高山羽根子『首里の馬(新潮社)』芥川賞受賞作の内容あらすじと書評(感想)!沖縄が舞台

 

今回ご紹介する一冊は、

高山 羽根子(たかやま はねこ)

『首里の馬』です。

 

高山羽根子さんは富山県生まれ、

多摩美術大学卒業で、

本作『首里の馬』にて

第163回芥川龍之介賞を受賞

しました。

 

代表作には

『うどんきつねつきの』

『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』

『如何様』

『オブジェクタム』等

があります。

 

『首里の馬』

描かれている

沖縄の景色や

資料館にあるもの

についての描写は

読みながら

その背景が

浮かんでくるくらい

の巧みさを感じます。

 

 

特に宮古馬のヒコーキが

弱っているときから

元気になるまでと、

 

未名子とともに

道路などを

走り抜ける姿は

読んでいるだけでも

情景が浮かんできて、

 

挿絵がないのに

その地を創造できる

なんて贅沢な感じもします。

 

高山羽根子さんの

作品に登場する女性

はいつも母親になにかしら

苦手意識を持ちながらも

 

愛されたいと思う

裏腹な気持ち

も書かれています。

 

基本的に人間が

苦手だけど、

そんな中でも

彼女なりの生き方

が描かれている

『首里の馬』

読み解いていきます。

 

 

 

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高山羽根子『首里の馬:芥川賞受賞作』未名子

 

第163回 芥川賞受賞作
沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。

 

沖縄育ちではないものの

若いころから

民俗学を長く研究

していた順さんが手に入れた

「沖縄及島嶼資料館」で

 

未名子は資料に対応した

インデックスカードの

整理と確認を

する作業をしていました。

 

といっても、

資料館は彼女の職場ではなく、

順さんの家族でもありません。

 

父親はあまり人づきあいが

上手ではなく

自身も学校を休みがち

だった10年以上前に

未名子は順さんと

出会いました。

 

順さんの人骨、

化石などの整理作業

を学校も行かずに

みていた未名子に

 

館内に入ることを

許したことが

きっかけで手伝いを

するようになります。

 

資料館に通うように

なっても

未名子は自分の

住んでいる土地の歴史

や文化に

あまり興味を持つことは

ありませんでした。

 

それは人間と

いうものに興味が

持てないと

思い込んでいたからです。

 

彼女は以前、

那覇に多くある

オペレーターの仕事

をしていました。

 

資料館の手伝いを

しながら

転職活動をして

再就職した会社では

 

日本語を学んでいる

外国人に

クイズを出題するという

通信業務を行います。

 

人間がそんなに

得意でないと

思っている未名子でも

 

1回の通信で

25問くらいの出題と

回答をする業務で

淡々とこなす彼女には

向いているようです。

 

コミュニケーションの

得意でない

私にもしかしたら

向いているかもしれません。

 

 

 

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高山羽根子『首里の馬:芥川賞受賞作』クイズの仕事での出会い

 

クイズの仕事

(正式名称:

「孤独な業務従事者への

定期的な通信による

精神的ケアと知性の共有」)

で数人の外国人と

出会いました。

 

中でもヴァンダは

クイズを出題する人の

中でも日本語が

とても上手で

未名子が資料館の

手伝いをしていること

なども話したりしていました。

 

未名子と通信する外国人は

比較的物知りが多く

 

ポーラは

「鴨川、夜、造形の影響は

何者へ?」

の質問に「北斎?」と

答えるくらいの

つわものです。

 

出題する側の未名子が

想像する以上に

気持ちの動きがある

遊びであることを実感し

彼女自身も楽しんでいました。

 

なかでもギバノは

「シェルター」と

呼んでいるところ

に住んでいて

彼女との通信は

癒されていたようです。

 

ある日、ヴァンダの国では

内戦が起こり

通信不可能となり、

ポーラもまた通信を

閉じることとなりました。

 

ポーラは愛があっても

家族と暮らすことは

ないので

この通信は心のより

どころになっていた

ので残念な気持ちで

いっぱいです。

 

ギバノの一族は

以前豊かでしたが、

彼の国を悲しい国と考え

戦場から離れた場所

から暮らしていました。

 

けど戦争とは無縁の世界で

生きることができないと

知ったようで

ギバノとも通信

できなくなったのです。

 

この3人の出会いは

人間関係が

苦手な彼女にとっても

良い刺激になって

いたのは事実です。

 

 

 

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高山羽根子『首里の馬:芥川賞受賞作』ヒコーキ

 

台風が近づいていたある日、

未名子は仕事を早めに

切り上げて台風に備えた用事

を片付けていました。

 

しばらくすると家の外側を

びりびりと鳴らす風が

家の中に反響していました。

 

こんな夜は順さんの体調や

住んでいる古い家は

大丈夫なのか

心配になります。

 

台風が去った朝に

未名子の小さな庭

いっぱいに大きな一匹の

生き物らしき毛の塊が

うずくまっているのを

みて驚きました。

 

それが未名子にとって

大切な存在となる

宮古馬のヒコーキです。

 

台風の影響でヒコーキは

かなり弱っていたけれど

彼女は手当をする方法が

全く分かりませんでした。

 

そこで通信相手のギバノの

助言通りにヒコーキが

元気になるまでの間だけと

決めて面倒をみていました。

 

元気になったヒコーキは

故郷に帰れず

行き場もないので

未名子とともに暮らす

こととなりました。

 

始めはヒコーキになかなか

乗せてもらえなかったけど

しばらくすると

周囲の藪を

散策できるようになり

 

お互いの能力が

拡張していく

ような関係となりました。

 

そんなときに

資料館の順さんが

亡くなり

直葬を行うことと

なりました。

 

最近行われるように

なった直葬とは

告別式とかお通夜などはなく

すぐに火葬して

そこで簡単に

お祈りすること

をいいます。

 

直葬では

わざわざ喪服になる

必要もないので

より深い気持ちで

個人を偲ぶことができます。

 

私もそうですが

未名子もあまり

人との付き合いが

上手ではないけど

ヒコーキとの暮らし

をうらやましくさえ

思います。

 

 

 

 

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