今回ご紹介する一冊は、
伊坂幸太郎 著
『ホワイトラビット』です。
『ホワイトラビット』は
ミステリー小説です。
伊坂氏は東北大学法学部を卒業したのち、
『オールデュポンの祈り』でデビュー、
『ゴールデンスランバー』では
本屋大賞や山本周五郎賞を
受賞しました。
正に日本の娯楽小説界の
中心的存在と呼んでいいと思いますが、
直木賞の選考対象となることは
辞退しているというのは
意外なことかもしれません。
この作品も2017年に
発表された際には大人気を博し、
今年の6月に文庫化されたこと
でその人気が再燃しました。
軽快で読みやすい文章でありながら、
時折顔をのぞかせる知的な
ユーモアに、
ただ文章を愛でるだけでも
楽しめてしまうのが
伊坂氏の作品の特徴の一つです。
そしてもう一つの忘れて
ならない特徴は、
テンポ良く展開し最後には
どんでん返しが待ち受ける
高度なストーリーでしょう。
この作品には、
そういった読者が伊坂氏に
求めるもののすべてが
しっかり詰まっていて、
芯のある物語になっています。
文庫化されさらにお求めやすく
なった傑作を、
この機に楽しまれては
いかがでしょうか。
目次
伊坂幸太郎『ホワイトラビット』 あらすじ
兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!
本作の主人公である兎田孝則は、
誘拐で利益を上げる
犯罪グループに属しています。
兎田は新妻の綿子と、
結婚の熱も冷めやらぬ
ラブラブな日々を
過ごしていますが、
ある日の夜、
いくら遅くになっても
綿子が帰ってきません。
すると午前0時、
彼のスマートフォンに
着信があります。
聞こえてきたのは
「おまえの妻を誘拐している」
という声でした。
なんと綿子を誘拐したのは、
兎田自身が属する
犯罪グループだったのです。
その誘拐の目的は、
経理担当の女性をそそのかし
グループの金を横領させた、
折尾というコンサルタントを
兎田に探させるためでした。
こうして折尾のことを
探すことになった兎田は、
ついにとある一軒家に
たどりつきます。
しかしそれは事件の解決
などではなく、
むしろより大きな事態の
始まりだったのです。
事件はいったいどこへ向かうのか、
兎田は綿子を救い出すこと
ができるのか、
めまぐるしく展開する
ストーリーから目が離せません。
伊坂幸太郎『ホワイトラビット』 ストーリー
多くの伊坂作品で最後に
待ち受ける大どんでん返しは、
物語の一つの大きな魅力です。
広がったストーリーを
見事にまとめ上げる技量には、
思わず圧巻されてしまいますよね。
この作品でも、
我々読者の予想をはるかに
上回るラストが待ち受けていますよ。
また、作中で何気なく
出されるキーワードが、
物語の中で重要な役割を
果たすというのも、
最早伊坂作品の恒例ですが、
今回は「オリオン座」と
「レ・ミゼラブル」の
二つがキーとなります。
それらのワードを
ただのエッセンスとして
加えるのではなく、
むしろメインともとれるほど
重大な役割を持たせるのは、
伊坂の類まれなる技量
の一つでしょう。
どんな風に物語に
絡んでいくのかは必見です。
直木賞に十分匹敵すると
言われる作家だけあって、
まるで自分の体のように
ストーリー展開を操っています。
練りこまれたストーリーを
味わいたいという方には
絶対におすすめできる一作です。
伊坂幸太郎『ホワイトラビット』 が描くもの
この作品は
分類上は娯楽小説に分類され、
確かにメインとなるのは
そのストーリー性です。
しかし、その文体は
洗練されていて読みやすく、
美しいものですし、
散りばめられた豊富な知識も、
作品にコミカルさを与えています。
そして何より、
この作品が描いているものは、
私たちの生活にも
通ずるようなことを
考えさせてくれます。
例えば家族の愛。
作中では、
愛する人や大切な人が誘拐され、
危険にさらされる
ということが多々あります。
それを救おうと奮闘する
登場人物たちの姿や純真な愛に、
胸を打たれるという方は
多いのではないでしょうか。
事実私も、
もし家族が誘拐されたらと、
考えずにはいられませんでした。
全体的にユーモラスな印象を
与える物語でありながら、
そういった考えも私たちに
抱かせる不思議な力を
この作品は持っています。
文庫化で注目していた方はもちろん、
個人的には人生に疲れて
一休みしたいという方に
特におすすめしたい作品です。
この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