廣嶋玲子『妖怪の子預かります (創元推理文庫)』小説あらすじと感想!シリーズ1作目「楽しい妖怪たち」

 

今回ご紹介する一冊は、

廣嶋玲子(ひろしまれいこ)

『妖怪の子預かります』です。

 

コミックとしても出版されて

人気沸騰中の

『妖怪の子預かります』小説版。

 

妖怪は、

いつの時代も年齢問わず

人々を魅了してくれますね。

 

こちらは妖怪が

大好きでたまらない、

妖怪のことを考えたり

思い描いたりするのが

何よりも好きという、

 

少々レアな趣味の持ち主とも

いえる作者の廣嶋玲子さんが、

愛情をたっぷり注いで

生み出した妖怪たちが、

 

様々な容姿と特徴を携えて

次々と登場します。

実に楽しいです。

 

本書が発行された時点では、

シリーズ化を予定していて

当時第3巻を執筆中と

書かれておりましたが、

現在はなんと第10巻まで

出されているという

大人気シリーズになりました。

 

ここからお話はどう

展開されていくのか、

この先にどんな妖怪が

どのくらい待ち受けているのか、

 

その妖怪たちによって

どんな難解な事件が巻き起こされ、

人間たちは妖怪に何を

教わっていくのか・・・

ワクワクして目が離せません。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

廣嶋玲子『妖怪の子預かります』あらすじ

 

妖怪たちがやってくる!
心あたたまるお江戸妖怪ファンタジー。

弥助は十二歳。養い親である按摩、千弥と共におんぼろ長屋暮らしをしている。貧乏ながらも平和な毎日を過ごしていたが、ある夜、いきなり恐ろしげな烏天狗にさらわれ、妖怪奉行所に連れていかれる。悪夢を見た弥助が鬱憤晴らしに割ってしまった石が、子預かり妖怪うぶめの住まいだったというのだ。妖怪の御奉行に、「罰として、新たな住まいが見つかり、うぶめが戻るまで、うぬが妖怪子預かり屋になれ」と命ぜられる弥助。それからというもの、次々と家にやってくる子妖怪達に振り回される日々が始まるが……。

 

時は江戸後期。

12歳の弥助は、盲目で

按摩の美青年・千弥を養い親に、

長屋で二人暮らしをしていました。

 

ある日、ふとしたことで

鬱憤を晴らそうと

石を割った弥助。

 

実はその石が、

子妖怪を預かる「うぶめ」の

住まいだったなど

知る由もありません。

 

しかし「うぶめ」の住まいを

奪ってしまった弥助を

妖怪たちが放って

おくはずはなく、

 

烏天狗が弥助をさらいに来た

と思ったら、

なんと妖怪奉行所に連れて

行ってしまいました。

 

そこで言い渡された罰は、

「住まいを失って行方不明になってしまった「うぶめ」の代わりに、妖怪の子を預かる仕事をせよ」

 

というものでした。

 

さあ、大変。

弥助と千弥の暮らす長屋に、

次から次へと妖怪たちが

我が子を預けに

来るようになりました。

 

最初に来たのは、梅ばあ。

預けられた梅吉は、

それはそれは大声で泣くもの

ですから

弥助も手を焼きました。

 

しかしこれは序の口。

どじょうの子を100匹も

預けられた挙句、

全員に名前をつけろ

と頼まれたり、

 

夫婦喧嘩の末、

女房に逃げられた亭主鶏が、

代わりに卵を抱いて

温めてほしい

と頼ってきたり。

 

はてさて、

どこまでこの任務は

続くのでしょうか・・・。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

廣嶋玲子『妖怪の子預かります』江戸の人情にコロナで荒んだ心が温まる

 

とにかく楽しいお話です。

まず、子どもらしくて

素直な弥助には

とても好感が持てます。

 

そして、盲目でありながら

人を寄せ付けないほどの

美貌を持つ千弥も

非常に魅力的です。

 

二人が住む長屋の大家の

ドラ息子・久蔵も

飲む打つ買うで

どうしようもない男なのに

どこか憎めませんし、

 

長屋のおかみさんたちの強くて

陽気で世話好きな様子も

微笑ましいです。

 

旦那衆も元気で威勢があり、

飛び交うお江戸言葉

は歯切れがよくて

気持ちいいです。

 

江戸後期と言えば

文化も盛んな頃。

町全体に活気があって

生き生きとしています。

 

登場する妖怪たちもまた、

そんな江戸の風情に

ピッタリのキャラ揃いで、

あやかし食らいなどを除いては、

どの妖怪も怖いというより

人情味あふれ、

そのくせからっとした

嫌味のない気性の妖怪ばかり。

 

それは、作者の廣嶋さんが

丹精込めて生み出した、

こよなく愛する妖怪たち

だからなのでしょう。

 

妖怪と弥助とのふれあいに

心温まること間違いなしです。

 

そしてもう一つ、

どうしても

見逃せないポイントは、

弥助のこしらえる食事の数々。

 

けっして豪勢な

材料ではないのに、

これこそ贅沢な料理と

思わずにいられません。

 

拾った銀杏を炒って

塩をまぶしたもの、

甘く炊いたこんにゃくやしいたけ、

醤油と酒と一緒に

炊きこんだ米を茶飯にし、

 

その上からごまを

振りかけたもの、

熱い湯豆腐とぬか漬け、

酒粕と塩とみりんで

漬け込んだ貝柱・・・

 

どうですか?

よだれが出そうでしょう?

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

廣嶋玲子『妖怪の子預かります』妖怪、恐るべし。人間以上の人間味

 

そもそも弥助が

その住まいである

石を割ってしまった

「うぶめ」とは、

 

妖怪の子どもたちを

預かるのを

生業にしていた妖怪

なのですが、

 

その母性愛というのが

ものすごく、

自分の子も他人の子もまるで

差別なく愛する、

妖怪界の母とも

いうべき存在です。

 

途中から現れた「玉雪」の

穢れのない弥助を

思う心もそうですが、

 

妖怪のくせに

こういった母というものの

愛情深さを読者に

知らしめてくるところが、

やられたな!と思います。

 

また、元は人間の十郎

という妖怪は、

弥助に聞かれて、

人間をやめて

妖怪になった経緯を

話した時

こんなことを言います。

 

「つらい時は逃げたっていいんだと、あたしは思ってます。」

 

そしてこう続けます。

「同じ出来事が起こっても、受け止められる人間もいれば、耐えきれず壊れてしまう人間もいる。壊れるくらいなら、逃げてしまったほうがいい。逃げて逃げて、またどこかで立て直せばいい。」

 

なんだか救われますね。

弥助は、長い間

忘れていたのですが、

ある日封印が解けて、

 

自分を助けるために魔物に

身を挺した実の母のこと

を思い出すと、

そのことに心を痛め、

ずっと自らを責めていました。

 

しかし妖怪たちと触れ合って

その生きざまを見ることで、

 

弥助も前向きに

生きていく決意が

できたという、

 

妖怪たちによって

いろいろなことを教えられたり

気づかされたり。

 

これが人間だと

説教がましくて

嫌にもなりますが、

 

相手が妖怪なので

重くなり過ぎず、

つい引き込まれて

いってしまうのです。

 

 

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事