今回ご紹介する一冊は、
今野敏(こんのびん)著
『隠蔽捜査』です。
『隠蔽捜査』は、
今野敏さんが描く
警察小説シリーズです。
今回は【隠蔽捜査】シリーズの
第一弾である
『隠蔽捜査』についてご紹介します。
本作はTVドラマ化も
舞台化もされている
人気作品です。
2006年には、
『隠蔽捜査』で
第27回吉川英治文学新人賞受賞、
第59回日本推理作家協会賞候補にも
選ばれていました。
警察小説は大好きなのですが、
今野敏さんの作品をなぜか
読んでいなかったので、
今回が初めてでした。
期待通りの骨太な作品で、
あっという間に読んでしまいました!
警察小説にありがちなのが、
現場の刑事が活躍するモノですよね。
それはそれで面白いのですが、
こちらはちょっと違っていて
警察庁のキャリア官僚の活躍に
焦点を当てているんです。
キャリアも熱い思いを
持っているのね
と感じさせてくれた作品です。
警察小説好きには
ぜひオススメですよ。
目次
今野敏『隠蔽捜査』あらすじ
竜崎伸也、四十六歳、東大卒。警察庁長官官房総務課長。連続殺人事件のマスコミ対策に追われる竜崎は、衝撃の真相に気づいた。そんな折、竜崎は息子の犯罪行為を知る――。保身に走る上層部、上からの命令に苦慮する現場指揮官、混乱する捜査本部。孤立無援の男は、組織の威信を守ることができるのか? 吉川英治文学新人賞受賞の新・警察小説。
竜崎伸也。
東大法学部卒、
警察庁長官官房の総務課長。
そう、警察官僚いわゆるキャリアです。
「東大以外は大学ではない」
そう言い切る男。
まわりから変人扱いされています。
笑わない、冗談も言わない、
職場以外で人付き合いをしない。
でも嫌いになれないし、
信頼できて頼りになる人です。
息子の進路にまで、
東大以外認めない始末です。
キャリアの仕事を誇りに思い、
「エリートは国家を守るため、
身を捧げるべきだ」と
自分の掲げる信念にいつでも
まっすぐに、忠実に生きる男。
そのために、
原則や秩序や規律を守ることが
必要なのだと。
時に、まっすぐすぎて不安になる
くらいです。
白黒はっきりせずにグレー状態の
ままの方が良いこともある。
そういう考えの私は、
良い意味でスカッと
裏切られたような
気持ちになりました。
現在はマスコミ対策を担う竜崎。
そんな竜崎の幼馴染である
対照的な伊丹という男。
伊丹は警視庁の刑事部長です。
刑事部長といえば、
所轄の警察からしたら
雲の上の存在です。
そんな中、
警察組織を揺るがすほどの
連続殺人事件が
発生します。
長官官房課長の竜崎、
刑事部長の伊丹、
参事官の牛島、
刑事局長の阿久根、
刑事局捜査第一課の坂上、
マスコミの人間、
それぞれの立場でそれぞれの思惑が
ぶつかり合います。
竜崎は息子の不祥事も重なり、
キャリアという立場も
危うくなります。
連続殺人事件は
どういう形で終わるのか、
竜崎の処分はどうなるのか、
注目です。
今野敏『隠蔽捜査』警察庁と警視庁
あれ?警察庁と警視庁の違いって?
「知ってるよ!」と言われる方も
いらっしゃると思いますが、
私がよくわかっていなかったので、
これを機に警察組織の仕組みを
調べてみました。
・内閣総理大臣の所轄の下に置かれる
・警察庁(長は警察庁長官)で、都道府県警察を指揮監督する
・警察庁には長官官房と5つの局があり、
3つの部からなる内部部局と、更に3つの附属機関がある
・5つの局のうちの一つ「刑事局」では、警察庁の事務のうち、
刑事警察・犯罪鑑識・犯罪統計に関することをつかさどる
・警視庁のトップは警視総監
・都道府県には、都道府県公安委員会が置かれ、
都道府県警察を管理
・都道府県警察には、警察本部(東京都は警視庁)のほか、
警察署が置かれている
・警察署の下部機構として交番や駐在所がある
警察庁は国の行政機関であり、
内閣や政治と密接な関係が
あるということですね。
今野敏『隠蔽捜査』組織を揺るがす連続殺人事件とは
第一の被害者は、
廃工場の敷地内で殺害された
足立区30代の男。
被害者は暴力団組員であり、
殺害の手口が拳銃だったことからも
暴力団員同士の抗争かと
思われましたが、
過去にあった重要事件の
実行犯の一人であったこと
が判明しました。
それは、1980年代に足立区で起きた
誘拐・監禁・強姦・殺人・
死体遺棄事件だったのです。
凌辱だけを目的として、
集団で女子高生を誘拐・監禁した
残忍すぎる犯行でした。
犯人たちは当時は少年で、
大した罪にもなりませんでした。
第二の被害者は、
さいたま市内の潰れたスナックの
跡地で発見された30代の男。
殺害の手口はまたしても銃。
この被害者も上記と同じく
過去の事件の実行犯の一人でした。
女子高生事件の復讐かと思われましたが、
第三の被害者は、
平和島公園で鈍器による
撲殺の30代の男。
被害者は、
女子校生の事件とは
関わりがないものの、
過去にホームレスの
傷害殺人で逮捕歴が
ありました。
過去3件が起きた日付から、
竜崎は「犯人が現職の警察官」である
可能性に気づきます。
そしてついに、現職の警察官が
犯行を自供します。
警察庁の幹部と刑事部長の伊丹は、
この現職警察官による事件を
密かに迷宮入りに
しようとしていました。
「もみ消し」です。
竜崎はただ一人、
「隠蔽工作では警察の信用を守れない」
と伊丹を止めようとします。
私は正直に言うと、
「もみ消し」がキャリア官僚が
ポジションを守るために
よくある解決方法だと感じました。
ただ、竜崎のような
「正義」を貫く人を
本当は信じたい気持ちもあります。
果たして、最後に伊丹は
どういう行動を取るのか、
事件は警察のメンツのために、
もみ消されてしまうのか?
結末は『隠蔽捜査』を読んで、
確かめてみてください。
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