今回ご紹介する一冊は、
東野圭吾 著
『素敵な日本人』です。
東野圭吾には数多くの
ベストセラー小説
があります。
長編ミステリー作家の
イメージが強い著者ですが、
今回紹介するのは短編集です。
ミステリーだけでなくSF、
ファンタジー、
心温まる物語と
バラエティーに
とんだ構成になっています。
長編小説のような
重厚さはありません。
けれどストーリー、人物、
構成そしてオチにいたるまで
切れ味の鋭さが光ります。
読後感もスッキリします。
短いながらも東野圭吾の
いろいろな要素が
詰まってます。
氏の作品が初めての方
はもちろん、
長編小説をたくさん
読んできた方も
「さすが」と思わせる
短編が揃っています。
目次
東野圭吾『素敵な日本人』季節の行事とともに
一人娘の結婚を案じる父に、娘は雛人形を指差して大丈夫という。そこには亡き妻の秘密が……。(「今夜は一人で雛祭り」)独身女性のエリーが疑似子育て体験用赤ちゃんロボットを借りたところ……。(「レンタルベビー」)世にも珍しい青色の猫。多くの人間が繁殖を目論むが……。(「サファイアの奇跡」)日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材にした4編と、異色のミステリ5編を収録!
日本で行われる行事を
織り込んだ短編が
四作あります。
「正月の決意」は初詣に
行った夫婦が、
さい銭箱の前で下着姿で
倒れている町長を
発見します。
何者かに殴られたようだが、
本人は酒を飲んでいて
覚えていません。
正月ということもあり、
捜査に当たる刑事たちも
やる気がありません。
第一発見者なので
事情聴取のために
夫妻はなかなか
帰してもらえません。
そんな時、妻の康代が
あることに気づきます。
この短編は場面設定のうまさ、
意外な展開が読んだ後に、
題名の秀逸さと結びつきます。
「十年目めのバレンタイン」は
売れっ子の小説家の峰岸が、
十年ぶりにかつての恋人、
知理子にデートに
誘われます。
十年前に一方的に
ふられた峰岸は、
今になってどうしたのかと
思いますが
会ってみることにします。
現在も気に掛かっている
元恋人と、
再会するバレンタインに
うきうきする主人公が一転、
追い込まれていく
さまが描かれます。
東野圭吾『素敵な日本人』豊かな設定で楽しめます
「レンタルベビー」は
近未来が舞台の作品です。
主人公のエリーは
会社の長期休暇を
どう過ごすか
について悩んでいた時、
疑似子育て体験の
広告を目にします。
それは本物そっくりの
赤ちゃんロボット
「レンタルベビー」を
使って実際に
赤ん坊を育ててみて、
育児をしながらの生活を
身をもって知ってみる、
というものでした。
レンタル期間が終わった時に
明かされる事実に驚きます。
「水晶の数珠」はアメリカで
売れない役者として
頑張っている
直樹が主人公です。
直樹の家は日本の名家です。
その父親の反対を押し切って
単身アメリカに出てきました。
そんなある日、
姉から電話が
かかってきます。
父親が末期がんで
最後の誕生日パーティーを
行うから日本に帰ってきて
ほしいというものでした。
帰国後すぐに父親から
憎まれ口を叩く電話があり、
直樹は怒って
父に会うことなく
アメリカに帰ってしまいます。
一族に代々伝わる品を絡めた
人情物語に
ホロっとさせられます。
この他に
「サファイアの奇跡」があり、
こちらはファンタジーなお話
が楽しめます。
東野圭吾『素敵な日本人』期待を裏切らない面白さ
「壊れた時計」は
闇サイトで知り合った
仲介役に、
怪しい仕事を頼まれる
男の話です。
その仕事は、
指定された部屋に行って
ある品物を取ってくる
というものです。
そこで男は、
部屋の主である人物と
出くわしてしまい誤って
殺してしまいます。
その時、相手が
していた腕時計が
壊れていることに気づきます。
不安を覚えた主人公は
腕時計を修理し、
その人物の腕に戻します。
余計なことをしたばっかりに
ドツボにはまっていく男
が描かれます。
「君の瞳に乾杯」は
収録中で一番好きな作品です。
主人公の内村は
合コンに参加します。
そこで意気投合した
モモカと仲良くなります。
しかし、その後なかなか
関係は進展しません。
あせった内村は思い切って
告白します。
登場人物の設定、話の展開、
最後にいたるまでの伏線が
見事です。
九つの短編は
どれもレベルが高く、
東野圭吾さんならではの
「ひねり」がいくつも
加えられています。
そしてどの物語にも
最後にハッとする結末が
用意されています。
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