伊坂幸太郎『グラスホッパー』あらすじと感想!「殺し屋シリーズ第1弾」映画版も

 

今回ご紹介する一冊は、

伊坂 幸太郎

『グラスホッパー』

です。

「殺し屋シリーズ」の第一弾の本作は、

2008年の本屋大賞を始め、

これまで様々な賞を受賞してきた著者自身が、

「今まで書いた小説のなかで一番達成感があった」

と評する作品です。

それもそのはず、2004年に出版された後、

2008年に漫画化、そして2015年に映画化と、

その評価は著者自身だけのものではないことは、

言わずもがなです。

「鈴木」「鯨」「蝉」という三人の中心人物が、

交互に語り手を務め、

それぞれの視点で物語が進んでいく形式

が目新しくとても面白いです。

それぞれの視点で進んでいくからこそ、

それぞれの登場人物の心情になって

読み進めてくことが必然で、

かつそれが絶妙なタイミングでつながり、

絡み合っていく、

そしてナレーションというほっと一息つく

部分が全くないため、

途中で読み止めるという選択肢はなく、

これも必然的に一気に最後まで

読み進めてしまうのです。

この疾走感とともに「殺し屋」という日常では

考えることのない重いテーマが、

読み終わった後の心地良い疲労感を与えてくれます。

そして読み終わった後すぐに、

漫画や映画ではどのように描かれているのだろうと

興味をそそられる、そんな作品です。

それぞれの中心人物をピックアップしながら、

唯一無二の伊坂幸太郎の世界観を

一部ご紹介いたします。

 

 

 

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【鈴木】

 

復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。
どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。
鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。
それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。
疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!

 

鈴木は、妻を殺された復讐を果たすために、

教師を辞め、

非合法な手段で金を稼ぐ謎の会社に入ります。

その会社には妻を轢き殺した犯人がいて、

鈴木は復讐の機会をうかがっていたが、

その犯人が鈴木の目の前で車に

轢かれて死んでしまいます。

そしてそれは、事故ではなく、

殺人であることが分かります。

こうして鈴木は、復讐相手を殺した

「押し屋」と呼ばれる殺し屋を

追うことになるのです。

このような衝撃的な展開から物語は始まっていきます。

そして、この後もさらに想像を絶する展開

へと進んでいくのですが、

その中でのポイントは

この鈴木の心情です。

目の前に起こる数々の出来事への一喜一憂や

不安や恐怖、そして変わらない妻への思い、

試練に立ち向かうたびに思い出される

妻が残した言葉。

物語の展開は常に想像を超えていくのですが、

鈴木の思いはなぜか他人事には思えない

身近さを感じさせるのです。

フィクションとノンフィクションを同時に

感じさせる描写は、ただただ圧巻です。

 

 

 

 

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【鯨】

 

鯨とは、身長が190㎝以上の大男だから

付けられたコードネームのようなものです。

殺し屋の一人であるのですが、

直接手を下すのではなく、

相手に語りかけ、

相手が自ら死を選ぶように仕向けていくのです。

そんな大男にも過去の負い目があり、

そして殺した人間が目の前に現れるという

幻覚症状に悩まされるようになります。

過去の苦い経験を精算し、

幻覚症状からも逃れるために、

偶然目撃した「押し屋」を殺して

終わりにしようと考えるようになり、

鈴木と同様に押し屋を追いかけるようになるのです。

こんな殺し屋でも感情があり、悩みがあるため、

読み進めていくうちにいつの間にか

殺し屋にも感情移入をしてしまっている

自分に気づかされます。

また、幻覚症状が度々起こり、

その描写もまるで映画を見ているかのように

イメージができるため、

夢と現実の世界を読み手までもが彷徨ってしまう

そんな錯覚に陥ってしまうほどです。

 

 

 

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【蝉】

 

蝉とは、うるさくてしゃべりまくるから

付けられたコードネームのようなものです。

これまた殺し屋の一人であるのですが、

鯨とは違ってナイフを使い、

自分の手で殺人を繰り返していきます。

その殺人は、すべてある男からの

「仕事」として受けてきたものでした。

ただ、蝉はいつからか自分が良いように

使われていることに不満を持ち始めるのです。

そしてあるとき、いつものように仕事として、

「鯨を殺してほしい」という依頼が来ます。

と同時にある組織が組織を挙げて

「押し屋」を探していることを知り、

自分も名を上げるチャンスだと思い、

鈴木や鯨と同様に押し屋を追いかけるように

なるのです。

著者曰く、殺し屋同士の対決を描きたいということ

で後から加わった蝉ではありますが、

この物語には欠かせない人物であること

は間違いありません。

 

 

 

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伊坂幸太郎『グラスホッパー』映画版

 

『グラスホッパー』は映画化もされています。

2015年11月7日に初公開されました。

実写化不可能と言われた複雑に絡まる見ごたえのあるストーリーは勿論、

山田涼介・生田斗真ら豪華キャストの面々にも注目が集まります。

 

実写化は想像がつかないですが、

原作を読んだ後には

ぜひ映画版も見てみたいですね。

また違った味わいがあるかもしれません。

 

 

 

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