木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』NHKドラマ化!原作あらすじと感想

 

今回ご紹介する一冊は、

木元 哉多(きもと かなた)

『閻魔堂沙羅の推理奇譚』

です。

 

中条あやみさんが

主演するドラマが、

2020年10月からNHKで

放送されることも

決まった人気作品で、

 

内容的には

ファンタジー要素もある

ミステリと言えば

いいでしょう。

 

この連作は基本、

事件に巻き込まれて、

命を落とした登場人物が

閻魔大王の執務室で

目覚めて

ファンタジー・パート

が始まります。

 

そこには大王の娘を

名乗る美少女・閻魔堂沙羅

がいて、

死者の魂を地獄と天国と

に振り分けている。

 

ここで死者が例えば

「自分を殺した犯人

を教えてくれ」

とかごねると、

 

面倒になった沙羅が

ゲームを言い出す。

 

つまりおまえは

気づいてないが、

犯人を指摘するための

情報はすべて出揃っている。

 

十分だけ時間をやるから、

自分で犯人を

指摘してみせろ。

 

もし犯人を当てられたなら、

おまえを生き返らせてやる、

 

けれど外した、

そのときは、地獄行きだ!

 

というわけで、

死者たちは、

手掛かりが

秘められてるはず

の事件の記憶を振り返り、

 

知恵を振り絞って、

十分間の生き返りゲーム

に挑むことになります。

 

殺人事件の被害者が

霊界の管理者に

泣きついて、

自らの事件を推理する

というアイデアは

作者の独創ではありませんが

(C・B・ギルフォード

「探偵作家は天国に行ける」

(「天外消失」ハヤカワ・ミステリ

2008年収録)あたりが

有名ですかね)、

 

この連作の力点は

そのあたりにはなく、

推理の過程で死者たちが

自分の人生を振り返り、

 

生き返ったあとで、

なんらかの前向きな

アクションを起こす

ところに

あるんじゃないでしょうか。

 

では個々の短編を

見ていきましょう。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 「緒方智子 17歳 女子高生 死因・絞殺」

 

☆☆【2020年秋】NHK総合よるドラにて、TVドラマ化!☆☆

謎を解けば、あなたは生き返る
――どこからでも読める珠玉のミステリシリーズ!

☆☆☆

第55回メフィスト賞、受賞作!!

「犯人がわからない? あなたは地獄行きね」

死者復活を賭けた推理ゲーム!

俺を殺した犯人は誰だ? 現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘――沙羅。赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、あるゲームを持ちかける。自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。犯人特定の鍵は、死ぬ直前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける――。

 

 

この短編の主人公は

何をやらせても

中途半端な女子高生。

 

易きに流れやすくて、

自分に甘い。

 

その夜も試験の出来を

父親に咎められて、

プチ家出をするのですが、

行き場がなく、

 

ソフトボールの部室で

夜明かしをする羽目

になります。

 

心配して

駆けつけてくれた

ボーイフレンドも、

何故かエロ本を

持っていたので、

追い返してしまう。

 

しかし真っ暗な部室の中で、

彼女は奇妙な物音に

気づきます。

それは……。

 

この直後、

彼女は殺されて

しまうのですが、お

話としては正統的な

フーダニット。

 

彼女は沙羅に

自分を殺した犯人を

教えろと迫るのですが、

 

自分で推理しろと

突っぱねられて、

ゲーム開始となります。

 

物音の原因や殺され方から、

容疑者を絞り込むこと

ができます。

 

その容疑者の中から、

殺害の状況をもっとも

よく説明することのできる

人物を彼女は

指摘するわけです。

 

そうして現世に

戻った彼女は、

少しだけ人生に

本気を出すようになって……。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 「浜本尚太 21歳 会社員 死因・凍死」

 

主人公は鶏肉専門の会社

に務める若い会社員。

 

