今回ご紹介する一冊は、
千田 理緒(せんだ りお) 著
『五色の殺人者』です。
本作は今年2020年に発表された
第30回鮎川哲也賞を
受賞した作品です。
鮎川哲也賞と言えば、
優れたミステリ作品に
贈られる賞として有名ですね。
選考委員のミステリ作家や、
ミステリファンを唸らせる傑作として、
本作はとても話題になっています。
著者は1986年生まれの埼玉県出身。
本作がデビュー作のため
まだ情報は少ないですが、
これからどんどん活躍されそうな
注目の作家さんです。
『五色の殺人者』
というタイトルを見ただけで
とても興味をそそられますよね。
ストーリーは、
タイトルから受ける想像以上に
読みごたえがあり、
テンポの良い新鮮なミステリ作品
を読みたい方にとてもオススメです。
さっそく、
話題のミステリのあらすじや
見どころをご紹介いたします。
目次
千田理緒『五色の殺人者』 五色の犯人
なぜ犯人の服の目撃証言は、
「赤」「緑」「白」「黒」「青」と五通りなのか
食い違う目撃証言、見つからない凶器の謎。
不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる!
これぞ本格ミステリの面白さ! 第30回鮎川哲也賞受賞作介護施設・あずき荘で働く、メイこと明治瑞希はある日、利用者の撲殺死体を発見する。犯人を目撃したのは、同じく利用者である五人の老人。しかし、犯人の服色は「赤」「青」「白」「黒」「緑」と、なんとバラバラの五通りだった! 同じ部屋から目撃したのに、なぜ証言が食い違うのか? ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている相手に犯人の容疑をかけられる。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として事件解決に乗り出すことになるが……。不可解な謎が、切れ味鋭いロジックで鮮やかに解き明かされる! 選考委員の絶賛を浴びた、第30回鮎川哲也賞受賞作(応募時の作品名『誤認五色』より改題)。
主人公は介護施設あずき荘に
勤務する
25才の女性・
明治瑞希(めいじみずき)。
まだ入職して4か月の彼女は、
「メイ」の愛称で利用者から親しまれ、
充実した日々を送っていました。
そんな中、勤務中に突然起きた
利用者男性の殺人事件。
その日、宿泊のためにあずき荘を
利用した「姫じい」こと姫野一郎が、
頭を殴られて部屋で
倒れていたのです。
防犯カメラの情報から、
犯人は犯行後も施設内にいた
可能性が強いことがわかります。
5人の利用者が証言した
犯人らしき「男」の重要な目撃情報。
部屋の付近に積まれた
段ボール箱のせいで廊下は
見えづらかったのですが、
男の上半身の服の色だけを
5人が目撃していました。
しかし、5人が証言した服の色が
「赤」「緑」「青」「白」「黒」と、
見事にバラバラだったのです。
そして凶器も見つからないまま、
事件の謎は深まっていきます。
千田理緒『五色の殺人者』 メイ探偵による捜査
警察の捜査により
容疑者最有力候補に
上がったのが、
利用者の孫・藤原でした。
藤原に思いをよせるメイの
同僚女性・ハルは、
藤原の無実を証明するために、
一緒に捜査をしてほしい
とメイに依頼してきます。
そこから独自の捜査を開始した二人。
そんな中なぜか、
藤原に気に入られてしまい
徐々に彼との距離が近くなるメイ。
ハルにそのことを
伝えられないまま、
「メイ探偵!」とおだてられ、
真犯人探しを続けます。
作中の登場人物同士のやり取り
を読んでいると、
終始何かしらの「違和感」
を感じます。
親切すぎる藤原になにか
裏があるのではないかと疑ったり、
男性職員の中に真犯人が
いるのではないかと怪しんだり。
メイと同じように読者も
犯人捜しに夢中になります。
読んでいる途中の「あれ?」
という疑問を見逃さずに
推理してみると、
真犯人にたどり着ける
かもしれません。
やがてメイの独自の
捜査が進むにつれ、
そのことが真犯人に
知られてしまい・・・?
素人メイ探偵は無事に
事件を解決できるのでしょうか。
千田理緒『五色の殺人者』 ポップなミステリー
物語は介護施設が舞台なので、
メイと利用者のやり取りや、
同僚同士のおしゃべりなど、
日常生活での微笑ましい光景
が浮かぶシーンが
たくさんあります。
同時に、介護の仕事がいかに
忙しく大変かということも
作品から伝わってきて、
とても勉強になりました。
五色の犯人の服の証言は、
重度の認知症の利用者の証言
が紛れていることもあり、
信ぴょう性が低いようにも感じます。
証言者全員が自分の証言に
自信を持っているため、
この五色の謎がずっと事件の真相
をかく乱させており、
やはり謎を解くための
重要なポイントでもあります。
メイ探偵が真剣に捜査を
進めていきますので、
その点も見どころです。
ポップなだけでなく、
メイ探偵に危険や試練が訪れ、
ドキドキさせられてしまう
場面もありますので、
そのメリハリがおもしろい
ところでもあります。
ラストのちょっと意外なオチ
も見どころです。
ミステリーや小説があまり得意
ではない方でも、
気軽に読み進められる物語
だと思います。
ぜひ若くてたくましい
素人メイ探偵の活躍を、
みなさんも五色の色に
振り回されながら、
ご覧になってみてくださいね。
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