今回ご紹介する一冊は、
内田 英治 著
『ミッドナイトスワン』
です。
この作品は
2020年9月25日公開される映画
「ミッドナイトスワン」
に先駆けて、
内田英治監督自身が
手掛けたノベライズ作品です。
Netflix作品「全裸監督」などで
一躍脚光を浴びた内田監督。
この小説では映画だけでは
知ることのできない、
登場人物たちの
知られざる
バックグラウンド
や新エピソードが
描かれているそうで、
より作品への理解を
深めることができます。
主演は、新しい地図として
活躍する草彅剛さん。
彼が演じるのは、故郷を離れ、
新宿の
ニューハーフショークラブ
のステージに立つ、
トランスジェンダーの凪沙。
その難しい役柄を
草彅さんがどう演じるのかにも、
期待が寄せられています。
目次
内田英治『ミッドナイトスワン』 LGBTQのための物語ではない。
トランスジェンダーに芽生えた愛と母性の物語。
映画「ミッドナイトスワン」の監督がみずから書き下ろした感動の小説。故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙。
ある日、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることになる。
常に片隅に追いやられてきた凪沙は、孤独の中で生きてきた不幸なバレリーナの一果と出会い、母性の芽生えを自覚するが……。
切なくも美しい現代の愛を描く奇跡の物語。草なぎ剛主演、映画「ミッドナイトスワン」の物語を、監督みずからが小説のかたちで描いた感動作。
まず目につくのは
トランスジェンダーという
設定だともいます。
もしかしてそれだけで、
敬遠してしまう人が
いるかもしれません。
けれどこの作品は決して
LGBTQのためだけの話
ではありません。
もちろんLGBTQに対する
差別については丁寧に描かれ、
胸が痛むほどです。
トランスジェンダーとして
日本の社会で生きる事が
どれだけ辛いことなのか、
「女」や「母」になれない
という苦しみが
どんなものなのか
実感はできないけれど、
ひしひしと伝わってきます。
けれどこの作品は、
そうしたLGBTQだけが
抱えている問題ではなく
もっと多くの人が持つ
「孤独」に訴えかけてきます。
映画で凪沙を演じた草彅さんも、
インタビューで
「この作品は“人の愛、エネルギーにすごくあふれていて国境や性別を超える力があり、皆さんに楽しんでいただけると思います。難しい役ですが“変えられない運命”“逃れられない運命“の悲しみ、切なさといったものは人が誰しも抱えていると思うので、それを作品のなかで表現できたら」
と語っています。
決して少数の人たちだけに
収まらない普遍性のある
テーマが描かれています。
新宿という街で多くの人が
抱えている孤独を、
希望に変えてくれる作品です。
内田英治『ミッドナイトスワン』 希望があれば人は変われる
この作品は
トランスジェンダーの凪沙と
育児放棄にあった
親戚の娘・一果が
一緒に暮らし始めること
から話は始まります。
最初はコミュニケーションの
取れなかったふたりが、
バレエに出会ったことを
きっかけに様々な感情を
抱くようになり、
そうして物語が
展開していくのです。
彼女たちのとって
大切だったのは、
行動を起こすための
「小さな希望」
だったのでは、と思います。
一果はバレエに
出会うことにより、
踊りたいという希望を
持つようになり
凪沙もまた、
一果を守りたい、
という感情を持つ
ようになります。
孤独だったふたりが
出会うことによって、
不思議な化学反応を
起こしているのです。
この作品の中には、
他にも孤独を抱え、
一人で頑張る人が
たくさん出てきます。
その小さな希望の
きらめきを、
感じていただけたら
と思います。
内田英治『ミッドナイトスワン』 映画の見どころは
映像化にあたって
楽しみなのは、
やはり草彅剛さんが立つ
ショーパブ〈スイートピー〉
の煌びやかな舞台です。
ポスタービジュアルでは、
凪沙が働くショーパブの
楽屋でメイクを施す
草彅さんの姿が
写されています。
また
「最期の冬、母になりたいと思った。」
という意味深なコピーも
確認できます。
演技派の草彅さんが、
メイクをし、
ステージ衣装に身を包んで
踊る姿や
凪沙の揺れ動く感情を
どう表現してくれるのか、
今から楽しみです。
小説の最後には、
一果がどうなってしまったのか…?
というのが、
はっきり描かれていません。
映画でその答えがわかるのか、
それとも観客や読者の想像力
に任せるのか、
その辺りにも注目です。
個人的には映画を観てから、
小説を読むのがおすすめです。
(あくまで個人的意見です)
ぜひ映画と小説、
両方合わせて楽しんで
いただきたい一冊です。
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