今回ご紹介する一冊は、
筒井 康隆 (つつい やすたか)著
『富豪刑事』です。
筒井康隆は
小説、戯曲、随筆・評論、絵本に
至るまで様々な作品を発表しています。
なかでも「時をかける少女」
は有名で小説、映画、ドラマ、
アニメまですべてみました。
彼が描く女性はかわいくもあり、
少しの意地悪さや世にいう天然な
ところも魅力的なので観る(読む)人
を引き寄せているように思います。
学生の頃よく星新一、赤川次郎、
渡辺淳一などの小説のほかに
筒井康隆の「笑うなショートショート集」等
の短編小説を読んでいたことを
思い出し懐かしくなります。
今まで読んだ筒井康隆の小説に
登場する人物は大富豪や悪人で
あったとしても人間らしい
優しさを感じます。
富豪刑事もドラマやアニメでも
放送されるのはやはり
その人間の面白さが描かれているから
だと思うためネタバレにならない程度
に読み解いていきます。
目次
筒井康隆『富豪刑事』 神戸大輔という刑事
湯水のように金を使って事件を解決!
著者初のミステリ作品、伝説的ミリオンセラー!キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事"こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの"の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦した傑作。
五億円強奪事件は強盗罪の
時効7年目までにあと3か月と
迫っていました。
容疑者もあと4人までに絞ることが
できたある捜査会議で上司の前でも
わざわざハバナから取り寄せた1本
につき8,500円の葉巻を平然と
喫っているのが神戸大助です。
彼はキャデラックを乗り回し、
葉巻を半分も喫わずに捨てて、
10万円以上もするライターも
すぐにどこかに置き忘れても平気です。
それにイギリスで誂えた仕立ておろしの
背広を雨のなかでも平気で歩いていても
気にならない大富豪のぼろが
出まくりで全く刑事らしくありません。
それでも神戸大助は謙虚にも
自分は富豪ではなく親のお金なので
自分はお金持ちではないよといいます。
時効が迫っているこの事件では
「容疑者たちが大金を使わざるを
得ない状況まで追い込む作戦」
を実行するために容疑者が
よくいるおでん屋に潜入します。
そのおでん屋でなぜか大助は
容疑者と仲良くなります。
驚くべきは支払い時に大助が
クレジットカードしか持っておらず
現金を持ち合わせていなかったので
おでんの代金を容疑者に立て替えてもらう
なんて本当に驚きです。
ある会社の社長が焼死した事件では
トリックの解明のために会社を設立したり、
誘拐事件では身代金を用意し
事件解決のヒントにお金を
用意するところなんかも
事件解決のためとはいえびっくりします。
暴力団の抗争を止めるために
市内の宿泊施設を予約して
事前に用意した同じホテルに
宿泊できるように
取り計らうところなんかも
富豪だけではない魅力を感じます。
筒井康隆『富豪刑事』 浜田鈴江との関係
浜田鈴江は神戸大助の父の
喜久右衛門の秘書で5億円強奪事件の
4人の容疑者も惚れてしまうくらい
の魅力的な女性です。
そこで神戸大輔はダンスパーティに
容疑者を招待し鈴江に彼らを
誘惑するようにお願いします。
それは彼女にとってとても
辛いことでしたが彼のためになればと
必死に演じ切ります。
それにしても神戸大助は
父も鈴江もすぐに泣いてしまうことを
理解することができないなんて
驚いてしまいます。
鋳造会社の社長室という密室状態で
社長が焼死するという事件では
神戸大助は同じような鋳造会社を設立し、
またも鈴江を秘書として
捜査の手伝いをさせます。
そのことにより大助と鈴江は
より近い存在となり
まるで恋愛小説です。
大助の刑事という仕事が関係している
のか鈴江とデートしているときは
いつも事件が起こって中断させられます。
ある誘拐事件で大助は警察からだと
気づかれないように身代金を用意する際
に鈴江に相談してきましたが、
さすがに冷ややかな対応を
してしまいます。
その時の気持ちよくわかります。
筒井康隆『富豪刑事』 神戸喜久右衛門
神戸大助の父の喜久右衛門は
大富豪です。
今までお金を儲けるためなら
悪いことでもなんでもする
非情な人間だったのです。
そんな父も歳を重ねることで
心の平和のためにはお金は
役に立たないことを理解したけど
もう遅かったのです。
ある程度以上のお金を持ってしまう
と使い道もなくなり、
何かにつかってもそのお金は
余分な利息とともに戻ってくるので
財産が膨れ上がってしまい彼を
悩ませる原因となっていました。
大助が刑事になり様々な捜査で
お金を使うことを伝えると
自分の罪を洗い清める意味でも
どんどん使うように指示します。
その喜びから大助が仕事の話を
するとすぐにうれしくて泣いて
しまい発作を起こしてしまいます。
ある会社の社長が焼死した事件では
密室の謎を解くために
喜久右衛門は鋳造会社を
設立に手腕を発揮します。
そのおかげで事件は解決したのですが
その鋳造会社は黒字となり
残念なことに資産が増えることとなります。
やはり大富豪ともなると
資産を減らすのはとても大変なのは
本当にうらやましい限りです。
そんな富豪刑事はまだまだ続きそうです。
今後大助と鈴江の関係は
どうなるのかがとても気になります。
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