『1日10分のしあわせ NHK国際放送が選んだ日本の名作』あらすじと感想!朝井リョウ他豪華作家陣勢揃い

 

今回ご紹介する一冊は、

アンソロジー

『1日10分のしあわせ

NHK国際放送が選んだ日本の名作』

です。

 

全世界で聴かれている

NHK WORLD-JAPAN

のラジオ番組で、

17の言語に翻訳して

朗読された作品の中から、

人気作家8名の短編を

収録したものです。

 

『1日10分のしあわせ』

という本のタイトル通り、

それぞれの短編が

10分程度で読むことができ、

 

読んだ後には心の中に

小さなしあわせが生まれる、

そんなほっこりする本です。

 

人気作家8名を紹介すると、

 

『桐島、部活やめるってよ』で、

小説すばる新人賞を

受賞した朝井リョウ

 

『池袋ウエストゲートパーク』で

オール読物推理小説新人賞を

受賞した石田衣良

 

『博士の愛した数式』

で有名な小川洋子

 

現代語訳した『源氏物語』が

最近有名になった角田光代

 

「ひきこもり探偵」シリーズで

人気のある坂木司

 

『ナイフ』『エイジ』などが

主な著書の重松清

 

歌人としても

活躍される東直子

 

『羊と鋼の森』で

有名な宮下奈都

 

名立たる人気作家が

ズラリと並ぶこの作品集は、

一気読みするという

贅沢な読み方をするも良し、

タイトル通り1日1作品ずつ

読み進めるも良し。

 

ぜひ自分の好きなスタイルで

読み進めながら

小さな幸せを味わって

いただきたいです。

 

ここでは、

私が個人的に好きな

3つの作品をご

紹介いたします。

 

 

 

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『1日10分のしあわせ』清水課長の二重線:朝井リョウ

朝井 リョウ (著), 石田 衣良 (著), 小川 洋子 (著), 角田 光代 (著), 坂木 司 (著), 重松 清 (著), 宮下 奈都 (著), 東 直子 (著)

 

几帳面な上司の秘められた過去。独り暮らしする娘に母親が贈ったもの。夫を亡くした妻が綴る日記……。
海の向こうに暮らす人々に、私たち日本人の愛すべき姿を細やかに伝えた好編が、オリジナル文庫として登場!

 

 

「ポスター、内容に特に問題はないんだけども、ここ、内線番号の数字が全角になってるよ。日付の数字は半角だから、どちらかに合わせた方がいいん
じゃないかな。」

 

そんな指摘が日常茶飯事な

細かすぎる上司の清水課長と、

「それ、どうでもよくね?」と

そんな上司を

うっとうしいと感じている

主人公の岡本の物語です。

 

岡本は入社して1年目は

希望通りの部署に

配属されたものの、

その後突然の辞令で

総務部への異動を

命じられてしまうのです。

 

それとは反対に同期の川辺は

デジタルコンテンツ事業部

という話題の部署へ

異動となり

毎日が充実した日々を

送っていて、

 

自分が遅れを

取っていると劣等感を

感じてしまうのです。

 

現実でもよくあるこのような

浮かない日常を過ごしている

主人公・岡本の心情を

事細かに描きながら、

読者の共感を

生んでいきます。

 

物語の後半では、

総務部の業務についての

描写から

清水課長の細かさの所以が分かり、

そして最後には

清水課長の自分への影響の

大きさをしみじみ

感じることになるのです。

 

普段どこにでもある

ありきたりな日常にこそ

忘れてはいけない

大切な何かを読者に

教えてくれる、

そのような心温まる

ストーリーです。

 

 

 

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『1日10分のしあわせ』鍋セット:角田光代

 

始めての上京で、

住む家を一緒に探す

母と娘の物語です。

 

「申し訳程度の台所がついた、六畳の和室。窓は木枠に擦りガラス、クロゼットなんてとんで
もない、おどろおどろしい感じのするような押入が半間。狭苦しいユニットバス。これが私の住むことになった部屋である。」

 

本来であれば、

家探しは心躍るもの

であるはずですが、

あまりの理想と現実

のギャップに

テンションが下がり、

 

母ともギクシャク

していく様子を

描いていきます。

 

母のささいな言動に

苛立ちはつのり、

仕舞いには口論となり、

 

本当は離れるのが

さみしいはずなのに

「もういいって。帰って。」と

 

思ってもいない言葉を

吐き出してしまう始末。

 

そんな言葉を受けても母は、

「鍋を用意してあげるのを

忘れてた。」

と商店街に鍋を買いに

行くのです。

 

そして、

この鍋が物語の後半で

感動を生むことになります。

 

どこの家庭にもある鍋という

身近なものであるが故に、

読者は容易に情景を

イメージすることができ、

物語の世界に

入り込むことができます。

 

母と娘の絆を描く

ストーリーは、

思わず笑みがこぼれて

しまいます。

 

 

 

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『1日10分のしあわせ』バスに乗って:重松清

 

「生まれて初めて、一人でバスに乗った。」

 

という書き出しから始まる、

人生初の一人路線バス体験

をする

小学校5年生の心情の変化を

面白おかしく描く物語です。

 

バスの到着をバス停で

待つ様子から、

目的地のバス停で降りる

様子まで

時間にすると大した長さ

の時間では

ありませんが、

 

そこには数々の

ドラマがあり、

すぐに物語の世界に

引き込まれてしまいます。

 

ドキドキの初体験を

無事に終えたその後は、

ある事情から否が応でも

路線バスに

乗り続ける日々が続き、

回数券を買う必要が

あるほどになります。

 

十一枚綴りが、二冊。

 

回数券を使っていくうちに、

もちろんバスには

慣れていくものの、

本当はもうバスに

乗りたくないのです。

 

乗りたくないというよりは、

乗らないように

なるために、

 

ある事情が

解決してほしいと

願い続けるのです。

 

この物語の最後は、

その願いが叶い、

最後の回数券を使う

日の様子が

描かれています。

 

何とも言えない切なさ、

そして微笑ましさが

胸いっぱいに広がり、

 

そこにはこの主人公の少年に

勇気づけられている

自分がいるはずです。

 

 

朝井 リョウ (著), 石田 衣良 (著), 小川 洋子 (著), 角田 光代 (著), 坂木 司 (著), 重松 清 (著), 宮下 奈都 (著), 東 直子 (著)

 

 

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