畠中恵(はたけなかめぐみ)
『しゃばけ』
~あやかしとともに江戸を楽しむ~
畠中恵(はたけなかめぐみ)氏は1959年生まれ、
漫画家としてデビューし
2001年には「しゃばけ」が
日本ファンタジーノベル大賞で優秀賞を受賞しました。
それから「しゃばけシリーズ」として
現在でも新刊が発売され人気シリーズとなっています。
その他に「まんまことシリーズ」
「つくもがみシリーズ」「若様組シリーズ」
も人気があり、
時代ものだけではなく「百万の手」
「アコギなのかリッパなのか」
といった現代ものも書いています。
「しゃばけシリーズ」は映像化や舞台化もされており、
人気アイドルが主人公を演じたりしているので
知る人も多いのではないでしょうか。
あやかしと人間が繰り広げる世界は優しく、
時にはほろ苦く、切なく描かれています。
目次
みずからの運命を知り立ち向かう
畠中恵『しゃばけシリーズ1』「しゃばけ」
今は一太郎が決めなければならない時なのだ。
大店の若だんな一太郎は、めっぽう体が弱い。なのに猟奇事件に巻き込まれ、仲間の妖怪と解決に乗り出すことに。大江戸人情捕物帖。
江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う……。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。
畠中恵『しゃばけシリーズ2』「ぬしさまへ」
きょうも元気に(?)寝込んでいる、若だんな一太郎の周囲には妖怪がいっぱい。
おまけに難事件もめいっぱい。
幼なじみの栄吉の饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が聞こえたり……。
でも、こんなときこそ冴える若だんなの名推理。
ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。
ついでに手代の仁吉の意外な想い人まで発覚して、シリーズ第二弾、ますます快調。【シリーズご案内】
お江戸は日本橋。大店・長崎屋の一人息子である若だんなこと一太郎には秘密があった。
大妖の血を引く彼には、鳴家や猫又といった妖(あやかし)が見えるのだ。
しかも若だんなを支える手代、仁吉と佐助も、その正体は人ではなく妖なのである!
そんな病弱だけど、心優しく頭のきれる若だんなが、妖たちとともにお江戸の難事件を解決。
読めば気持ちがほっこりすること間違いなし、累計840万部突破の人気シリーズ「しゃばけ」の世界へようこそ!
シリーズ1巻目「しゃばけ」の舞台は江戸。
江戸の夜、闇の中から物語は始まります。
ひとり夜の町を歩く若旦那の一太郎。
この主人公の若旦那はとても体が弱く、
すぐに寝込んでしまいます。
そんな若旦那が夜道を歩いていると
付喪神の鈴彦姫から声をかけられます。
声をかけられたのも束の間、
今度は不気味な男に追いかけられることになります。
ふらり火に助けを求めて危機一髪助かりますが、
その日を境に若旦那の周りでは血なまぐさい事件
が起こり始めます。
若旦那は小さい頃からあやかしを視ることができ、
いつも傍で若旦那のお世話をしてくれている
「仁吉」「佐吉」という手代ふたりも、
一見人間に見えますが実はあやかしです。
その他にもたくさんのあやかしが
若旦那の離れを訪れています。
なぜ若旦那は不気味な男に襲われることになったのか、
殺人事件が起こるのか、
外出が難しい若旦那はあやかしたちに協力をもとめて、
事件の真相に迫っていきます。
真相を探るうちに若旦那は自らの秘密を知ることになり、
究極の選択を迫られることになります。
悩みぬいて出した若旦那の選択は
とても切ないものですが、
決断をして立ち向かう若旦那は、
体は弱いけれど心はとても強いことを教えてくれます。
難事件をあやかしたちとともに解決する
「にきちさくしへ・・・・」
大熱を出して寝込んで、
床上げもままならない若旦那が
たいくつしのぎに読んでいる文(ふみ)の言葉から
シリーズ2巻目「ぬしさまへ」は始まります。
この文は現代でいうとクールなイケメン「仁吉」が
もらった恋文です。
この文が事件を起こし、
若旦那とあやかしは事件に挑みます。
他にも若旦那の幼馴染が作ったまんじゅうを
食べたご隠居が死んでしまう事件や、
新品の布団から鳴き声が聞こえるなど
不思議なことが起こります。
仁吉の恋の話も書かれていてドキドキ・ワクワク
しながら聞いている若旦那がとてもほほえましく感じます。
千年という長い月日で語られる恋物語の結末は、
仁吉の恋のお相手は誰なのか最後まで目が離せません。
魅力的な登場人物とともに江戸を楽しむ
1巻「しゃばけ」2巻「ぬしさまへ」の登場人物は
人間とあやかしです。
イラストも相まってとても可愛らしい小鬼や屏風のぞき、
クールなイケメンの仁吉、力自慢で男らしい佐吉、
若旦那の幼馴染の栄吉、若旦那に甘々な両親、
祖母、日限の親分など魅力的なキャラクターが
若旦那の周りにはたくさんいます。
あやかしの感覚は人間とはずれていて、
笑ってしまいますが、
若旦那の両親の親バカっぷりも含めて
すべての登場人物がほほえましく、
身近に感じることができます。
事件の結末やいたるまでの原因は切なく、
つらいこともありますが、
若旦那はあやかしの協力を得ながらまっすぐに向き合い
解決していきます。
その姿はとても凛々しく力強く感じます。
「娑婆気(しゃばけ)とは俗世間における名誉、利得など様々な欲望にとらわれる心」
その意味を確かめるために
「しゃばけワールド」に足を踏み入れて
みてはいかがでしょうか。
そこには若旦那をはじめ
魅力的な人たちやあやかしたちと、
楽しくてちょっぴり切ない時間と
江戸の町が待っています。