太田愛『犯罪者』感想とあらすじ!シリーズ化「スリル満点の疾走感が面白すぎた」

 

今回ご紹介する一冊は、

太田 愛

『犯罪者』です。

 

太田愛さんは1997年より、

テレビドラマや映画の脚本家

として活躍されています。

『ウルトラマン』シリーズや、

『相棒シリーズ』『TRICK2』など、

人気作の脚本を手掛けています。

そして2012年に小説家デビュー

を果たしました。

今回ご紹介する『犯罪者』が、

そのデビュー作にあたります。

作品は上・下巻に分かれており、

文庫本で上巻525ページ、

下巻449ページの読み応え抜群の長編小説です。

1964年生まれの著者は、高校生の頃から、

小説を書き始めました。

脚本家としてデビューしてからも、

小説を少しずつ書き続けていたそうです。

脚本家が手がける小説とあって、

物語が非常に精巧に組み立てられており、

テンポよく場面が切り替わっていきます。

作品の冒頭から、物語の中に引きずり込まれ、

勢いのまま読み切ってしまいました。

「おもしろい!」と声をあげて言いたくなるほど、

とても完成度の高い小説です。

作品のあらすじと魅力を、

お伝えさせていただきます。

 

 

 

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太田愛『犯罪者』あと10日生き延びれば助かる

 

白昼の駅前広場で4人が刺殺される通り魔事件が発生。犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う。

 

18才の建設作業員・修司は、

クラブで出会った美女・亜蓮(あれん)に

呼び出され、

自宅近くの駅前広場へと向かいます。

しかし、亜蓮は、約束の午後2時を

過ぎても姿を現しません。

修司と同様に、広場の噴水近くで、

誰かを待っていたと思われる4人の男女。

そこに突然、

全身黒ずくめのダース・ベイダー

のような男が現れ、

次々と4人を刃物で襲っていきます。

そして、男は修司にも襲いかかるのです。

黒いヘルメットで顔の見えない犯人に、

必死の抵抗をみせ、なんとか助かった修司。

修司は、白昼に起きた通り魔事件の、

唯一の生き残りとなります。

事件後に搬送された病院で、

修司は、突然現れた見知らぬ男から、

こう告げられます。

「できるだけ遠くへ逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」

 

生き残り、安心したのも束の間、

修司は、再び命を狙われるようになるのです。

果たして、駅前広場での事件は

本当に通り魔事件だったのか?

犯人は捕まっているのに、

修司が狙われる理由とは?

病院で会った男は、

報道されていないはずの修司の顔を、

なぜ知っていたのか?

修司は、事件を担当した

刑事・相馬に助けられ、

多くの謎を抱えながら、

暗殺者から身を隠し逃げ

続けることになります。

相馬の友人でフリーライターの

鑓水(やりみず)

にも協力してもらい、

通り魔事件の裏に隠された事件の真相を、

命がけで探り始めます。

 

 

 

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善と悪の闘い

 

物語は、実に多くの人物の視点から、

描かれています。

修司たち3人だけでなく、

大企業の社員や政治家、テレビ業界スタッフ、

民間人まで、事件に隠された真相を

握る人物たちが登場し、

事件を解き明かすためのヒント

が綴られていきます。

展開は非常にスピーディで、

なおかつスリル満点です。

どこまでも追ってくる暗殺者の存在に、

手に汗握って、心臓がもちません。

まるでテレビドラマを見ているときのような、

臨場感に満ち溢れています。

社会は善意と悪意でまわっている。

事件と深い関りをもつのは、

世間を震撼させるような

企業の大スキャンダルです。

悪を白日の下にさらそうとする善意と、

それを阻止して、抹殺しようとする悪意。

最後に勝つのはいったい、どちらなのか。

そして修司は、問題の10日間を、

無事に生き延びることができるのでしょうか。

スリリングなドラマから目が離せないような感覚で、

本のページをめくる手を、

止めることができなくなります。

 

 

 

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冷静でかつ大胆な登場人物たち

 

物語を支えているのは、

修司たちが持つ冷静さと大胆さです。

追い詰められた状況で、

相馬や鑓水とともに、

あらゆる角度から事件を冷静に分析していきます。

そして、闘うと決めたら、

少し無謀とも思えるくらいの大胆な行動で、

事件の核心に辿り着こうとします。

修司は人間観察力が高く、

通り魔事件のときの犯人の様子も、

はっきりと記憶しています。

詳細を取り乱さずに相馬に語る様子は、

とても18才とは思えません。

相馬は、警察組織の方針に従わず、

物事の本質を見て突き進むタイプです。

警察の中では浮いていて、

つねに一人で捜査をしている珍しい刑事です。

大きな力にのまれずに、正しいものを信じる姿は、

読者の視点から見ると、

とても好感をもてるキャラクターです。

鑓水は、人とは違った視点から物事を捉える力があり、

修司や相馬が気づかない点を、

カバーしてくれる頼もしい存在です。

自分たちの命を危険にさらしながら、

迷うことなく闘い続ける主要な登場人物たち。

読み終わるころには、間違いなく、

彼らのファンになっていることでしょう。

 

 

 

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〝犯罪者〟は誰なのか

 

小説のタイトルにもなっている

〝犯罪者〟

この物語における〝犯罪者〟は、

捉え方によって、数えきれないほど存在します。

犯罪が、別の犯罪を生み、

犯罪を隠すために、また犯罪が起きる。

物語が進むにつれて現れる、

止まることのない犯罪の連鎖に、

驚愕させられます。

自分のための犯罪と誰かのための犯罪

犯罪には変わりないものの、

つい味方してしまいたくなる犯罪者も

存在するのが、

この小説のもつ不思議な魅力です。

事件の裏には、

ある人物が守り続けた〝一つの目的〟

が隠されています。

最後の最後まで不穏な空気を漂わせる

著者からの仕掛けによって、

ホッと一息つける瞬間のない、

ドキドキの読書の時間になると思います。

この作品はシリーズ化していますので、

ぜひ沢山の方に読んでいただき、

登場人物たちの虜になっていただきたいです。

 

 

 

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