ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』書評とあらすじ!(早川書房)

 

今回ご紹介する一冊は、

ディーリア・オーエンズ

『ザリガニの鳴くところ』

です。

 

アメリカの動物学者であり

小説家でもある

ディーリア・オーエンズ

によって書かれた小説であり、

彼女の小説家としての

デビュー作です。。

 

動物学の学士号と

動物行動学の博士号を

持つオーエンズは、

 

これまでに

世界的ベストセラーとなった

『カラハリ――アフリカ最後の野生に暮らす』

などのノンフィクションを

手掛けたことでも

知られています。

 

この作品で、70歳にして

幼い頃からの小説家になる

という夢をかなえた

オーエンズですが、

 

とてもデビュー作とは

思えないほど完成度が高く、

感動的なものに仕上がっている

のがこの作品です。

 

そしてその洗練された

ストーリーに、

作者の卓越した自然に関する

知識が彩を与えるのです。

 

自然にふれあい、

生き物たちと関わってきた

彼女だからこそ描ける、

美しい物語がここにあります。

 

 

 

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ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』 あらすじ

ディーリア・オーエンズ (著), 友廣 純 (翻訳)

 

 

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

 

 

バークリー・コーブの

街の周辺には、

多くの沼地のある湿地

が広がっています。

 

1969年、その中にある

火の見やぐらの近くで、

街の人気者チェイス・アンドルーズ

の遺体が発見されるのが

この物語の始まりです。

 

その容疑者として

名前が挙がったのが、

バークリー・コーブの

市街地に住む人々から

「湿地の少女」と呼ばれ

蔑まれていたカイアでした。

 

1952年、6歳の少女カイアは、

その家族と共に湿地に

建てられた小屋で

暮らしていました。

 

この湿地の周辺には、

彼らのように貧しい人たちが

様々なところから逃れてきて

暮らしていたのです。

 

しかし、カイアの父親は

酒を飲んでは家族に

暴力をふるっていて、

カイアの母親をはじめとして

兄や姉たちも家を出て

行ってしまいます。

 

二年後には父も姿を消し、

カイアは一人で生きていく

ことになるのです。

 

学校にもいけず、

採った貝を売ることで

命をつないでカイアは、

 

ある日、湿地で釣りを

しているテイトという

少年と出会い、

読み書きを教えてもらう

ことになります。

 

孤独の中で過ごし、

成長して大人になりつつ

あったカイアは、

テイトのことを意識しはじめ、

テイトもまたカイアのことを

意識していました。

 

しかし、テイトの大学への

進学が二人の距離を

隔てるのです。

 

果たしてカイアは

その後どのような人生を

送るのか、

 

そして、アンドルーズを

殺した犯人は誰なのか、

二つの時系列が

絡まり合い物語は

進行していきます。

 

 

 

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ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』 のストーリー

 

フーダニットの

ミステリ小説であり、

カイアという一人の少女の

成長譚であるのがこの物語です。

 

二つの時系列が並行して

描かれることは、

この作品の特徴の一つと

言えますが、

 

片方でミステリ、

もう一つで成長譚と

まるで二つの小説を

同時に読んでいるかのように

感じさせる作品になっています。

 

事件の起こった1969年に、

1952年からカイアが

成長するにつれて

時系列が近づいていくのですが、

 

それとともにカイアを

取り巻く環境も、

カイア自身も変わっていきます。

 

出会いと別れを経験し、

少女から一人の女性へと

成長していくのです。

 

街の人々に

「貧乏白人」と軽蔑され、

「狼に育てられた」などと

噂されるカイアですが、

 

その孤独に耐えながら

力強く生きていきます。

 

その姿は読む者の胸を強く打ち、

そして、様々なことを

考えさせてくれるのです。

 

作者に自然に関する

深い知識があるからこそ、

人間という動物の行動や

心情を見事に描き切っています。

 

 

 

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ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』 が描く自然

 

この作品の最大とも

言っていい特徴は、

自然に関する描写の美しさと、

散りばめれらた

豊富な自然に関する知識です。

 

それはストーリーをより

美しくするための

エッセンスというよりも、

 

それだけで作品が

より魅力的になる要素

の一つと言っても

過言ではありません。

 

自然はカイアにとって

孤独を慰めてくれる友人であり、

様々なことを教えてくれる

教師でした。

 

一見家族にも街のほとんどの人

にも見放された、

かわいそうなだけの少女ですが、

 

彼女にはかけがえのない

存在が確かに存在し、

それに囲まれて

過ごしていたのです。

 

豊かな国に暮らしているはず

の私たちですが、

それを見ると、

本当に幸せなのかと

思わず自問せずには

いられません。

 

そしてカイアは

豊かな自然の知識をもとに、

独特な視点から

人間を見ることになります。

 

自然と人間を対比し、

時には重ね合わせる

その考え方は、

 

私たちにも新たな視点や

インスピレーションを

与えてくれることでしょう。

 

ストーリーも、描く情景も、

何もかもが美しい物語です。

 

ディーリア・オーエンズ (著), 友廣 純 (翻訳)

 

 

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