宮本輝『灯台からの響き(集英社)』あらすじと感想!新刊おすすめ作品

 

今回ご紹介する一冊は

宮本 輝(みやもと てる) 著

『灯台からの響き』

です。

 

太宰治賞、芥川賞をはじめ

様々な章を総なめにしてきた

宮本輝さんが、

地方紙連載として執筆した

人気作品です。

 

キャッチーというよりも

丁寧な描写を得意とする

著者の作品ということで、

秋の夜長にじっくり読むのに

お勧めの作品です。

 

 

 

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宮本輝『灯台からの響き』 死をきっかけに思い出されるエピソード

 

板橋の商店街で父の代から続く中華そば店を営む康平は、一緒に店を切り盛りしてきた妻を急病で失って長い間休業していた。ある日、分厚い本の間から妻宛ての古いはがきを見つける。30年前の日付が記されたはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。差出人は大学生の小坂真砂雄。記憶をたどるうちに、当時30歳だった妻が「見知らぬ人からはがきが届いた」と言っていたことを思い出す。なぜ妻はこれを大事にとっていたのか、そしてなぜ康平の蔵書に挟んでおいたのか。妻の知られざる過去を探して、康平は旅に出る――。市井の人々の姿を通じて、人生の尊さを伝える傑作長編。

 

 

主人公は妻とともに、

板橋の商店街にてラーメン屋を

経営していました。

 

いつも二人三脚でやっていたため、

妻が亡くなったタイミングで

ラーメン屋を閉店。

 

その後は特に働くこともなく、

趣味の読書にいそしみながら

日々を過ごしていました。

 

そんなある日、

以前に買ったものの

読めていなかった分厚い本を

やっと読もうと手に取ったところ、

1枚のはがきが挟んであること

に気付きます。

 

それは約30年前、

妻に宛てて送られた便りでした。

 

主人公はそのはがきが

自分たちの手元に送られてきた時の

エピソードを思い出します。

 

そして、なぜこの本に

このはがきが挟まっているのか、

きっとやったのは妻に違いないが、

なぜ彼女はこの本にこのはがきを

わざわざ挟んだのかと

思考を巡らせます。

 

ラーメン屋を辞めてから、

本を読む以外に特になにも

していなかった主人公は、

ふと自分が灯台好きだったことを思い出し、

実際に灯台を見に行く旅に出かけます。

 

他にも自分が本当は好きだったこと

を思い出したり、

なかなかコミュニケーションの機会

がなかった息子・娘たちと

一緒に過ごす時間が増えたりと、

灯台めぐりを初めてから

自分自身が変化していくこと

を感じます。

 

亡くなった妻が遺していった1枚のはがき。

 

本来の自分を取り戻しつつある主人公は、

やがてこの秘密にも積極的に

取り組むようになります。

 

すべての謎がとけたとき、

主人公は妻のメッセージを理解し、

また明日から前向きに生きていこう

と動き出します。

 

 

 

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宮本輝『灯台からの響き』 自分探しに遅すぎることはない

 

よく「自分探し」というワードを聞きます。

 

主に10~20代の若者、

いわゆる「ピーターパン・シンドローム」

という言葉が使われるような年代で

言われるワードです。

 

自分の使命とは何か、自分には何が出来て、

何が向いているのだろうかと

自分と向き合い考えることを言います。

 

進路に悩む高校生、

社会デビューを控えた大学生、

そして働くことの意義を考える

新人社会人が

「自分探し」をするとなると、

周りの大人はきっと

応援してくれるでしょう。

 

でも本作品の主人公のような、

イイ年した大人が「自分探し」を

していると聞くと、

周りの人たちは

「いまさら?」

「もう若くないんだから」

といった反応を

みせることがほとんどです。

 

ストーリーの中で主人公は、

本を読んだり灯台めぐりを

したりする中で

「自分探し」をしています。

 

商店街の仲間も、娘や息子たちも、

そんな主人公を少し不思議な目

で見ています。

 

ですが読んでいる私としては

「自分探しはいつ始めても

遅すぎることはないんだな」

と感じました。

 

特に無我夢中で働いてきた人や、

一生懸命育ててきた子供が

自分の手を離れてきた人など、

 

若いころに「自分探し」を

充分にできなかった人もいるでしょう。

 

そういう人こそ、

今からでも「自分探し」してみると

良いのかな、と思いました。

 

 

 

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宮本輝『灯台からの響き』 メッセージが少し難しいかも

 

主人公の奥様が主人公に遺した

メッセージもそうですし、

主人公が「自分探し」をしていく中で

気付く様々なこともそうですが、

解釈が少し難しいものもあるなと

読んでいて感じました。

 

こじつけに近いと感じるようなもの

もありますし、

ちょっと飛躍してしまっている

ところもありました。

 

これは言い換えれば、

読み手によって様々な

受け取り方ができる、

とも言えると思います。

 

バックグラウンドが違えば、

同じ事象に出会っても

感じることが違います。

 

本作品を読んで主人公が

受け取ったメッセージに

「ちょっと違うんのでは?」

と思ったなら、

自分自身はどういうメッセージ

として受け取れるかを

考えてみてもおもしろいかな、

と感じました。

 

メッセージが難しい分、

初めて読んだときは

読み終わってみて

微妙に釈然としない感じがありました。

 

ですが受け取り方は様々と思うと

もう一度読みたくなるし、

だんだん前向きになっていく主人公を

応援したくなっていくのが

不思議な感じでした。

 

 

 

 

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