今回ご紹介する一冊は、
佐野敏哉 著
『解約新書 マーケッターに捧げる
解約の真実と処方箋』
です。
「サブスクリプション」という言葉をここ数か月、
よく聞くようになりました。
モノを持つ時代から、サービスを利用する時代へ。
必要な商品の一本釣りから、
使いたい放題の定額サービスへ。
商品やサービスの販売・利用の形が変わる中で、
マーケティングの形も変わってきています。
なにかご自身で商品・サービスを
販売されている方はもちろん
知っておいて損のない内容ですが、
サービスを利用する側としても
知っておくと賢い消費者になれる、
そんな本です。
目次
いかに使い続けてもらうか
サブスク時代のリテンションマーケティング
「解約したい」をネガティブ要素から未来のマーケティングへ。
逆転の発想で解約を防止する!近年、急速に注目を集めているサブスクリプションサービス。
継続利用しているユーザーにメリットがあまりなく、放棄(=解約・退会)されやすいといった問題も抱えています。
そこで注目されるのがLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)です。
LTVは、「一人のユーザーが生涯を通して、ある企業にもたらす利益の合計」を指します。
ユーザーのサービス利用期間をいかに長く延ばし、LTVを上げるか。そのカギを握るのが解約時の対応です。
解約希望ユーザーから最後に得た情報を活用し、利用中のユーザーが解約しないようにする対策と、今まさに解約しようとしているユーザーに働きかけて、解約を踏みとどまらせる対策が必要です。本書は、サブスクリプションサービスを提供する事業者に特化したAIを使った解約防止・分析ツールの生みの親である著者が、“解約させない"ためのリテンションマーケティングのメリットやその手法を語ります。
これまで注目されてこなかった「解約」に着眼し、新しい時代のマーケティングを示した一冊です。
いままでは「いかに買ってもらうか」が
マーケティングの主流でした。
セールスの方法やキャッチフレーズで使う言葉、
どんな媒体で宣伝するかなど
「買ってもらう」ための手法が
多くとられてきました。
ですがサブスクリプション、
つまり定額サービスがサービス提供の形
のひとつとして定着してきた今、
「いかに買ってもらうか」だけでなく
「一度使ったサービスをいかに使い続けてもらうか」
というマーケティングが新たに
必要になってきています。
せっかくサブスクリプションを
利用する人が増えても、
すぐに解約されてしまっては
提供側も利益につながらないからです。
本書では、サブスクリプションサービスを
いかに解約せず使い続けてもらうか、
その視点に絞った内容が書かれています。
具体的には著者が経営する会社で提供している
チャットボットを使うことで
いかに解約を防げているか、
またそれ以外にどのような方法やデータが
あるかが詳しく解説されています。
「チャットボットって何?」
と思われる方もいるかもしれません。
例えばあるサービスのホームページで
「よくある質問」や「お問い合わせ」といった
ページを見ていると、
LINEやFacebookメッセンジャーなどの
やりとり画面に似た小さなウィンドウが
表示されるのを見たことはありませんか?
それがまさに、チャットボットです。
実はあの小さなウィンドウが、
サービスを利用するお客様に
「解約させない」秘密を
持っているのだそうです。
「みんな同じ」から「ひとりひとり」へ
何かサービスに不満があるとき、
あるいは気になることがあるときに、
チャットボットは活躍します。
「解約したい」「プランを変更したい」といった
要望をぶつけると、その理由を聞いてきます。
「あまり活用できていないから」
「値段が高いから」など回答すると、
あまり知られていない活用方法を教えてくれたり、
プラン変更にあたり一番得する方法を
案内してくれたりします。
以前、まだサブスクリプションサービスの形
があまり一般的でなかったころは、
買って終わり、売って終わりで
フォローが今ほど手厚くありませんでした。
リピート購入がなかった場合に
どんな所に問題があったかをサービス提供側も
細かく把握できず
「あまり必要とされなかったのだろう」
「値段が高かったのだろう」
と原因をひとくくりにしていました。
ところが今ではチャットボットを活用することで、
サービス提供側は個人個人の解約理由を
把握できるようになりました。
逆にサービス購入側も不満や不安をぶつけることができ、
その内容にあったフォローを
個別に受けることができます。
「ひとりひとり」に向き合ってくれる、
そんな企業なら、ちょっと利用してみたい。
そんな風に思ってサービスを
選ぶことってありますよね。
「みんな同じ」の対応ではなく、
「ひとりひとり」のニーズに合った対応
をしてもらえる、
そんなことがチャットボットにより
可能になったようです。
不満があるなら利用者側はどんどん解約すべき
いまどきのサブスクリプションの多くは、
使い始めが一番安くなるように設計されています。
初月無料とか、初回はおまけがついてくるとか、
そういう形でお得感を感じさせ、
契約を誘ってきます。
安くしても、サービスを使い続けてもらえれば
充分に取り戻せるような金額設定
になっているからです。
逆を言えば、サービスを使い続けてもらわないと
提供側としては初回に安くした分が回収できないため、
赤字になってしまいます。
ですから、利用者から解約したいと言われれば
「続けてもらうために出来ることはやろう」
となるでしょうし、
それでも解約する人が多くなれば
「原因を追及し解決して、
続けてくれる人が多くなるような
サービスにしていこう」となるでしょう。
解約をしたい、と提供側に伝えることは、
サービスがもっと良くなるための
重要なきっかけになる、とこの本から分かります。
不当な要求をするのは良くありませんが、
もっと改善してほしいこと、
使いづらいと感じたことがあればどんどん伝え、
より良いサービスにしていってもらうことが、
サービスの利用者側にとっても、
提供者側にとっても、
どちらにも良いことなのでは、と感じました。
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