今回ご紹介する一冊は、
池井戸潤 著
『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』
です。
本作は半沢直樹シリーズの
記念すべき第一作目です。
時は1988年、
夢のような時代がありました。
いわゆるバブル時代です。
主人公の半沢直樹は、
かつて第二銀行ながら
父の会社を救ってくれた
産業中央銀行に就職します。
銀行員となって、
父のような会社の力に
なりたいという夢を描いて。
しかし、バブルが崩壊し
銀行業界も合併を繰り返し、
何とか生き残るという
厳しい経営を余儀なくされていました。
そんな半沢は
大阪西支店融資課長を務めています。
ある時、支店長の浅野匡が
強引に五億円もの融資を
西大阪スチールという会社に
行おうとします。
半沢は懸念しますが、
浅野は無理やり稟議を通させます。
融資直後に西大阪スチールは
経営破綻し粉飾の事実が
発覚します。
浅野は半沢に、
粉飾を見抜けなかったのは
お前が悪いと、
全ての責任を押しつけます。
本部が行うヒアリングでも、
半沢の非を責める
小木曽人事部次長。
自分にだけ責任があるのでは
ないと半沢は反論します。
家に帰り経緯を妻の花に話すも、
「責任転嫁されるのはおかしい」
と責められます。
夢を描いて入った銀行は、
卑劣な人間たちが力を
持つ組織でした。
しかし、半沢は真っ向から闘います。
目次
池井戸潤『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』 裁量臨店
大志を抱いてバンカーとなり、今では大阪西支店融資課長を務める半沢直樹。
ある時支店長命令により五億円もの融資を行った会社があえなく倒産した。
融資ミスの責任をすべて半沢に押し付け、醜い保身に走る浅野支店長。
沸き上がる怒りを抑えながら、半沢は巨額の債権を回収するすべを探る。
やられたら、倍返し――ここから痛快リベンジ劇が始まる!
同じ銀行の門をくぐった
大学の同期たちと
大阪梅田の居酒屋で
卓を囲みます。
皆それぞれ夢と現実の
はざまでもがいていました。
渡真利は、
数千億単位のプロジェクト
ファイナンスを諦め、
中小企業相手に小口の
資金援助を行う日々、
他にも司法試験に
二回不合格し法務室の
下働きをしている苅田。
統合失調症にかかり、
一年間の戦線離脱を
している近藤。
唯一、夢を叶え国際派バンカー
として
ニューヨークに渡った押木は
テロに巻き込まれ
今も行方が分かっていません。
なかなか思うようにいかない
銀行員生活の悲哀が描かれます。
そして融資部調査役の渡真利
が得た情報では、
小木曽人事部次長が
大阪西支店の裁量臨店を
提案したと言います。
融資部が支店に赴いて
行われる貸出内容の検査です。
姑息な方法で嫌がらせを
してくる人事の小木曽。
本来、味方となるはずの
支店長浅野も敵に回り
半沢は苦しい立場にさらされます。
しかし、部下たちの力を借り、
共にに卑劣な敵に立ち向かいます。
池井戸潤『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』 債権回収
半沢が理不尽な闘いに
勝つためには、
西大阪スチールの東田から
債権を回収するのみです。
東田は回収できるものなら
やってみろと、
強気な態度で応じます。
そんな中、
同社の経理課長であった
波野を問い詰めると、
どうやら東田は隠し資産を
持っているのではなかということ
を突き止めます。
半沢は西大阪スチールの下請け
で被害にあった
竹下金属の社長と共に、
必ず東田から債権回収すること
を誓います。
東田の隠し資産を求めて
国税も動いていました。
国税は銀行にも出向き、
行員を下に見て
偉そうな態度をとります。
そして、竹中と共に
東田を追ううちに、
裏で東田と浅野支店長が
繋がっていることを知ります。
終盤部分では、
浅野の視点で物語が語られます。
彼の弱さ、そしてふてぶてしい
浅野にも大切な家族がいます。
半沢がある証拠をつかみ
浅野をじわじわと
追い込んでいきます。
揺れ動く登場人物たちの
心理描写が鮮やかに描かれます。
業務統括部の木村部長代理が臨店し、
西大阪スチールの
巨額不良債権について叱責します。
しかし、これに対しても
半沢は揺らぐことなく反論し、
自身に責任はなく
債権回収は必ず成し遂げる
と宣言します。
池井戸潤『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』 夢を見続けることの難しさ
半沢は机を整理していると、
ゼムクリップの中に
埋まったネジを見つけます。
父の経営する会社が
魂を込めて作った、
従来よりも軽く強度の
あるネジです。
そのネジを見て、
銀行に就職が決まった頃を
思い出します。
その時、父は言いました。
「夢を見続けるってのは難しいもんだ」
と。
そして、
「それに比べて夢を諦めることの
なんと簡単なことか」と。
幾多の困難にも決して
諦めることなく突き進む、
半沢直樹の原点が
この物語では描かれます。
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