鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ(講談社)』感想とあらすじ!【小説現代長編新人賞作品】

 

今回ご紹介する一冊は、

鯨井あめ

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』

です。

 

この本との出会いは、

ラジオでした。

 

FMの「ラジオ版 学問ノススメ」

という番組で紹介されていた

のがきっかけで、

 

作者である鯨井あめさん、

そしてこの本を知ること

になったのです。

 

作者は1998年生まれの

現役大学生、

そしてこの作品は、

第14回小説現代長編新人賞

を受賞、

さらに本のタイトルが、

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』

という謎に包まれるもの。

 

これに興味を示さない人は

誰もいないはずです。

 

私もそのうちの一人でした。

 

ラジオを聴いた瞬間に

「よく分からないけど、

読んでみたい」

と思ったのです。

 

そんな軽い興味のまま

読み進めていき、

読み終わった

今の率直な気持ちは、

 

「読んで良かった。

そして、

次の作品もぜひ読みたい。」

でした。

 

本を読んだあとすぐに

このような感想を持つのは

自分自身初めてで、

正直自分でも驚いています。

 

あくまでも

個人的な好みの問題

かもしれませんが、

 

一見の価値がある作品

であることは間違いありません。

 

私が感じたこの本の魅力を

紹介していきます。

 

 

 

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鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』 疾走感とはこういうことだ!

 

 

内容紹介:高校二年生の越前亨(えちぜんとおる)は、感情の起伏が少なく、何に対しても誰に対しても思い入れを持つことがあまりない。父親を病気で亡くしてからはワーカホリックな母と二人で暮らしており、父親が残した本を一冊ずつ読み進めている。亨は、売れなかった作家で、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、ずっと囚われている。
図書委員になった彼は、後輩の小崎優子(こさきゆこ)と出会う。彼女は毎日、屋上でくらげ乞いをしている。雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいるのだ。いわゆる、不思議ちゃんである。
くらげを呼ぶために奮闘する彼女を冷めた目で見、距離を取りながら亨は日常を適当にこなす。八月のある日、亨は小崎が泣いているところを見かける。そしてその日の真夜中、クラゲが降った。逸る気持ちを抑えられず、亨は小崎のもとへ向かうが、小崎は「何の意味もなかった」と答える。納得できない亨だが、いつの間にか彼は、自分が小崎に対して興味を抱いていることに気づく。

 

 

「疾走感のある曲」

「疾走感のある映像」

などとよく表現

されるものですが、

 

この本は「疾走感のある本」

という表現がぴったりです。

 

大学生という、

いわゆる現代の若者

が書いた作品

だからでしょうか。

 

読点・句読点、

改行が多用され、

ほとんどが短い文章で

構成されています。

 

まるでLINEの

やり取りのようです。

 

それ故に場面展開が早く、

登場人物の感情の

移り変わりも

同様に早いため、

 

読んでいて

ハラハラドキドキが

止むことが

ありませんでした。

 

特にその疾走感が顕著に

表れている部分を

ピックアップしてみます。

 

時間を、かけて、目を、開く。
焦点が、合う。
息が止まって、音が止まって、時間が止まった。
真っ白だった。
どのページも、何枚めくっても、真っ白だった。
なんだ、これ。
青い革製のカバーを外すと、ラベルが貼ってあった。メモ帳・文庫本風。
呆然とする。耳鳴りがしている。
なんだよそれ。

 

 

これは、物語終盤で

繰り広げられる

重要な場面です。

 

亡き父が残した遺作

「未完成本」を

主人公が恐る恐る

読むシーンなのですが、

 

短い言葉、短い文章

の多用が主人公の感情を

リアルに表現しています。

 

この本ではこのような技術が

随所に用いられています。

 

 

 

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鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』 本が改めて好きになる!

 

この本の中で、

たくさんの名著が

紹介されています。

 

太宰治や井伏鱒二など

とという

近代文学から、

 

小川洋子や伊坂幸太郎などと

いった近代文学まで、

 

様々な作品が紹介

されているので、

中には自分の知らない作品も

あり勉強になります。

 

さらに登場人物同士の

会話の中で

その作品の魅力を

語り合っていたり、

 

主人公が所属する図書委員の

活動の中で

おすすめ本のPOPを

作ったりするので、

 

その作品のポイントも

知ることができ

読書好きにはたまらないです。

 

さらには、この物語の設定が、

主人公の父が作家、

母が編集長という本一家

であることにより、

 

その職業の苦労や

本に懸ける思い

も知ることができ、

 

ひとつの作品の重さを

痛感するとともに、

改めて「本を大切に読もう」

感じさせてくれます。

 

さらには、父の死をきっかけに

本を読むことが嫌いになり、

 

目指していた作家という夢も

口に出さなくなる主人公。

 

それでも離れられない

本との生活が、

最後にドラマを生む。

 

本の良さ、読書の良さを

改めて教えてくれる、

そんな作品です。

 

 

 

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鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』 くらげという謎のタイトル!

 

主人公がある日、

学校の屋上で「くらげ乞い」を

する後輩と出会うところから

この物語が始まります。

 

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』という

タイトルでさえ

正直意味が分からず、

否が応でも好奇心を

そそられるわけなのですが、

 

さらには「くらげ乞い」という

謎過ぎる冒頭部分が、

 

意地でも

「くらげの真相を

突き止めてやる!」

という変な使命感を

掻き立てます。

 

もちろん

「なぜ、くらげなのか?」

という部分は読んでの

お楽しみなのですが、

 

もしかすると読んでも

その答えは

分からないかもしれません。

 

私は、読み終わった今でも

「なぜ、くらげなのか」

という答えを探し続けています。

 

作者に尋ねてみないと

分からないことですが、

「くらげ」である意味は

重要ではないのかもしれません。

 

ただ、言えることは

「読み終わった後には、

一緒にくらげ乞いを

している自分がいる」

ということです。

 

「世界は理不尽で、

僕たちは無力である。」

この哲学的な内容が

くらげとどうつながっていくのか。

 

最後の最後に

タネが明かされる瞬間

には何とも言えない感情

(恐らくその人それぞれの感情)

が沸き上がってくることは

間違いありません。

 

ですので、ぜひ早くこの作品を

読んでいただきたいです。

 

 

 

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