尾形真理子『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う』あらすじと感想!「誰かじゃなく自分のための服」

 

今回ご紹介する一冊は、

尾形真理子

『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』

です。

 

ルミネの広告から小説が生まれた―。

著者の尾形真理子さんは、

東京都出身のコピーライターです。

幼少期より人前で話すことが得意では

なかったという彼女は、

「書く」ことの方が頭の中を整理し、

物事を進めることができるということから、

ものを書く仕事を志します。

高校卒業後は、

日本大学法学部新聞学科へ入学。

2001年(株)博報堂に入社し、

2018年には(株)Tangを設立しています。

LUMINEをはじめ資生堂、Tiffany&Co.、

キリンビール等数々の企業広告を手がけており、

朝日広告賞グランプリ他、

多くの広告関連の賞を受賞しています。

その他、歌詞の提供やコラムの執筆等も

行っており、活躍の場を広げています。

本作は、そんな尾形真理子さんの小説家

としてのデビュー作です。

 

 

 

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麻のパンツで大人のわたし

 

年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる化粧品会社勤務のOL……。恋愛下手な彼女たちが訪れるのは、路地裏のセレクトショップ。不思議な魅力のオーナーと一緒に自分を変える運命の一着を探すうちに、誰もが強がりや諦めを捨て素直な気持ちと向き合っていく。「あなたといたい」と「ひとりで平気」をいったりきたりする女心を優しく励ましてくれる物語。ルミネの広告コピーから生まれた恋愛小説。

 

この物語は、様々なきっかけで

渋谷にあるセレクトショップ「Closet」

に足を運んだ女性達が、

服を選び買うことで

「気付き」や「小さな成長」

遂げていく過程が描かれています。

杉山クミは32歳の独身女性。

47歳の永瀬と10年以上付き合っています。

永瀬とは、クミが就職活動の際のOB訪問で

出会います。

何度も会ううちに恋愛関係へと

発展していくのですが、

その恋愛は幸せとは言い切れないもの、

つまり不倫関係にありました。

クミは、自分はモテない女じゃないという

自覚があるため、

自分をキレイに魅せる努力も

人並み以上にしています。

一方で不倫の苦しさも感じていたため、

永瀬と離れるために独身の男性と

付き合おうとしてきましたが、

気付けばいつも永瀬に戻ってしまいます。

ある時、お気に入りの白いカプリパンツに

代わるアイテムを「Closet」で探しますが、

試着してもどうもしっくりと来ません。

そこで、店員から勧められた白い麻のパンツ

を手にします。

クミは初め違和感がありましたが、

これまで「白いパンツに似合うわたし」

に固執していたことに気付きました。

不倫という夢のような永遠を

手に入れたつもりだったけれど、

いつまでも永瀬にとって都合のいい女でいること

から卒業することを決めたクミは、

等身大の自分を受け入れたことでしょう。

 

 

 

 

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素敵だったから恋をした

 

滝川チヒロは35歳。

10年前に婚約破棄を経験しています。

出会って半年でプロポーズをされるも、

順調に結婚準備が進んでいた最中に

彼から衝撃的なことを告げられます。

「他に子供が出来たので、結婚できない」と。

それ以来、恋愛に前を向けなかった

彼女の会社にある日、

美濃田くんという長身の男性が異動してきます。

美濃田くんは、チヒロより9つ年下の同僚です。

とても感じの良い、人なつっこい笑顔。

見た目もさることながら彼の丁寧にお礼を言う

真摯さにチヒロは心惹かれていきます。

ある休日の昼下がり、

友人に教えてもらった

セレクトショップ「Closet」へ

洋服を見に行きます。

試着室でニットを着ながら考えるのは、

美濃田くんのこと。

ニットの下に合わせるデニムとして、

チヒロは店員の着ているスカートに

惹かれました。

日曜の夜、美濃田くんと飲む日に合わせて、

店員の遊び心からペイントが施されていた

その濃いデニムのスカートを履いていこうと、

チヒロは心に決めます。

「きっとこの恋は叶わないだろうと、どこかで分かっていても、美濃田くんが最高に素敵だったことを伝えよう。」

「ジャカルタに異動してしまう彼との別れを惜しむのではなく、今まで一緒に過ごせた日々にありがとうを伝えよう。」

 

夕暮れの街で、夜空を見上げながら

チヒロはそう思ったのでした。

 

 

 

 

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試着室で広がる

 

今井カナメは、「Closet」のオーナーであり、

たった一人の店員です。

彼女には服飾の専門学校で一緒だった彼がいます。

彼が4年前に日本を出てからは月に一度、

まるでエアメールの代わりのように、

自分で作った洋服を彼女に送っています。

送られた白いワンピースを、

「Closet」の試着室で着替えてみることにしました。

「彼はどんな気持ちでこの服を作ったのだろう。白いワンピースを着た私を、今すぐ見せてあげたい。」

鏡に映る姿を前に、

カナメはふと思いました。

「この試着室で着替える女の子たちは、何を考えて誰を思いながら新しい服に着替えるのだろう」と―。

 

洋服を買う時、

「この服を着たらきっと素敵な自分になれる気がする」。

そんな高揚感を抱きながら、

試着室で着替えて自分と向き合う時間は、

似合うかどうかより

「この服を着て誰と過ごそうか」

相手に見せたい自分について

考えているような気がします。

「好きな人によく見られたい」

気持ちから一歩踏み出した時、

それは「今の自分の魅力をより引き出せる服」

出会えるチャンスなのかもしれません。

 

 

 

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