重松清『カレーライス  (新潮文庫)』あらすじと感想!教科書のための書き下ろし作品

 

今回ご紹介する一冊は、

重松清(しげまつきよし)

『カレーライス

教室で出会った重松清』

です。

 

重松清は1963年岡山県生れ。

出版社勤務を経て

執筆活動に入ります。

 

91年『ビフォア・ラン』でデビュー。

99年『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。

2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞。

 

現代の家族を描くことを

大きなテーマとしています。

 

著書は他に、

『流星ワゴン』『その日のまえに』

『とんび』など多数あります。

 

本書は、国語の教科書に

載っている四編のお話を軸に、

入試や模試に出題されているお話を

組み合わせて構成されています。

 

子どもの頃には教科書に載っている

というだけの理由で読んだ物語が、

のちのち大人になったとき

ふとした瞬間に思い出すこと

があります。

 

子ども時代に読んだ物語が

自分の中で「熟成」

され意味を持ちます。

それによって救われたり、

温かい気持ちが持てたりします。

 

それはやがて、

かけがえのない記憶となります。

 

 

 

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重松清『カレーライス 教室で出会った重松清』父と子

 

「おとなになっても忘れられない」「あの場面の続きを読みたかった」
国語教科書収録作「カレーライス」はじめ
教科書や問題集でおなじみの九編の名作集。

教科書で読んだ物語は、あの日の学校にタイムスリップさせてくれる。給食の味が、放課後の空気が、先生や友だちの声が、よみがえってくる――。学習教材にたびたび登場する著者の作品のなかから、「カレーライス」「あいつの年賀状」「もうひとつのゲルマ」の文庫初登場三作を含む九つの短編を収録。おとなになっても決して忘れることはない、子どもたちの心とことばを育ててくれた名作集。

 

 

表題作『カレーライス』は、

小学生のひろしが、

ちょっとしたことで

父親に叱られます。

 

謝ればすぐにすむ話ですが、

ひろしはなかなか素直に

謝ることができません。

 

低学年の頃であれば、

あっさり「ごめんなさい」が

言えたのに成長とともに

言えなくなってしまいます。

 

いつまでも子ども扱いする父親と、

まだまだ大人ではないけれど

日々成長しているひろし。

 

息子が食べるカレーライスの味が

甘口から中辛に変わるなかで

父親は子どもの成長に気づきます。

 

父親に対する高学年になった

少年のもやもやとした

気持ちの変化が、

カレーライスのぴりっとからくて、

でも、ほんのりあまい味とともに

描かれています。

 

この他にもう一作、

父と子についての

短編『卒業ホームラン』があります。

 

こちらは、

少年野球の監督をしている父と、

六年生最後の試合に

ベンチ入りすらできない

自分の息子、

智とのふれあいが

描かれています。

 

「いいことがないのに、がんばる」

智の気持ちが父親には

よくわかりません。

 

父親は中学に入ったら部活は

どうするんだと訊きます。

すぐに野球部に入るという智。

 

まっすぐな息子の気持ちと、

はっとする父親の心情が

胸をうちます。

 

 

 

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重松清『カレーライス 教室で出会った重松清』友情とは、親友とは?

 

教室時代に誰もが経験する

友だちについての短編も

数多く納められています。

 

『千代に八千代に』は、

主人公の中学生スミちゃんが、

親友のトモちゃんと絶交します。

 

そんなとき、百歳近い、

ひいばあちゃんの千代さんと

同い年である八千代さんの

ヘンな友情が気にかかる

ようになります。

 

ひいばあちゃんは、

いつも八千代さんに対して

厳しく接しています。

 

それに対する八千代さんも

いいなりになっています。

 

困っているときに

力づけてあげるのが、

本当の友だちなんじゃないのか。

 

スミちゃんは、

ひいばあちゃんに訊きます。

「八千代さんとひいばあちゃん

って友だちなの?」と、

 

答えは素っ気なく

「そうだよ」の一言です。

 

そのことがスミちゃんには

わかりません。

 

けれど二人は子どもの頃から

いちばんの仲良しです。

 

うわべだけではない

心と心で繋がっている二人

を目にしていくうちに、

自分にもそんな友だちができるの

だろうかと考えます。

 

他にも女友だちについて書かれた

『にゃんこの目』、

 

教科書に掲載された

『あいつの年賀状』と、

 

雑誌の連作集で発表された

『ゲルマ』を改稿・改題した

『もうひとつのゲルマ』があります。

 

こちらも友情をテーマにした

作品となっています。

 

 

 

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重松清『カレーライス 教室で出会った重松清』かけがえのない、教室で出会ったこと

 

その他の短編では、

『ドロップスは神さまの涙』

このお話は、

いじめられている

小学五年生の少女が

保健室に駆け込みます。

 

そこで出会う先生や下級生との

ふれあいを通して、

いじめに立ち向かうことを

自ら決意します。

 

『北風ぴゅう太』は、

転校が多い小学六年生の

吃音をもつ少年が主人公です。

小学校生活の最後に劇を

することになり、

少年は担任の先生のために

奮い立ちます。

 

『バスに乗って』こちらは、

小学五年生の少年が

入院している母を見舞うため、

病院まで一人でバスに乗ります。

運転手とのかかわりを通して

大人への階段を登っていきます。

 

この三編に共通するテーマは

「勇気」です。

 

勇気は勇気でも、

それが人のために出す勇気もあり、

自分自身のために踏み出す

勇気もあります。

 

一つ一つの作品を読んだ後、

子ども時代の楽しかったことや

苦しかったことを思い出して

ほっこりとした気持ちになります。

 

最後のあとがきは

本書の編集作業が

行われた2020年の春に

書かれたものです。

 

ここで著者は、

「教室で出会った」という

副題が思いも寄らない重み

持ったことについて語っています。

 

 

 

 

 

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