『medium 霊媒探偵城塚翡翠（メディウム れいばいたんてい
じょうづかひすい）』は、
『このミステリーがすごい！』や
『本格ミステリ・ベスト１０』で堂々の一位に輝いた、
人気作家相沢沙呼（あいざわさこ）の作品です。
単行本の帯には、綾辻行人や有栖川有栖をはじめとして、
名だたる推理作家たちの絶賛の言葉が並んでいます。
ただ「霊媒探偵」という一風変わった題名に、
読むことをためらっている方もいるかもしれません。
確かに「霊媒」なんていうオカルトが使えるなら、
ストーリーが陳腐なものになってしまうのではないか、
という疑問にはうなずけます。
しかし、その内容は『2020年度No.1ミステリ』の名にふさわしい
本格推理小説になっていて、文章の精緻さからも、
作者の技量がうかがえます。
もし推理小説がお好きな方なら、
作者の技量に感嘆することは間違いありません。
絶対に楽しんでいただけると自信を持って言える一作です。
2020年本屋大賞ノミネート!
三冠 1位獲得!
「このミステリーがすごい!」2020年版国内篇
「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング
「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー
目次
相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』あらすじ
推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。
●ミステリ作家より●
ミステリ界随一の本格的な奇術家【マジシャン】でもある相沢沙呼の、巧妙にして実にイジワルな、それでいて実に胸の空【す】く一撃!/綾辻行人
この探偵のどこが凄いのかについては、読んだ人としか語り合えません。最後まで読み切った人としか……(含み笑い)。/有栖川有栖
自ら禁じ手としていた殺人事件を解禁した相沢沙呼はやはり強かった……。/青崎有吾
「全てが、伏線」の初刷帯に偽りなし。本年度の必読作です!/浅ノ宮遼
”ちょっとばかし自信をつけたミステリ作家が格の違いを思い知らされて筆を折るレベル”の傑作でした。二度言います。傑作。/井上悠宇
帯でハードルを上げまくったのは正しかったと納得。というか感嘆。これは相沢沙呼にしか書けない傑作だと思う。/芦沢央
これはまさに超力作の傑作。僕は特殊ミステリの最新形態と呼びたいです。特殊性をああ使うとは!/今村昌弘
同年輩の本格ミステリの作家として「嫉妬」を覚えるほどの作品だった、というのが最大の褒め言葉になるのではないでしょうか。/鵜林伸也
一冊の本を書くためにここまでやるか、という……。同じ作家として、その熱意を見習わなければいけないと思いました。/岡崎琢磨
この本は「叫ぶ」だけじゃない。本格だった。純粋に「ミステリとして」おもしろかった。あと翡翠ちゃんはもちろん可愛いです。/織守きょうや
読んでいる間中翻弄され倒したのが面白かったです。翡翠ちゃん可愛い!は本当のことです。/斜線堂有紀
この作品は「2、3年後に文庫化してから」ではなく今読んだ方が絶対楽しいやつです。理由は読めば分かります!/似鳥鶏
完全に掌の上で転がされました。脱帽です。 「2019年最驚のミステリ」という惹句も絶賛の声も大げさじゃない。/葉真中顕
最後まで読んで全てにやられました……。何を言っても野暮になる。相沢さんにしかお書きになれない作品です!/降田天
主人公は推理作家である香月史郎という若い男性です。
彼はその仕事柄、警察から個人的にアドバイスを求められることがあり、
それによって事件を解決に導いたりもしました。
しかし、世間で恐れられていた連続殺人鬼は、
警察ですら手掛かりを掴めないでままです。
そんなある日、香月は大学の後輩であった倉持結花の誘いで、
霊能者、城塚翡翠のもとを訪れます。
彼女は霊媒であり、不完全ながらも、死者の言葉を伝えたり、
人の気持ちを読み取ったりすることができたのです。
最初は半信半疑だった香月も、城塚の霊能としか思えない力
を目の当たりにして、次第にそれを信じるようになっていきました。
自らの能力を信じてもらえず、むしろ恐れられていた城塚にとって、
不完全な霊媒の力を推理力で補ってくれる香月は最高のパートナーでした。
そして彼ら二人は、互いに協力しあっていくつもの難事件に立ち向かい、
親交を深めていきます。
しかし、物語はそれだけでは終わりません。
連続殺人鬼の魔の手は、なんと城塚にも、密かに、
しかし確実に迫りつつあったのです。
作品の魅力
この作品の最大の魅力は、なんと言っても
最後に待ち受ける大どんでん返しでしょう。
予想を裏切られるというよりはむしろ、予想することすらできない、
といったほうが正しいかもしれないくらいです。
きっとその結末には、読む者誰もが驚かされます。
そして、その結末を知った後に表紙を見返せば、
思わずため息をつかずにはいられません。
作りこまれたストーリーに、感嘆せずにはいられないほど、
完成度の高い作品になっています。
そして、そのストーリーを肉付けする文章も、
読みやすく洗練されたものです。
とりわけ、ヒロインである城塚翡翠の描写には、
うっとりさせられることは間違いありません。
さらには登場人物たちの心理描写も巧みで、
物語の中に心を引きこまれます。
ストーリ―性、文章、そのどちらを見ても、
正に『2020年度No.1ミステリ』のそれです。
最初から最後にいたるまで、
終始作者の力量に感嘆させられてばかりでしょう。
霊媒探偵とは
この物語のヒロインである城塚翡翠は、
「霊媒」の力を使って事件を解決に導いていきます。
この物語における霊媒とは、死者の魂を降ろすイタコのようなものだったり、
人の感情を匂いのように感じとる能力だったりします。
しかし、その霊媒にも問題があります。
それは証拠能力が無いこと、つまりは、
「あなたが犯人です。なぜなら死者に聞いたからです」
とは言えないことです。
そこで威力を発揮するのが主人公である香月の推理力。
彼は城塚が霊媒によって得た情報をもとに普通ではできない
推理をめぐらせ、犯人を導いていくのです。
もしかしたら、「霊媒」などという超能力を使った小説は、
推理小説などではない、という硬派な方もいるかもしれません。
しかし、そんな人にこそ読んでほしい、むしろ読むべき作品です。
この作品は紛れもない「本格推理小説」に他なりません。
この作品は『2020年度No.1ミステリ』であるだけでなく、
推理小説の新たな時代を築くと言っても過言ではないでしょう。
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