今回ご紹介する一冊は、
恩田陸 著
『スキマワラシ』です。
誰でも記憶にある、
思い違いのようなこと
ってありますよね。
この本では、
「誰もがその子を「見た」と言う。」
というような、
過去にいたようで、
思い出せない、
そんな少女をめぐる
ミステリー小説です。
不思議な能力を持った
主人公「散多」と、
古道具屋を営む兄。
交通事故で亡くなった
両親の面影を追って、
話が進んでいきます。
再開発予定の建物をめぐり、
記憶を残したタイルを集め、
主人公や兄だけでない
「みんなが見ているけど、
見たことがない少女」
の秘密を探っていきます。
点と線のように
ちりばめられた伏線や、
謎がわかったとき、
どきどきして、
どんどんページを
進めていってしまうような本です。
恩田陸の過去作品である
『六番目の小夜子』のような
作風が好きであれば、
きっと先が気になって、
一気に最後まで
読んでしまいますよ!
目次
恩田陸『スキマワラシ』 謎を含む物語のポイントとなる「タイル」
白いワンピースに、麦わら帽子。
廃ビルに現れる都市伝説の“少女”とは?古道具店を営む兄と、ときおり古い物に秘められた“記憶”が見える弟。
ある日、ふたりはビルの解体現場で目撃された少女の噂を耳にする。
再開発予定の地方都市を舞台にした、ファンタジックミステリー。
主人公はモノに触れると、
そのモノの記憶が見える
という不思議な能力を
持っています。
そのタイルがあった場所で
何が起きたか、
わかってしまうのです。
再開発予定の建物は
どこもタイルが散らばっており、
主人公はそれらを触れることで、
謎をひとつひとつ
解決していくのです。
主人公は幼いころから
その能力を持っていて、
兄に相談していました。
この不思議な能力が、
物語の謎を解いていきます。
このタイルとは、
作中の兄いわく
「記憶のDVDのようなもの」
と語っています。
その記憶のタイルは、
この作品の謎を
どのようにつないで
いくのでしょうか。
また主人公の両親は建築家であり、
その職業とタイルが
つながっているような気がします。
主人公の両親は、
作中では交通事故で
亡くなっているということ
になっています。
それが、謎とどう絡んで
いるのかも気になりますよね。
連鎖していくタイルの謎が
解けたときに、
どのように作品が展開
されていくのか、
とてもワクワクしてきますね!
恩田陸『スキマワラシ』 タイルや少女だけではない、たくさんの謎
この物語では、
たくさんの謎を
解くための伏線があります。
タイルや、記憶に残っているけど、
なんだか実態のつかめない少女。
Aフェスに使われるという、
消防署の建物も謎が
多く含まれています。
それだけではなく、
ダイゴハナコという人物や、
引き出しから出てくる、
主人公をつかんできた謎の腕。
主人公の不思議な名前「散多」。
兄は太郎ですが、
なぜか次男の散多は、
三太でもなく、
次郎でもありません。
どんどん積み重なっていく謎と、
不思議な現象や、
顔はわからないけど、
確かに存在している少女、
あなたは読んでいて
不思議と気づく場面も
あるかもしれません。
少女はなぜはっきりと
姿を現さないのか、
とても気になって
しまいますよね。
それも物語の大事なところで
必ず現れるので、
読んでいてカギに
なるかもしれません。
何者かわからない存在、
謎のタイルの記憶、
打ち出の小槌、
どのキーワードも含みを
持っているような感じが
してしまいますね。
多くの謎がひとつひとつ
解決されていくのは、
ミステリーの醍醐味ですよね。
恩田陸『スキマワラシ』 スキマワラシとは何者なのか
この本を読んでいて、
あなたはたびたび、
スキマワラシという存在を
何者なのか考えて
しまうと思います。
兄の太郎は、
謎の少女のことを、
座敷童子ならぬ、
「スキマワラシ」
と呼んでいます。
確かに記憶が他人と
つながらない、
誰だかわからない、
あの子なんだっけ、
というような記憶の
隙間に現れた人物のことを
「スキマワラシ」と
呼びたくなりますね。
人は誰でも思い違いをしたり、
そんなことあったっけ、
となるような思い出を
持っているはずです。
この作品では
思い違いではなく、
謎として扱われています。
もしかしたら、
読んでいる自分たちの側にも、
スキマワラシがいる
のかもしれません。
スキマワラシとはなんだったのか。
存在がわかったときに、
あなたはこの本を読んでいて、
謎が解けてスッキリする
と思います。
この作品では「記憶」
ということがテーマに
なっています。
タイルや、スキマワラシが
読み解くポイントとなって、
あなたに何度もこの記憶の謎
を問いかけてくることでしょう。
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