宮部みゆき『火車』小説あらすじと感想!映画版(韓国)も【多重債務の闇】

 

今回ご紹介する一冊は、

宮部みゆき

『火車』です。

 

宮部みゆきと言えば、

日本を代表する作家と

言っても過言では

ないでしょう。

 

かく言う私も、

彼女の『模倣犯』が

初めてのめりこんで

読んだ推理小説として、

今でも本屋で見ると

手に取って数ページ

めくってしまいます。

 

他にも時代小説や

ファンタジー小説など

多くを手掛けている彼女ですが、

やはり宮部みゆきの醍醐味と

言えば推理小説ですね。

 

代表作は上述の

『模倣犯』や『理由』

などですが、

今回紹介する

『火車』というのも

宮部ファンの間では

常に上位を争う人気小説です。

 

テーマは多重債務

 

推理小説ながら、

経済小説さながらの側面も

垣間見える大作ですよ。

 

 

 

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宮部みゆき『火車』あらすじ

イ・ソンギュン (出演), キム・ミニ (出演), ピョン・ヨンジュ (監督)

 

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

 

 

本小説は、

本間俊介という休職中の刑事

の視点で描かれます。

 

彼は、遠縁にあたる和也

という男性から、

彼の婚約者であった関根彰子

という女性を探してくれと

依頼を受けます。

 

和也曰く、

彰子は自己破産経験者であり、

その事を問い詰めた矢先、

彼の前から消えてしまった

というのです。

 

本間はまず、

今井事務機という関根彰子が

勤めていた会社へ行き

聴取を開始します。

 

そこで彼女の写真を初めて見ます。

 

そして次に、

彼女が自己破産に関して

相談をしに行った

弁護士事務所へ。

 

そしてこの弁護士事務所で、

物語は本格的にスタートします。

 

今井事務機でもらった

関根彰子の写真を

弁護士に見せると、

この女性は関根彰子ではない、

と言うのです。

 

関根彰子が2人いると

いうことなのか。

 

関根彰子と関係のある

職場・人間関係を洗っていくと、

どうもある人物が

関根彰子に成りすましている

という事実が

浮かび上がってきます。

 

和也が言っていた

「関根彰子」という人物も、

実は関根彰子などではなく、

別の誰かだった。。

 

ここまで読んで

私はゾクッと来ましたね。

 

想像でなんとなく思い描いていた

「関根彰子」という女性像が、

読者に向かって

あざ笑うような感じでしょうか。

 

本物の関根彰子は

なぜ自己破産したのか?

 

そして関根彰子になりすました

女性はなぜそんな事をしたのか?

 

本物と、偽物は、いまどこに?

 

これらの謎に向かって

本間は動いていきます。

 

そこには、

現代の社会問題である

消費者金融が大きく影を

落としていたのです。

 

 

 

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宮部みゆき『火車』今も昔も情報破産

 

この小説が書かれたのは、

1992年。

今から約30年前の話です。

 

しかし、描かれている問題は、

現代にも蔓延っている

社会の闇です。

 

この小説のテーマは多重債務。

 

2020年の現代においても、

消費者金融、闇金、

クレジットカード、

住宅ローンなど、

債務に苦しむ人は後

を絶たないでしょう。

 

本物の関根彰子も、

債務に苦しめられていました。

 

クレジットカードで

積もり積もった

「借金」で自己破産を

してしまったのです。

 

なぜここまで、

苦しめられているのか。

 

どこかで、

ストップがかからなかったのか。

 

この問題を、本間が訪ねた

弁護士事務所の溝口弁護士が

雄弁に語ってくれている

シーンがあります。

 

私はこのシーンが、

この小説全体を統括するテーマを

まとめて話してくれている

のだと思います。

 

一番印象深いのは、

溝口弁護士から語られた

「情報破産」という言葉ですね。

 

多重債務に苦しめられる

根本の原因は、

自分の限界を超えて

お金を使ってしまう事。

身の程知らず、

とでもいいましょうか。

 

 

なぜそうなるのか?

それは、情報の多さゆえです。

 

自分のよりも高級な服、

高級な車、高級な家。

目、耳に入れば、

欲しくなるのが人間

というものです。

 

昔は違いました。

手持ちのお金が足りなければ、

買えない。

単純な話です。

 

しかしながら、

現代は違います。

お金がなくても、

モノ・サービスは買える時代です。

 

そしてそれが、

多重債務につながっていって

しまうのです。

 

「ただ幸せになりたかっただけだった」

 

クレジットカードで

自己破産をした

本物の関根彰子が

言ったとされるこの言葉は、

多くの現代人に当てはまる

のではないでしょうか。

 

まさにその通り。

 

本人にはお金を使っている

という自覚が生まれないのが、

クレジットカードの

怖いところです。

 

 

 

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宮部みゆき『火車』衝撃?のラスト

 

推理小説のラストシーン。

真犯人を追い詰め、

その動機と今までの

カラクリ・伏線を回収していく、

 

まぁ定番だとは思います。

 

この小説『火車』ですと、

関根彰子になりすましていた女性に、

なぜそんなことをしたのか、

 

どうやって、

今本物の関根彰子は

どこにいる?

 

という問いに対する答えを

語らせるのが定石です。

 

ここで小説のラストを

言うわけにもいきませんので、

詳細は伏せますが

「もう少し読みたい!」

という声が出てしまう

終わり方でした。

 

宮部みゆき氏は元々、

真犯人をラストにだけ

登場させる小説

を書こうと思って、

『火車』を書き上げたようですね。

 

少し消化不良な感は

否めませんが、

メインテーマは

多重債務に翻弄される、

現代女性の姿です。

 

本物の関根彰子も、

そして偽物の関根彰子も、

多重債務に

苦しめられていたのです。

 

化粧の仕方よりも、

お金に関する教育をすべき。

とは溝口弁護士の言葉です。

まさにその通り。

 

30年たった今でさえ、

学校でお金に関する

教育はなされず、

多重債務に苦しむ人は

増加の一途をたどっている

と聞きます。

 

30年前よりも、

さらに情報が氾濫している

今でさえ、です。

 

この『火車』が年代を超えて

多く読まれているのも納得です。

 

 

イ・ソンギュン (出演), キム・ミニ (出演), ピョン・ヨンジュ (監督)

 

 

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