今回ご紹介する一冊は、
秋川 滝美(あきかわ たきみ) 著
『向日葵のある台所』
です。
秋川滝美は元々ウェブ小説サイト
に小説作品を投稿しており、
その作品が出版されて
デビューした作家さんです。
作品のなかでは
『居酒屋ぼったくり』は
コミカライズされた上に
ドラマ化もされており、
笑いあり涙ありの
あたたかいストーリーが
人気を博しました。
作者自身が料理が好きなようで、
料理に関する物語を多く書かれており、
また恋愛要素を含んだ作品
が多いことも特徴です。
しかし、
この『向日葵のある台所』は
そんな作品たちとは一線を画した
内容になっています。
作中で料理が大きな役割を
果たすのは変わっていませんが、
この小説が描くのは親子の確執
という少々重い問題です。
しかし、一人の女性の家族との
かかわりを描いているため、
多くの人が共感できる物語
になっている上に、
ハートウォーミングな物語
であることは変わりありません。
つい先日文庫化されていますので、
ぜひこの機会にお手に
とってみてください。
目次
秋川滝美『向日葵のある台所』 のあらすじ
折り合いの悪い母との生活で垣間見えた、一筋の光とは――。
森園麻有子(46歳)は、中学2年生の葵と二人暮らし。ある日、自分勝手な姉から、倒れた母を引き取って欲しいと電話があった。実家と折り合いが悪く、極力関わらないようにしてきたのに――。不安が募る中、疎遠な状態だった母親との生活が始まる。唯一の救いは、自分の味方である葵が、祖母の扱いが上手なこと。しかし、目をそらしたい現実はすぐそこにあって……。肉親だからこそ許せなかった過去に、麻有子は決着をつけられるのか。
森園麻有子というシングルマザー
がこの物語の主人公です。
彼女は美術館に学芸員として勤めており、
中学二年生の娘、
葵と仲睦まじく暮らしています。
しかし、姉や母といった家族とは
折り合いが悪く、
冠婚葬祭を除いては極力距離を置き、
関わらないようにしてきました。
というのも、姉は性格が自分勝手であり、
母に至っては子供時代から
虐待に近いほど
言葉の暴力を受け続けてきたことで、
現在にいたっても思い出すほど
トラウマになっていたのです。
そんなある日、
姉から電話がかかってきて、
母が倒れたことを知らされます。
そして姉は無理やり麻有子を帰省させ、
あろうことか母親の介護を
押し付けてきたのでした。
かくして麻有子は確執を抱える
母親と同居することになります。
娘の葵が母親の扱いがうまいことは、
彼女にとって救いになりますが、
それでも麻有子は葛藤を抱えながら
日々を過ごすことなります。
果たして麻有子はその後
どのような生活を送るのか、
家族とのかかわりに悩む
全ての現代人におくる物語です。
秋川滝美『向日葵のある台所』 の魅力
この作品の魅力は何と言っても、
その心温まる暖かいストーリーです。
麻有子の置かれた境遇はとても
不遇なものにしか思えず、
そしてそれが改善するもの
であるようには見えません。
しかし、日々家族と関わっていく中で
少しずつその状況は変わっていきます。
そして最後には、
きっと読むもの全てが
心温まるであろう結末が
待っているのです。
最初に感じる印象が悪いだけに、
その結末は本当に私たちの心を
癒してくれます。
また、作中で重要な役割を果たす料理も、
私の目にはとても魅力的に映りました。
それは、描写が丁寧かつ的確に
なされているということもそうですが、
ストーリーの中で欠かせない
立ち位置にあるからこそ
感じられる魅力なのだと思います。
この感覚は、この物語を読んでみた方
にしか分からないかもしれません。
そういったことも、秋川滝美が
熱烈なファンを獲得する
一つの要因なのでしょう。
秋川滝美『向日葵のある台所』 のメッセージ
物語が進むごとに、
少しずつ麻有子の置かれた環境
は改善していきます。
それは私たちにとっての
一つの重要な示唆であるかもしれません。
現代を生きる我々にとって、
家族との関係を初めとした
人間関係は時として
大きな負担であったり、
ストレスの原因であったりします。
しかし、それは必ずしも
永続するものではなく、
時として改善するかも
しれないものだと、
この物語は伝えている
のではないでしょうか。
また、作中に登場する料理も
私たちに示唆を与えていると思うのです。
料理や食事とは、
私たちの生活に欠かせないものです。
だからこそ日々の食事は、
私たちの体はもちろん心の健康にも
大きな影響を及ぼしています。
そういった食の重要性を、
この物語は私たちに
伝えてくれるのです。
読み終えたあとにはきっと
世界の見え方が変わっていると思います。
ぜひこの機会に読んでみてください。
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