若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』芥川賞作品のあらすじと書評!映画化も

 

今回ご紹介する一冊は、

若竹千佐子

『おらおらでひとりいぐも』です。

 

1954年岩手県生まれの著者は、

2017年に、本作で、

小説家デビューを果たしました。

 

63才での小説家デビュー。

いつか「小説家になりたい」という

夢を温め続け、執筆開始から、

8年の時間を費やして、

生み出した作品です。

 

長年の夢を叶えた本作は、

その情熱が届き、

2018年に第158回芥川賞に輝きました。

 

2020年秋には、映画の公開も

予定されています。

 

物語の主人公は、70代半ば、

一人暮らしの桃子さん。

 

桃子さんは、ふと思います。

「人生これで、良かったのだろうか」

 

夫には、早くに先立たれてしまったし、

二人の子供たちとは、

すっかり疎遠になってしまいました。

 

ひとりでいることは、

自由なような、寂しいような。

 

懸命に生きる桃子さんの、心の葛藤が、

ジャズセッションとなって、

溢れ出します!

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』人はみんな孤独である

 

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

 

誰もいない静かな部屋では、

ネズミがたてる、

耳障りな音もありがたい。

カシャカシャ、カシャカシャ。

時には灰色の姿が動くのを、

見かけるときもある。

 

若いころとは打って変わり、

桃子さんは、

その灰色を決して退治したりはしません。

 

桃子さんが育て上げた二人の子供は

自立し、

尽くした夫は亡くなってしまいました。

 

「自分の役割はもう終わった」

その言葉に、

桃子さんの寂しさが詰まっていて、

胸がピリッと痛くなります。

〝人は独り生きていくのが基本なのだと思う。そこに緩く繋がる人間関係があればいい。〟

 

どれほど、子供や、夫に尽くしても、

ひとりになるときが来るかもしれない。

 

誰かを支えることで自分を保っていては、

支える相手がいなくなったとき、

心にポッカリ穴が空いてしまうのです。

 

やはり一度きりの自分の人生、

自分のために生きることも大切だと、

桃子さんは教えてくれます。

 

ひとりとなったら、

もう世間を気にする必要もない。

 

おらはおらにしたがって、

自分の思うように生きよう。

 

ひとりで強く生きようとする

桃子さんの決意が、

『おらおらでひとりいぐも』

なのです。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』東北弁がジャズを奏でる

 

桃子さんの、ごくありふれた日常や、

心の声で構成される物語。

 

東北弁と標準語が、交互に登場します。

 

東北弁の人間くさい温かさと、

標準語のちょっと冷めたような感じの響き。

 

昔の桃子さんと今の桃子さんを

行ったり来たり、

ちぐはぐな文章が、絶妙な心地よさです。

 

24才でふるさとを飛び出し、

「おら」を捨てて、

「わたし」という一人称に

慣れてきたはずの桃子さん。

 

それなのに、

最近のうちなる心の声は、

なぜだか東北弁ばかり。

 

ふるさとの耳慣れた言葉で、

いろんな声が繰り広げる井戸端会議は、

桃子さんの日常を、

賑やかにしてくれます。

 

物語の中では、

幼いころの桃子さんの記憶も、

登場します。

 

案外、年齢を重ねてからも、

幼いころの記憶は鮮明に

残っているのかもしれません。

 

自分が桃子さんくらいの年齢に

なったときに、

 

幼い自分をどんなふうに思い出すのか。

また、今の自分が何をしていたか、

果たして覚えているのか。

 

「おばあちゃんになった自分」は、

何を考えどう過ごしているのだろう?と、

この作品を読んで初めて妄想しました。

 

そしてこの作品には、将来、

後悔をしないための桃子さんからの

教訓も、さりげなく込められています。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』ひとりで生きる強さ

 

作中に、桃子さんの娘が、

孫をつれて家を訪れるシーンがあります。

 

桃子さんは娘を見て、

「年老いたな」と感じるのです。

 

これには、ハッとさせられました。

 

親も娘を見て、老いを感じるのは、

当たり前かもしれませんが、

ちょっとした衝撃でした。

 

桃子さんは、ひとりでいる寂しさと、

自由になりスカッとした気分の

両方を感じています。

 

人はいつでも無いものねだり。

ひとりは寂しいけど、

ひとりの時間がないのも嫌。

 

でも、年をとってからの

ひとり暮らしは、

ちょっと絶望してしまいそうになる

寂しさなのかもしれません。

 

たくましく生きようとする

桃子さんの姿が、

愛しくてたまらなくなりました。

 

どんな状況になっても、

『おらおらでひとりいぐも』

の気持ちを強く持つことで、

乗り越えていけるのかもしれない

と思いました。

 

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

おすすめの記事