どんよりとした灰色の雲の隙間から、
落ち続ける雨粒。
梅雨の時期がやってきましたね。
しかも今年はコロナで自粛生活でもあり・・
そんな憂鬱なときは、
家で思いっきり読書に耽りましょう!!
「雨」にまつわる小説は、
雨の日にしか読んではいけないなんて、
「雨しばり」のルールを作ったりしたら
楽しくなりそう。
「雨」がテーマのおすすめ小説を5作品
厳選して集めてみました。
しとしとと降る雨音をBGMに読書するのに、
ピッタリな作品ばかりです。
目次
『羅生門』(著者:芥川龍之介)
平安時代、度重なる災害や飢饉で荒れた京都
が舞台の短編小説です。
主人公は下人の男です。
数日前、仕えていた家の主人に解雇されていました。
雨が降る夜、下人は羅生門に行きつき、
死体の髪を抜く老婆と出会います。
「餓死するか、罪を犯してでも生き延びるか」
二択を迫られる男の心理描写が真に迫っています。
雨の夜に舞台を設定していることもあって、
老婆と男が向き合うシーンには迫力があります。
短いので、さくっと読めるところもおすすめです。
京の都が、天災や飢饉でさびれすさんでいた頃。荒れはてた羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を、一本一本とひきぬいている老婆を目撃した男が、生きのびる道を見つける『羅生門』
大正三年から五年の作品を集める。表題作の他、「老年」「青年と死」「ひょっとこ」「仙人」「孤独地獄」「父」「虱」「酒虫」「野呂松人形」「猿」「手巾」「煙草と悪魔」「煙管」等を収録
『さよなら妖精』(著者:米澤穂信)
4人の高校生と、
ユーゴスラビアから来た少女・マーヤとの
交流を描いた青春ミステリーです。
「マーヤはユーゴスラビアのどこに帰ったのか?」
について、
過去を回想しつつ推理していきます。
主人公の守屋とマーヤが出会ったのは、
1991年4月の雨の日のことでした。
潰れた写真館の屋根の下で、
行くところのないマーヤは雨宿り
をしていたのです。
守屋たちの街にとどまったマーヤは、
彼らと交流しながら「日常の謎」を
解き明かしていきます。
殺人や犯罪が苦手な方でも、
構えずに読めるミステリーです。
1991年4月、雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。米澤穂信、デビュー15周年記念刊行。初期の大きな、そして力強い一歩となった青春ミステリの金字塔を再び。
『雨』(著者:サマセット・モーム)
キリスト教の布教に情熱を燃やす
宣教師の物語です。
宣教師を乗せた船は、
目的地に向かう途中で南洋の島に上陸します。
彼らが乗る船に疫病にかかった乗組員がおり、
その検疫のためでした。
同じ船に、ミス・トムソンという娼婦のような
女性が乗っていました。
宣教師は、彼女を教化しようとしますが……。
作中では、ずっと雨が降り続いています。
蚊帳を張らなければ眠れない夜、
ぬかるんだ地面などの描写から、
南の島のじめじめとした空気が伝わってきます。
重々しい気候のなかで、
人間の狂気に迫る短編作品です。
太平洋に浮かぶ島で、止まない雨が招いた不可解な出来事――。
短篇小説家としてのモームのあらゆる特徴を集約的に結晶させた一冊。
世界文学史上に永久に残る名作短篇「雨」を収録。狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」のほか、浪漫的なムードとシニックな結末で読者を魅了する恋愛小説「赤毛」など、南海を舞台にした短篇3編を収録。
『私の男』(著者:桜庭一樹)
「私の男」は、
印象的な一文から始まります。
私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。
(桜庭一樹「私の男」文春文庫)
主人公は腐野花という女性です。
「私の男」こと腐野淳吾は、
災害をきっかけに花の養父となりますが、
2人は男女の仲でもあります。
この小説は、
物語が進むにつれて過去へと遡っていきます。
最初の章は、花の結婚前夜を描いています。
淳吾の体臭についての
「降りつづく雨のような湿った匂い」
という描写も想像をかきたてます。
耽美な世界観が好きな方におすすめです。
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く。
浅野忠信、二階堂ふみ主演で映画化。
『たけくらべ』(著者:樋口一葉)
遊女になる運命を背負った少女・美登利
と僧侶の息子・信如を中心に、
明治時代の下町の子どもたちを描いた短編です。
美登利が信如に対して淡い恋心を抱いている様子
が鮮やかに描かれた場面があります。
雨の中、信如が下駄の鼻緒を切ってしまいます。
それはちょうど美登利の家の前でした。
誰かが鼻緒を切ったと気づいた美登利は、
赤いきれを持って外に飛び出します。
しかし、相手が信如とわかると足を止め、
きれを門の外に放って引き返すのです。
雨の降る往来に残された赤いきれが、
美登利の恋心を象徴するようで印象的です。
樋口一葉の文章は現代とかなり違うので、
ハードルが高く思えるかもしれませんが、
一度は挑戦したい名作です。
好きだけど、言いだせない…。恋を知りそめた美しい少女・美登利のはかない想いを、浅草の風物をおりまぜて流麗に描く名作他2編。
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