彼はどんなときでも

嘘を吐いたり、

ごまかしたりをしない

真面目で誠実な性格

なのですが、

 

それが裏目に出るのか、

簡単にテンパってしまう、

でミスをする。

 

あまりのミスの多さに、

性格の良さから

嫌われはしていないんですが、

周囲は呆れ顔。

 

この日も発送したはずの

商品が届いてないと、

取引先から連絡があり、

 

慌てて冷凍倉庫に

駆け込んだ彼は、

商品を引き出そうと

するのですが……。

 

2作目も引き続き

フーダニット。

 

冷凍倉庫に罠を仕掛けて、

彼を狙った犯人は

誰かを推理すること

になります。

 

ちょっとした小道具

と言うか、

些細な違和感が

犯人を特定する鍵

になるあたり、

ミステリ心を刺激します。

 

でもそこより、

ドジだけれど前向きで、

応援したくなってしまう

主人公のキャラ

そのものが物語の芯です。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 「門井聡子 82歳 無職 死因・老衰」

 

今作の主人公は

思い残したことが

一つだけある、

老齢の女性です。

 

決していい人生を

送ってきたわけでは

ありません。

 

彼女が嫁いだ呉服屋の

一家は嫁など人間だと

思っていない

ろくでなしばかり。

 

散々な扱いを

受けてきましたが、

彼女はそれでも

人生を恨んだりは

しなかった。

 

暴君だった姑と夫が

相次いで亡くなってからは、

善良な養子一家や甥っ子、

 

奇妙な事件をきっかけに

知り合った青年らに

囲まれて、

 

幸せな暮らしを

っていました。

 

ただ一つの心残りは、

息苦しい家を嫌って

飛び出していった

一人息子の行方が

知れないこと。

 

そんなある夜、就寝中、

彼女に心臓は

止まってしまうのですが……。

 

今回は殺人事件

なんか起きません。

 

息子はどうなったという

老女の問に、

例によって、

ヒントはあるんだから、

自分で考えろと

沙羅は返します。

 

ですから今回は

ミステリというより、

ハートウォーミング・

ストーリーでしょうか。

 

彼女が見出した息子の真実、

それからのラストは

涙腺が弱い人はご注意を。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 「君嶋世志輝 20歳 フリーター 死因・撲殺」

 

続いての主人公は一転、

元暴走族のヘッドだった

という

巨漢のフリーターです。

 

危険上等の

ジャーナリストである

兄と二人で暮らす彼は、

こう見えても

正義漢なのですが、

 

少々腕力に頼りすぎる

傾向があって、

色々トラブル続き。

 

あるとき今は

ハッカーをしている、

暴走族時代からの

マブダチに幼馴染の少女

が売春サイトに載っている

と教えられて、

彼は焦ります。

 

しかも客は彼の兄らしい。

 

よく知ってるはずの

二人の信じられない行動に

彼はパニックに陥ります。

 

そんな折、兄から彼に

奇妙な依頼の電話が

かかります。

 

兄のものであるメモリを

あるところに届けてくれ、

と言うのです。

 

兄の様子も依頼の内容も、

あまりにおかしかったのに、

彼はのこのこと届け先の

ビルに入り込んで……。

 

今回は何が起こっていたのか、

自分で考えてみろというもの。

 

正直ミエミエの感もあって、

ミステリ的には

少々食い足りません。

 

破天荒な主人公を

全面に出したキャラもの

と思えばいいでしょうか。

 

この彼はこの後、

正義に目覚めてしまって

探偵を目指すと言う。

 

事件に対する

落とし前の付け方と言い、

いいのかなあ。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 ハートフル?

 

後半に行くほど

ミステリ色が薄れる感じは

ないでもないですが、

だからといって物語としての

魅力が落ちる感じはありません。

 

先にも書きましたが、

物語の中心は

そこにはない感じです。

 

気持ちのいい人たちの

気持ちのいい話が

読みたい人向け

かも知れません。

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事