【感想】相場英雄『アンダークラス』本あらすじと書評!新刊シリーズ第3弾

 

本日ご紹介する一冊は、

相場 英雄(あいば ひでお)

『アンダークラス』です。

 

この作品は

「警視庁捜査一課継続捜査班・

田川信一シリーズ」の第3弾です。

 

その第1弾はWOWOW

ドラマにもなった『震える牛』。

食品偽装を扱った社会派サスペンスでした。

 

この『アンダークラス』

同様に社会派サスペンス。

テーマにしているのは、階級社会。

 

大企業と下請け、雇用主と従業員、

先進国と途上国、さまざまな対立構造を、

時代を通して描ききっています。

 

 

考えさせられる本、

とはよく唱えられる文句ですが、

私にとって一番その文句が相応しい

と思う本でした。

 

ニュースで頻繁に見る、

外国人技能実習生の待遇問題。

 

事実とは知っていましたが、

この小説のように物語にされると

ぐっと心にくるものがあります。

 

それでは、内容を紹介していきましょう。

 

相場英雄『アンダークラス』は、

こちらからすぐに読めますよ♪↓

相場英雄『アンダークラス』 外国人技能実習生の現状


 

この無間地獄からは誰も逃れられない。

秋田県能代市で、老人施設入居者85歳の死体が近隣の水路から発見された。雪荒ぶ現場、容疑者として浮上したのは、施設で働くベトナム人アインである。

 

この小説のキーパーソンは、

アインというベトナム人技能実習生です。

 

警視庁第一強行犯捜査係の樫山順子は、

そのアインが日本で失踪したことをしり、

田川に相談を持ち掛けます。

 

藤井詩子の殺人補助容疑。

アインは、このような形で樫山に

居所を知られる結果となりました。

 

藤井詩子は、秋田県の

高齢者介護施設に入居する85歳。

 

そしてアインは、その施設で

介護職員として働いていました。

 

ある日、藤井の死体が近隣の水路で

発見されます。

殺人補助容疑で逮捕されたのは、

藤井と最も仲の良かったアイン。

 

アインは藤井に言われ、

自らが車いすを水路へ押したと自供。

自殺幇助で解決。。かと思われましたが、

田川は違いました。

 

長年の経験から、藤井の遺体写真を見て、

ただの自殺幇助ではなく、

殺人ではないかと疑いを始めます。

 

そして、その捜査で浮かび上がってくる

日本の抱える階層社会という問題。

 

勝ち組、負け組という言葉がありますが、

そんな言葉では片づけられないくらいの

深い社会問題です。

 

大企業の言いなりにならざるを得ない下請け、

更にその下の孫請け企業。

 

日本を取り巻くデフレという環境。

何もかもが安価になる最終的な犠牲者は、

従業員です。

 

その中で、最も立場が弱いのは、

外国からやってきた技能実習生たち。

 

削られる人件費。

雇わざるを得なくなる安い労働力としての

外国人技能実習生。

 

技能実習と言えば聞こえはいいですが、

要は「安い労働力」なのですね。

 

ベトナムやフィリピンからの

技能実習生の待遇問題は

よくメディアなどでも語られることですが、

その構造がうまく書き出されている

と思います。

 

ベトナム人が日本で犯罪を犯す

というニュースが多く報道されていますが、

なるほど背景にはこんな事実が

隠されているのではないかと、

考えてしまいますね。

 

 

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相場英雄『アンダークラス』 多国籍IT企業対メモ魔刑事田川

 

この物語の中で、

階層社会のトップとして

位置づけられているのが、

大手IT企業のサバンナです。

 

モデルになったのは、

アマゾンで間違いないでしょう。

 

アマゾンなどの大手通販サイトが、

安い配送費などを謳い文句に

宣伝をしていますが、

その分配送ドライバーさんのような

末端の従業員の負担が大きくなっていることは、

普段意識しないことだと思います。

 

この安価な商品の裏で、

どれくらいの人が苦しい思いを

しているのか?

値下げを求められる企業、

人件費を削られるその従業員。

 

そんな事を読後考えるようになってしまい、

安いものが周りに溢れている人にとっては、

記憶に残る一冊なのではと思いますね。

 

そしてこのサバンナにいる、

山本と中村というのが悪党です。

 

自らの保身のため、

立場の弱いものを犠牲にしていく姿勢は、

読んでいて気分のいいもの

ではありませんでした。

 

時代遅れともいえるメモ魔刑事の田川は、

アインと藤井詩子の足取りを

追っていくにつれ、

藤井詩子死亡の裏には山本の存在が

あるのではないかと追及していきます。

 

そして熱い!

まるで刑事コロンボのようでした。

 

 

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相場英雄『アンダークラス』 読後に残るのは、爽快感か罪悪感か

 

「考えさせられる本でした」

という安い言葉は

あまり使いたくはないのですが、

上述の通り読後安価な商品の裏には

どんな苦労があるのかと

ついつい考えるようになってしまいました。

 

更に、労働条件や外国人技能実習生の

待遇問題に関しても、

関心が芽生えましたね。

 

『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』

という本があります。

 

これは、最底辺の労働者の体験記

を書いたノンフィクションです。

今読んでいる最中なのですが、

ワンクリックでどれだけの人が動くのか。

 

消費者の利便性を追求した分、

アンダークラス(下級階層)の人達は

安い給料と長い労働時間で働く

ということなのです。

 

『アンダークラス』の物語は、

決してフィクションではなく、

現実にこういった階級が生み出す

悲惨な事実があるのだということです。

 

社会の見方が変わる一冊

だったと思います。

 

 

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