読んでいて本当に飽きない作品です。
ミステリーが好きな人には、
是非とも読んでいただきたいと思える、
胸を張っておすすめできる作品になっています。
殊能将之『ハサミ男』映画版は?
殊能将之『ハサミ男』
は映画化もされています。
2005年3月19日に公開されました。
第13回メフィスト賞を受賞した殊能将之の異色サスペンス・ミステリーを、「人魚の伝説」「死霊の罠」の池田敏春監督が映画化。主演は「北の零年」、「レイクサイドマーダーケース」の豊川悦司と、「CASSHERN」「青い車」の麻生久美子。
トヨエツと麻生久美子が
主演を演じています。
小説版は手に汗握る展開でしたが、
映画版ではどう表現されているのか、
気になるところです。
チェックしたいと思います!
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