林民夫『糸』小説あらすじと感想!映画も公開「自分の人生を掴む勇気」

 

今回ご紹介する一冊は、

林 民夫

『糸』です。

 

 

中島みゆきの大ヒット曲

「糸」をモチーフに

書かれた小説です。

 

菅田将暉さんと小松菜奈さん主演

筆者の林民夫さんが指揮を執った

同名タイトルでの

映画も公開されました。

 

曲にちなんで小説の章立ては

「縦の糸」「横の糸」

「ふたつの物語」「逢うべき糸」

の4章から構成されています。

 

物語のところどころに

歌詞も登場してきます。

 

中島みゆきさんファン

ならずとも、

一度は耳にしたことのある

この名曲を、

 

もう一度聞き直してみたく

なるかもしれません。

 

人はどこから来たのか、

どこへ向かっているのか、

 

いるべき場所はどこなのか、

帰る場所はどこなのか・・・

 

そんなことを問いかけながら、

北海道、東京、沖縄、

シンガポールと

 

舞台を移しつつ

物語は進んでいきます。

 

人生とは時に残酷で、

時に優しくて、

 

それでも人は生きています。

 

なんのために?

 

この小説を読んであなたなりの

答えをぜひみつけてください。

 

 

 

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林民夫『糸』 あらすじ

 

北海道で生まれ育った高橋漣は、花火大会で出会った園田葵に一目惚れ。彼女が義父から虐待されていることを知るが、まだ中学生の漣には何もできなかった。それから八年。漣は地元のチーズ工房で働き、葵は東京にいた。 遠い空の下、互いを思いながらも、すれ違いと別れを繰り返す二人。それぞれの人生を歩んできた男女が、再び巡り逢うまでの物語。

 

 

物語は北海道から始まります。

 

花火大会で出会った、

当時まだ12歳の少年

ふたりと少女ふたり。

 

それぞれ異なる境遇で育った

平成元年生まれの4人は、

 

その後、繋がったり

絡まったり切れたり

また繋がったりする糸に

翻弄されながら生きていきます。

 

その花火大会でお互いに

惹かれ合った漣と葵

 

将来は世界中を

駆け回りたかった漣と、

 

ただ普通の生活をしたいと

望んでいた葵でしたが、

 

ふたりとも思い描いていたもの

とは少し違う形で、

 

それぞれの人生を送っていました。

 

別々の地で別々の人と。

 

しかしお互い、

12歳の時に起こした

「あのこと」

を引きずったままでした。

 

糸はそんな二人を

放ってはおきませんでした。

 

時代は平成から令和へ

と移ろうとしていました。

 

12歳だった少年少女は

30歳になっていました。

 

それまでの18年間、

実にさまざなことがあり、

 

関わりを持った人たちの

人間味に触れながら、

 

二人はそれぞれが常に、

 

自分はどこへ向かっているのか?

いるべき場所はどこなのか?

帰る場所は?

 

と自問してきました。

 

そして答えは・・・。

 

 

 

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林民夫『糸』 なぜめぐり逢うのかを私たちはなにも知らない

 

人間とは、

自分の意思だけでなく、

 

自分の意思や力の

及ばないところで

 

何かに突き動かさること

もあれば、

 

何か目に見えない力が働いて、

 

それによって意思決定をしたり

行動したりすることもある、

 

そんな生きものではないかと

常々思っています。

 

人との出会いもそうです。

 

意味のない出会いは

ありません。

 

たとえその出会いが

思い出したくもない辛いもの

になったとしても、

 

それは必ず何かを

そこから得るため、

 

または何かを相手に

与えるための

出会いだったのです。

 

人は誰しも一人では

生きていけず、

誰かしらと関わり合って

生きています。

 

なぜめぐり逢ったのかは、

誰にも説明のつかないもの

だとしても、

 

もしそれが大切な糸だと

感じたならば、

 

ちゃんと結んで、

切れたらまた繋いで、

たまにほつれたら直して、

絡まったらほぐしてやる、

 

それができるのは

自分たちだけです。

 

手を離すのか離さないのか、

それはもう自分たちが

決めることなのです。

 

漣と葵も、一度手を離して

しまったことを

ずっと後悔しながら

生きていきます。

 

二人とも、それが自分にとって、

この上なく大切な糸だと

わかったからです。

 

 

 

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林民夫『糸』 今を受け入れる覚悟と一歩踏み出す勇気

 

そこが通過点なのか終点なのか、

はたまた帰る場所なのか、

 

それは自分で決められること

ではなく、

もう決まっていること

なのかもしれません。

 

もしかしたら今ここに

いること自体、

自分の意思ではなく、

もう決まっていたこと

なのかもしれません。

 

物事はたくさんの

偶然の上に成り立ちます。

 

そのたくさんの偶然の

どれか一つが欠けても、

それは成り立ちません。

 

そう考えると、

今を受け入れて生きる

ということは、

 

それがたとえ不本意な状況

であっても、

抗いきれないものなのかも

しれませんね。

 

漣も葵も、そして竹内や香や弓、

この物語に登場する

すべての人たちは皆、

 

戸惑いながらも今を受け入れて、

そこに身を委ね、

覚悟を持って生きています。

 

それは流されることや

あきらめることとは違います。

 

自分で「覚悟」を選択したのです。

 

しかしどうしても人間には、

それとは裏腹な感情が

つきまといます。

 

皆そこに苦悩しながら、

心を揺さぶられながら生きている

のです。

 

ただ、理屈を超えたところに

見えた必然の糸。

 

これは逃してはいけません。

 

「衝動とはこういうものか。身体が勝手に動いていた。」

 

 

その糸を掴むために

一歩を踏み出せば、

その先は変わるのです。

 

その、たった一歩を

踏み出す「勇気」は、

自分の人生を掴む「勇気」です。

 

「きっと大切なことは自分の知らないところですでに起きていて、自分ができるのは掴みとることだけなのだろう。」

 

ならば、大切な糸だけは

自らの手で

しっかりと掴みに行き、

敢然と守り通す。

 

それが一度きりの人生を生き切ること

ではないのかな。

そんなことを思いました。

 

 

 

 

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